満洲 パリ 長崎 高尾 東京 銀座

満洲の長春へ着いたのが十一月十二日の夜でした。口から吐く息

買つた紅色の毛布、これはもう大変な思ひ出ものです。パリ―の下宿で、いま蒲団がはりに使用してゐます。

平和でした。「こつちは何でもございませんよ」長崎から来た女中なぞは、ハルピンは呑気なところだと笑つてゐます

中を見てゐました。去年は古ぼけた栗島澄子や高尾光子の絵葉書なんか飾つてあつたものですが、そんな物は何も無く

音楽学校の先生でショウジさんと云ふ方らしい。東京の列車から御一緒にパリーまで道連れにして貰はうなんぞと思つた

粉料理（すゐとんの一種）プリン、こんなもので、東京の本郷バーで食べれば、これだけでは二拾銭位のものでせ

ですが、思ひつきがなくて、――出発の前夜、銀座で買つた紙風船を一つ贈物にしました。彼女は朝になつ