出雲 飯田川 能登 秋田 鳥取 甲府 広島 東京 上野 小諸 広島 甲府 鳥取 秋田 能登 飯田川 小諸 上野 出雲 東京

ものでは、同じ広島で食った「鯛の生作り」と出雲名物の「鯉の糸作り」だ。鯛は生きのいい大鯛を一匹ごと

川か飯田川の学校へ頼んでみるつもりでしたけれど……飯田川には、わたしがいた頃の先生方もまだ大抵残っていますよ」

味ですな。輪島産のも……あの塗物で有名な能登の輪島ですな、あそこの鮑も結構なもんです。鮑の中のお職

をもって、いよいよ郷里の秋田へ引き上げることになった。秋田といってもずっと八郎潟寄りの五城目という小さな町である。実は善福寺

、清子と二人は良人の遺骨をもって、いよいよ郷里の秋田へ引き上げることになった。秋田といってもずっと八郎潟寄りの五城目という

は禁物にされているが、どうしてどうして鳥取の夏牡蠣ときちゃあ堪らない。シマ牡蠣ともいいますがね、ごく

「牡蠣は何んといっても鳥取の夏牡蠣ですがね。こっちでは夏は禁物にされているが

ない。樽に塩漬したのを馬の背に積んで甲府まで運ぶんですよ。富士の裾野をジャンガゴンガ揺られて甲州入りだ。鮑は

この他、舌に記憶されているものでは、同じ広島で食った「鯛の生作り」と出雲名物の「鯉の糸作り」だ。

――今でも忘れられないのは初夏の広島の「白魚のおどり食い」だ。朱塗りの器、といっても丁度小タライ

から待っていた。亡夫の友人で、清子たちがこの東京で頼る唯一人の同郷人だった。

田舎さ帰ったら当分はお寂しいこってしょうね。なかなか東京が忘れられませんよ」

汽車は上野でほとんど満員だった。熊谷の堤は桜が八分咲きで、物売りの

と老爺の間には蕎麦の話がはずんでいた。小諸が近かった。降りて名物の蕎麦を食べて行かないかなどと老爺は

小諸の駅に入った時、隣席の学生は城趾や藤村の碑のある方向

だけ眼がいくのは、何か気羞かしかった。思いがけなく小諸の駅で見た鳩が思い出された。二羽連れ立っていた睦まじさ

――今でも忘れられないのは初夏の広島の「白魚のおどり食い」だ。朱塗りの器、といっても丁度小タライと

この他、舌に記憶されているものでは、同じ広島で食った「鯛の生作り」と出雲名物の「鯉の糸作り」だ。鯛

ない。樽に塩漬したのを馬の背に積んで甲府まで運ぶんですよ。富士の裾野をジャンガゴンガ揺られて甲州入りだ。鮑はちょうど

「牡蠣は何んといっても鳥取の夏牡蠣ですがね。こっちでは夏は禁物にされているが、

は禁物にされているが、どうしてどうして鳥取の夏牡蠣ときちゃあ堪らない。シマ牡蠣ともいいますがね、ごく深い

、清子と二人は良人の遺骨をもって、いよいよ郷里の秋田へ引き上げることになった。秋田といってもずっと八郎潟寄りの五城目という小さな

をもって、いよいよ郷里の秋田へ引き上げることになった。秋田といってもずっと八郎潟寄りの五城目という小さな町である。実は善福寺さん

味ですな。輪島産のも……あの塗物で有名な能登の輪島ですな、あそこの鮑も結構なもんです。鮑の中のお職

「五城目が駄目だったら馬川か飯田川の学校へ頼んでみるつもりでしたけれど……飯田川には、わたしがいた

川か飯田川の学校へ頼んでみるつもりでしたけれど……飯田川には、わたしがいた頃の先生方もまだ大抵残っていますよ」

と老爺の間には蕎麦の話がはずんでいた。小諸が近かった。降りて名物の蕎麦を食べて行かないかなどと老爺は誘っ

小諸の駅に入った時、隣席の学生は城趾や藤村の碑のある方向を

だけ眼がいくのは、何か気羞かしかった。思いがけなく小諸の駅で見た鳩が思い出された。二羽連れ立っていた睦まじさが

汽車は上野でほとんど満員だった。熊谷の堤は桜が八分咲きで、物売りの屋台

ものでは、同じ広島で食った「鯛の生作り」と出雲名物の「鯉の糸作り」だ。鯛は生きのいい大鯛を一匹ごと

から待っていた。亡夫の友人で、清子たちがこの東京で頼る唯一人の同郷人だった。

田舎さ帰ったら当分はお寂しいこってしょうね。なかなか東京が忘れられませんよ」