甲州 マニラ 東京 池袋

やうなぬくぬくとしたものを感じた。妻の糸子は甲州のかじかざはと云ふところの生れださうだけれども、これとても、子供の

さのない女であつた。良人は軍醫中尉で、マニラで戰死したのだとかで、子供もなく、洋裁をして今日

の生れださうだけれども、これとても、子供の頃に東京へ出て來てゐたので、そのかじかざはと云ふところの名前

東京の病院で、看護婦をしてゐた糸子と二十五年前に結婚して

と同じ年頃の河邊亮太郎と云ふ男がゐた。家族は東京に殘したまゝであつたので、戻つてゆく栖家には

宮内の住居を尋ねてみべるく、思ひきつて、今日は東京驛まで來たのであつたが、幾度となく出這いりしてゐる電車

つて六萬圓ばかりの金をつくつた。亮太郎の世話で、池袋の商店街に、小さいマアケツトの出物があつたのをゆづりうけて、そこで