双面神 / 岸田国士
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である。いや、さう思ひ込んでゐればこそ、今度、宝塚の温泉宿から、彼に宛てて、合図めいた手紙を寄越したのである
、俄然倍加したことに気がついたのである。宝塚と云へば、神戸とは眼と鼻の土地である。まして、夫の家
。それより、姉さん、いつたい、どうしたの? 宝塚にゐるんだつていふぢやないか? 一人で行つてるのかい?
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で、女中のきぬを相手に酒肴の支度をはじめた。横浜の知合から貰つた、輸出品の見本と称する鮭の燻製は父の好物
一隅に縮こまつてゐようとしたが、もう汽車は、横浜に著いたらしい。
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鬼頭からの絵葉書が十三枚溜つた。さつき、父が関東地方の地図を見たいと云ひ、本棚から陸地測量部の二十万分ノ一を探し
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方はぐつと人が減り、千種は弟たちと一緒に神楽坂や銀座をぶらつく機会が多くなる。師範生の千早も、幼年校生徒の千
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の地図を出してみたのである。そして、東京から九州の佐世保まで、都会から都会を縫つて、彼の後を追ひかけた。
話する機会がないんですもの……。兄はひと先づ九州へ来いつて云ひますし、あたくし、気が気ぢやないのよ。お忙しい
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ないんですよ。ところが先生、最近家出をして、関西のある温泉場に隠れてるらしいんです。それで、僕にちよつと来いと云つて
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牛込の高台を車は上つて行つた。運転手と押問答の末、狭い路地を、
さういふなかで、千種はなるべくなら、牛込の本宅から正式の喪を発したいといふ意見を述べた。
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口に至つては、冷淡も甚だしいではないかとか、満洲から名前も知らないやうな男で二十口といふ申込があるのは、さすが
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御殿山を降つて、踏切を越えると、京浜国道が左右へ延びてゐる。何処へ
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「うむ、帰つてれば、顔を出すだらう。あれは大阪からだつたか、悔みの電報を寄越したくらゐだから……」
「あら、大阪から……? そいぢや、新聞をごらんになつたんだわ」
た。それから子供が二、三人できて、今、大阪にゐます。滅多に訪ねもしませんが……」
大阪から、とにかく神谷の自宅へあてて電報を打つた。東京駅へ著いたら、電話
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「あら、あたくし、歩くんなら平気よ。女学校の頃、箱根へ遠足に行つて、六里だか歩かされたことがありますわ。一番
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「佐世保はええぞ。長崎が近いからのう。ラ・バタイユの古跡でも見て来い
を出してみたのである。そして、東京から九州の佐世保まで、都会から都会を縫つて、彼の後を追ひかけた。
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芝公園の深い木立の中の、古風な、しかし落ちついた西洋料理店である。
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……次男千里君は、三年前美術研究のため仏国巴里に渡り、今なほ刻苦精励を続けられてゐます。ええ、三男千久馬
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ご卒業後、福岡県県庁に奉職中、長女千登世さんは、神戸青木商会の大番頭……モトイ……営業部長久野信次郎君に嫁して、
「神戸の姉さんから、お便りありますか」
父から聞かされてゐたので、かうして不意に神戸から出て来たわけは、父からの返事を待ちきれなくなつたから
「それより、神戸の姉が今日出て参りましたの。今ご挨拶に伺ひますわ」
「でも、神戸の奥様が、お麦酒を召しあがつてらつしやいますから……
三通届いた。そして、更に、夜の九時頃、神戸から、千登世の夫久野信次郎が突然やつて来た。直人から娘がこんな
「そのへんを見て来い。神戸の奥さんがまだ帰らんのだ」
東京駅の発信で電報が届いた。彼女は、その足で神戸へ発つたらしい。信次郎は、それでも、にこにこしながら、――それ
「今朝? 神戸へ?」
です。かまはないから、遠慮なく云つて下さい。ほら、神戸の久野夫人ね、今までは、それこそ絶対になんでもないんですよ
ことに気がついたのである。宝塚と云へば、神戸とは眼と鼻の土地である。まして、夫の家を飛び出したと
そのお金……きつとさうだわ……姉さんがまた神戸から出て来たんでせう」
でしやうがないと思ひますの。あたくし、今夜にでも神戸へ行つてみたいんですけれど、父にそれを云ひ出すのになにか
ぴんと来るものがあつた。――ははあ、これもやつぱり神戸だな!
