落合町山川記 / 林芙美子

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地名一覧

下落合

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落合川をへだてた丘の下落合には、片岡鉄兵さんや、吉屋信子さんが住んでいた。鉄兵さんに

行ってから間もなく、私は吉屋さんの家に近い下落合に越した。落合はやっぱり離れがたいのか、前の家からは川一ツ

と唄いながら歩いていたと云うのだ。それが、下落合の高台の家に越して来てからも、夏の夜はその唄声が聞え

夕方などは、低い線路添いの木柵に凭れて、上落合や下落合の神さんたちや奥さんたちが、誰かを迎いに出ている。駅の

アルプス

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武藤邸の前にはアルプスと云う小カフェーがあって、小さい女給さんが、武藤邸の電信柱に凭れて

青島

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。ハルピンや、長春、奉天、撫順、金州、三十里堡、青島、上海、南京、杭州、蘇州、これだけを約二ヶ月でまわって、放浪記

倫敦

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欧洲へ一ヶ年の旅程で旅立った。巴里へいっても倫敦へいっても、よく、ばつけの白い堰や、哲学堂のおばけの夢

牛込

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も落合の材木屋の二階にいたのだが、牛込の方へ越してしまった。中井の駅の前には辻山春子さんの旦那

落合

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来る人たちが、落合は遠いから大久保あたりか、いっそ本郷あたりに越して来てはどうかと云わ

なく、私は吉屋さんの家に近い下落合に越した。落合はやっぱり離れがたいのか、前の家からは川一ツへだてた近さで

た、物干しのある部屋で、尾崎さんは私よりも古く落合に住んでいて、桐や栗や桃などの風景に愛撫されながら、

板垣直子さんの奥ゆかしい構えがある。ひところ、大田洋子さんも落合の材木屋の二階にいたのだが、牛込の方へ越してしまっ

さんがお医者を開業されたし、神近市子女史も落合には古くからケンザイだ。これで、なかなか女流作家が多い。

落合には女流作家とプロレタリア作家が多いと云うけれど、いったいに一癖ある人が沢山

、いったいに一癖ある人が沢山住んでいる。私が、落合に移り住んだ頃、夏になると川添いをボッカチオか何かを唄って通る男

と二人で街へ飛び出して行ってしまう。いまのところ、落合の町より外にそう落ちつける場所もなさそうだ。この住みよさは四年

東京市

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悪いものであった。その頃はまだ手紙を出すのに東京市外上落合と書いていた頃で、私のところは窪地にありながら字上落合

本所

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は子供たちと茣蓙の上で遊びながら、お金を貰いに、本所から歩いて来たとか深川から歩いて来たとか云う人たちに、

鳥取

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読んで聞いて貰ったのを覚えている。尾崎さんは鳥取の産で、海国的な寂しい声を出す人であった。私より十

影をつくっていた。その頃、尾崎さんもケンザイで鳥取から上京して来ていた。相変らず草原の見える二階部屋で

としている頃、国から出て来られたお父さんと鳥取へ帰って行かれた。尾崎さんが帰って行くと、「この草原に

尾崎さんが鳥取へ帰って行ってから間もなく、私は吉屋さんの家に近い下落合

あった。実にまれな才能を持っているひとが、鳥取の海辺に引っこんで行ったのを私は淋しく考えるのである。

鳥取へ帰った尾崎さんからは勉強しながら静養していると云う音信があっ

巴里

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の本を出して欧洲へ一ヶ年の旅程で旅立った。巴里へいっても倫敦へいっても、よく、ばつけの白い堰や、

深川

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ながら、お金を貰いに、本所から歩いて来たとか深川から歩いて来たとか云う人たちに、「林さんはさっき出て

東中野

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東中野の駅までは私の足で十五分であり、西武線中井の駅まで

まれで、なかなかヨインのある御近所だと思っている。東中野へ出て行く道には、大名笹で囲まれた板垣直子さんの奥ゆかしい

目白

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ありながら字上落合三輪と呼んでいた。その上落合から目白寄りの丘の上が、おかしいことに下落合と云って、文化住宅が沢山

ように、色々に色が変って暮れて行ってしまう。目白商業と云えばこの学校の運動場を借りてはよく絵を書く人たちが

夕方など、このばつけの板橋の上から、目白商業の山を見ると、まるで六甲の山を遠くから見るように、色々

東京

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悪いものであった。その頃はまだ手紙を出すのに東京市外上落合と書いていた頃で、私のところは窪地にありながら

ももう終りであった。その年の十二月には、東京朝日の夕刊小説を書かして貰った。雪の降りそうな夜更けの事で

円も送ってやり「あッ!」と云う両親の声が東京まできこえて来たような気がした。両親は私の書くものを

銀座

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は馬鹿のようになってしまって、イの一番に銀座の山野でハンガリアン・ラプソディのディスクを買った。天金で一番いい天麩羅を下さい

大久保

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来る人たちが、落合は遠いから大久保あたりか、いっそ本郷あたりに越して来てはどうかと云われるのだ

落合川

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、和田堀の妙法寺の森の中の家から、堰のある落合川のそばの三輪の家に引越しをして来た時、はたきをつかい

が沢山並んでいた。この下落合と上落合の間を、落合川が流れているのだが、(本当は妙正寺川と云うのかも知れ

落合川をへだてた丘の下落合には、片岡鉄兵さんや、吉屋信子さんが住ん

この落合川に添って上流へ行くと、「ばつけ」と云う大きな堰があった

作家も及びもつかない巧者なものがあった。私は落合川に架したみなかばしと云うのを渡って、私や尾崎さんの住ん

云うものはちょっといいものだ。この頃はその唄をうたって落合川を歩いたひとも偉くなってしまったのか、夏になっても、

自働電話に添って下へ降りると落合川だ。嵐の日などは、よくここが切れて、遠まわりしなければ帰れ