うき草 / 林芙美子
地名一覧
長岡
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暗い道を走りながら、誰かが「長岡がいまやられてゐるンだ」と云つた。そのうすあかい虹の色は暗い
てゐた。四十里も山の彼方にあるといふ、長岡の燃えてゆく炎がいつまでも夜空をうすあかくほてらせてゐる。
東京
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、西側の二間を障子で區切つて、一部屋づつ東京から來た疎開者に貸してゐた。どの部屋も拾五圓ばかりの
、東京から主人が來たところだと云つて、さかんに東京の空襲の話をしてゐた。蝶子は足を拭いてそつと暗い蚊帳
戻つた。家へ戻ると、工場長の細君のところへ、東京から主人が來たところだと云つて、さかんに東京の空襲の話を
が來なかつたら、私、切符なしでもいゝからさつさと東京へかへるつもりだつたのよ。考へたつてみじめだわ。こんな生活なつて
「山は涼しいねえ、東京は暑くて風呂にもはいれないンだからねえ」
「どんなに厭な東京だつて、私、どうしてもかへりたいツ……」