ちよつと用があつて行くんですが、あなたがゐるなら、神戸へ寄つてみようかな。なんか面白い手はありませんか、姉さん
の消印になつてゐるが、文面を見ると、これから神戸へ引返すといふこと、彼が、そんなに卑怯な男だとは知らな
「でも、あたくし神戸へ行つて来ましたの。義兄もそのわけを知つて、そんなら
「ああ、さう云へば、昨日聞いたんだけど、神戸の姉さんのこと、ほんとかい? 新聞にも出てたつて…
神戸の久野信次郎からは、いくら待つても金を送つて来ない。婉曲に
いよいよ、神戸から乗る船が蓬莱丸ときまり、東京を明日発つといふ日の晩
神戸を離れてすでに一週間である。彼女は、鬼頭のことをなるべく想ひ出す
。その理由を僕は知つてるんです。第一に神戸の姉さんの事件、第二に千久馬君の事件……」
「神戸の姉夫婦なんか、その例ぢやないかしら?」
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「佐世保はええぞ。長崎が近いからのう。ラ・バタイユの古跡でも見て来い」
ラ・バタイユといふのは、長崎を背景にした仏蘭西の小説で、日本の海軍将校が主人公として
に向ひます。元気旺盛です。父上先生によろしく。長崎にて。
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のことゆゑ、そんな暢気なもんぢやないとおもひますけど、福岡は母の生国でもあり、兄の勤務地でもあり、懐かしく楽しい旅を
千尋さんが出て来られるのを待たうぢやないか。福岡を今夜発てば、明後日には間に合ふんだからな。それはさう
て云やがんのさ。だもんだから、兄貴の奴、福岡へ連れてくつもりでゐるよ」
「あのね、あたしが若し、福岡へ行くやうになつたら、どうなさる?」
を進めます。それまで、僕の希望としては、福岡の兄さんのところへ行つてて下さい。時々、東京へ遊びに出て来
「あたしね、やつぱり、先へ福岡へ行つてみるわ。一度帰らないと、兄さんにもわるいし……」
「福岡まで一緒に乗つて行かうか?」
かね。ぢやとつくに内地に著いてる筈ですね。福岡の兄さんのところへ帰つてるに違ひないんですが……」
みようと思つたが、それよりも、こつちからぢかに福岡へ電報を打たうと考へた。
、話を進めようぢやないか。場合によつたら、おれが福岡へ出掛けて行つてもいい」
進んで島に残ることになりました。私は只今、福岡で旅の疲れを休めてをります。からだばかりではございません。
応じて、八年前に印度へ渡つた。郷里がこの福岡の在なので、ふとした機会に実家の人たちと懇意になつ
一緒に東京まで行く決心がつかなかつたのも、福岡へ来てから一日一日を空に過してしまつたのも、実を
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「むろん、一人です。京都にちよつと用があつて行くんですが、あなたがゐるなら、神戸へ寄つ
憂鬱になつて来た。それといふのも、最近ある京都の知合から、相当気乗りのする縁談を持ち込まれてゐるので、変な
「やつぱり京都でお降りになる?」
――いよいよ最後の検閲を終りました。帰途京都に一泊、桃山陵の参拝を終へて、東京に向ひます。
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洋服を脱いで和服の袷に著替へた。船は鹿児島の南端に近づきつつあつた。
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「まだ九時だらう。戯談ぢやない。これから新宿へ廻らなくつちや……」
「新宿へ廻つて、何すんの?」
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ながらく往き来をしない二人のいはゆる旧交が温つて、度々神田へ出てくるなら、それぢや、昼休みにでも寄れといふので、
「神田の通りで。千久馬君は向うへ残つたつていふぢやありませんか
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十二人がお茶の水駅へ集合し、そこから省線で吉祥寺まで行き、ぞろぞろと井ノ頭公園へ繰り込んだ。
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さうさう、鬼頭さんは、時々いらつしやる? 今東京でせう。あの方だけよ、信次郎とあたしとの連名で、ちやんと年賀状
てやつてくれ給へ。もうほどなく帰るだらう。久しぶりで東京が珍しいらしいよ」
日本全国の地図を出してみたのである。そして、東京から九州の佐世保まで、都会から都会を縫つて、彼の後を追ひ
「そんなことできるもんか。渡した人間はもう東京にはゐないよ」
悪い手紙を受け取つたのである。昨日の日附で東京中央局の消印になつてゐるが、文面を見ると、これから神戸へ
さう云うとるやないか。問題は、その動機やて。東京にラヴァアがをつたていふ噂やぜ」
と云つて家を出たきり、消息がなかつた。また東京へでも遊びに帰つたのだらうと思ひ、そのまま放つておくと
つてゐたのだと断じ、千登世の情人とは、東京の某大学教授であり、久野には、ダンサアくづれの妾があることを
