堺 三本松 大阪 大津

の塀で囲まれて居ます。白壁には名灸やら堺の街の呉服屋やら雇人口入所の広告やら何時でも貼られて居るのです

今日角造さんに聞くと三本松の家を山仁さんはまた堺の商人へ売るさうだよ。私はそれがいいと思つて居るよ。おまへ

の使ふものにしなければならないのだからね。堺へ持つて行つて幾つかの家に分けて拵へたらいいだらうよ。

。自家に所有権のあつた其沢山の田に取巻かれた三本松の丘の家は、今では村の晒問屋の山仁の別荘になつて

でした。お幸は強い性質の子でした。丘の三本松は好い形であると眺めることはあつても、感情的な弱い涙をそれに

がいいよ。ねえお幸、今日角造さんに聞くと三本松の家を山仁さんはまた堺の商人へ売るさうだよ。私はそれが

心を持つて居たおつるが九月の新学期から大阪の某女学校へ入る事になつて其地の親戚の家へ行つてしまつた

新しい貼紙の一つあるのを見出したのです。それは大津の郵便局で郵便配達見習を募集するものでした。

ばかりでした。お幸は髪を切つて男装をして大津の郵便局へ雇はれて行かうかとそんなことを思つて居るのです

何方かと云へば海の仕事をする人と工場の多い大津と云ふ街をこの村の人は異端視して居るのだ。だから

お幸はまた最初の考へに戻つて、大津は此処から云へば三里も隔つて居ない所だけれども、泉南泉北と

「私今晩帰り途で大津の郵便局の郵便脚夫の見習に十五以上の男を募集すると云ふ貼紙を