安吾史譚 05 勝夢酔 / 坂口安吾
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彼の兄が信州や越後水原などの代官をやっていたので、兄について巡見に行って納米
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の庄屋をよんで、夢酔名儀の借用として大阪行きの旅費四十両、岡野の家には食べる米もなくなってるから、その年の暮
それから丈助をよんで十五両の手金だけ渡し、大阪の知行所に金を調達させてくるから十二月まで待つように誓約書を交し
そこで夢酔は岡野の家来等お供を四人つれて大阪在の岡野の知行所へついた。
大阪の町奉行の用人を知っていたから、それを訪ねて帰ると、大阪の
用人を知っていたから、それを訪ねて帰ると、大阪の奉行所から追っかけ使者がきて酒肴を届けて行った。その肴を村の
夢酔は翌日お供をつれて大阪見物に行き、ゆっくり女郎屋へ滞在などして帰ってきた。それから、
もっとも幕府へ無断で大阪へ行ったのが知れて禁足を命じられたから、禁足中ちょうだいできない月給
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元でキンタマが腫れて膿がしたたるようになり閉口して江戸のわが家へ戻ったが、キンタマがくずれて起居もできぬようになり、二
二十一の年に江戸を食いつめて、また家出をした。事があったら斬死するつもりでいた
くれたから、その門人に稽古をつけてやったりして江戸へ帰る気がなかったのだが、兄貴の子で彼の相棒の一人たる
ところが江戸から連れていった猪山勇八というのが事をあせって内々村方へ借金の
、集合しては押し寄せてくる。供の者はふるえ上って江戸へ帰ると言いだした。
から白ムク姿が現れた。するとお供の者がかねて江戸を出発する時から用意してきた首桶を静々と持って現れる。夢酔
こうして五百五十両の用金を差しださせ、江戸へ帰って丈助の三百三十九両を払ってやり、あとは岡野の費用に当てさせ
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六甲山から雨雲が現れてきたから、夢酔は合羽持に向って、
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の中へ斬りこんだら道があいたから一目散に逃げだして、雷門で三人落合うことができた。いったん吉原へ行ったが、源兵衛が気づかいだ
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おれが中興だと夢酔は威張っている。神田お玉ヶ池の千葉周作は同時代の人だが、その名は彼の自叙伝中には一度
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「左様でこざいますか。あさっては蔵前の八幡の祭りでありますが一ケンカやりましょうから一しょにいらッしゃい
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たが、おれが中興だと夢酔は威張っている。神田お玉ヶ池の千葉周作は同時代の人だが、その名は彼の自叙伝中
ある日、神田の仕立屋でカゲ富の箱をしている奴がきた。ちょうど今日は