就職 / 林芙美子
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「さう‥‥あの櫻内さんて、とても元氣な方ねえ、八幡の製鐵所へいらつしやるつて向いてると思ふわ。――みんな大學
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ゐる。朝の汽車で謙一と二人だけで先發してこの千葉の別莊へ來たのが、無意味のやうに思はれてくる。風呂場
あわたゞしく東京で謙一と別れたくはなかつたのだ。千葉の家で、謙一の送別會をしようと云つて、忙しい謙一を無理矢理に
「僕は、そのうち、もう一二度、千葉へ來ますよ、埼ちやんには、まだまだ、いろんな話をしたいと思つ
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上から派手な錦紗の羽織を引つかけてゐた。京都人形のやうに沈んだ顏だちで、皮膚の薄いのが、妙に痛々しく
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ゐたし、現に、自分も學校の就職係には、東京電燈とか、三井、三菱なんかに履歴書を出しておいたのであるけれど
は考へてはゐなかつたのだ。學校を出たら、東京に勤めるものとばかり考へてゐたし、現に、自分も學校の就職係
で働いてみたいと思つただけ‥‥僕は東京は本當は厭なんだ!」
は理窟がわからないだらうけれど、兎に角、僕は一度、東京を離れてみたいンだ。そして、新しい發展性のある土地で働いて
ひになつてゐるんですよ‥‥生れ故郷の東京を去るなんて云ふのは、埼ちやんには理窟がわからないだらうけれど、
遠い處へ職を求めたと云ふのは僕は本當は東京がきらひになつてゐるんですよ‥‥生れ故郷の東京を
埼子ちやんは好きだよ、とても好きなんだけれど、東京が厭になつた氣持の中には、埼ちやんなんか何の關係もない
に乘つたのだけれど、埼子は、あわたゞしく東京で謙一と別れたくはなかつたのだ。千葉の家で、謙一の送別
この別莊に養生に來てゐて、珍しく一週間ほど東京へ戻つてゐたのである。今朝も、謙一と連れだつて兩國から汽車
「謙一さんは、いつまた東京へくるの?」
「あゝさうか。東京へもやつて來いよ‥‥」