いふことで告別式には出て来ず、千種はその翌朝東京へ帰ることにした。
帰途京都に一泊、桃山陵の参拝を終へて、東京に向ひます。元気旺盛です。父上先生によろしく。長崎にて。
の日付から四日たつてゐる。ことによつたら、もう東京へ帰つてゐるかも知れない。さう思ふと、今すぐにでも会
、行つてみたわけぢやないが……おい千種、ちよつと東京近郊の地図を持つて来なさい」
「兄は、是非つていふんぢやないんですの。東京にゐる理由と、その方法さへ立てば、それはかまはないつて云つて
は、僕がやめてもらひたいな。家庭をはなれて東京でぶらぶらしてるより、僕の考へぢや、少しは窮屈でも兄さんのとこ
は、福岡の兄さんのところへ行つてて下さい。時々、東京へ遊びに出て来たらいいでせう。僕の家で宿ぐらゐし
いよいよ、神戸から乗る船が蓬莱丸ときまり、東京を明日発つといふ日の晩、千種は兄二人と一緒に鬼頭の
先づ一旦東京へ帰つて、鬼頭の顔を見なければ承知ができない。さういふ気持
「さうか。で、幾日ぐらゐの予定? すぐ東京へ出て来られるでせう?」
「休暇は一週間以内ですよ。東京へ出て来たら、まつさきに僕んとこへ来ますね。それ約束
「それをもつと早く訊かんといふ法があるか。東京のデパートなら何処でも売つてるぞ。ヤヌスと云へばわかる。香水ばかり
彼女は、今日こそは今日こそはと思ひながら、東京へ出ること、即ち神谷の仕事を手伝ふことになつた話をつい云ひ
で真野蕃といふ地質学を専攻した男がゐて、東京の帝大を出るとすぐにある研究所へ勤めたのだが、外国の雑誌
した怖れが常に潜んでゐた。神谷と一緒に東京まで行く決心がつかなかつたのも、福岡へ来てから一日
たかといふと、決してさうではなかつた。事実、東京へ出る希望の裏には、何れは鬼頭にも遇はねばならぬと
手伝つてくれないかつておつしやるんだけど……。東京へ行つたら、あたし、お友達で宿をしてくれる人がゐるから、
兄はしかし、案外すらすらと東京行を彼女に許した。嫂も、それではといふので、着物
「某高官○○○○氏東京駅頭にて狙撃さる」といふ見出しで、
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日比谷公会堂に近い帝国ホテルのグリルで、三人は卓子を囲んだ。
日比谷まで、女は女、男は男と並んで道を歩くやうなことに
外へ出て人波に揉まれながら、やつと日比谷の交叉点へ辿りつくまで、鬼頭と深水とは、彼女の蒼ざめた顔色に
――犯人はインテリ風の青年で、兇行直後警戒中の日比谷署員の手で難なく逮捕されたが、政治的背景は未だ全く不明で
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品川の駅へ出る道である。彼女はそこから省線で市ヶ谷まで行くつもりであつた。彼が、
一緒にゐさへすればと、しばらく時間をおくつもりで、市ヶ谷見付の方へ、ぶらぶら坂を降りて行つた。
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時計をみると四時だつた。高輪から品川の駅へ出る道である。彼女はそこから省線で市ヶ谷まで行くつもりで
「やあ」と云つて挙手の礼をした。鬼頭が品川行のバスへ飛び乗らうとした瞬間、
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「それぢや、お茶の水二枚」
「ぢや、すぐいらつしやい。お茶の水からぢきです。主婦之友社、ご存じでせう。あの横をはいつ
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声をかけたい衝動を幾度も制しながら、そのまま裏口から日本橋の方へ出た。良心がとがめるといふほどでもないが、彼の
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「ええと、ここが五反田……池上線……洗足池……まあ、このへんに空地があれば、ひとつ見に行つても
大体この間取りで設計と見積りを出してくれ。土地は、洗足池のそばの石川台つていふところだ。おれが案内する」
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「ええと、ここが五反田……池上線……洗足池……まあ、このへんに空地があれば、
やがて、二人は、省線で五反田まで行き、更に池上線に乗り換へて、石川台といふところで降りた。
探したらしい。夕方の四時頃まで、てくてく歩いて、五反田で落ち合つたんですが、みんなへとへとでしたよ。その代り、酒
五反田の駅で鬼頭と別れてから、彼女は、何よりも自分の力で
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ぐつと人が減り、千種は弟たちと一緒に神楽坂や銀座をぶらつく機会が多くなる。師範生の千早も、幼年校生徒の千足
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ッ葉服を着てるのがあるでせう。あれ、赤羽製鋼の重役の息子よ」