高尾 東京 神田 銀座

高尾より江

硝子戸に近く、高尾より江――二十五六歳に見える――が、ぢつと外を眺め

貢　　高尾より江さん。

大いに民衆劇の運動を起すんださうだ。どうです、高尾さん、僕の友人のやる民衆劇を、一つ、見に行つてやつ

貢　　お前がさういふ気を起してくれればありがたい。高尾さんは、われわれの生活に、何か非常に尊い――例へば光り

東京近郊である。

わ、ここへ引込んでから、今日が初めてぐらゐですわ、東京へなんぞ出ましたのは……。

まるで和蘭へ行つたやうですよ。それからヒヤシンス、これは東京中で一番見事な花を咲かして見せます。

貢　　書いたらいいぢやないか。東京にゐるの。

に習ひましたし……。それに、何時ぞや、神田でお目にかかりましたわね、あの頃は、ミシンをやつてまし

手紙を出しとかうと思ふんだが……。当分、神田の鳳仙閣つていふホテルにゐるらしい。一人ぢや、家を持つわけに

より江　　銀座の、ピリエつていふ、フランス人の経営してる化粧品店、御存じない。あの店