横浜 巴里 京都 神戸 隅田川

人が走つて来ました。良人ぢやありません。横浜から神戸へ行く船で顔馴染になつた長谷部と云ふ画家なんです。良人が

『わたしは巴里へ行くのよ。』

あることが解つて居てもやつぱしね、すうと巴里を抜け通つてしまつて、地中海の海岸まで伴れて行かれやあしない

四時に巴里へ着くことに決つて居ても、巴里が終点であることが解つて居てもやつぱしね、すうと巴里

比べものにならないやうな優しい車丁ですよ。四時に巴里へ着くことに決つて居ても、巴里が終点であることが解

それから一時程経ちました。汽車がもう巴里の停車場の構内に入つて行くらしい。大きな機関車の壊れたのを見るやう

『奥様、巴里ですよ。』

たよ。皆一緒に歩き出しました。わたしは仏蘭西の巴里へ来たと云ふよりも、日本人の居る国へ来たと云ふ気で

その店に沢山居る家がありましたよ。わたしが恐る恐る巴里と云ふ都に目を向けたこれが初めです。

たよ。わたしはね西洋へ来て居ることだの、巴里だのとは全く忘れてしまつた、あのね、遊仙窟とか紅

家の直ぐ隣においでになるのは桜井さんと云ふ京都の画家で、非常な美男でいらつしやるつて良人はよく手紙に

走つて来ました。良人ぢやありません。横浜から神戸へ行く船で顔馴染になつた長谷部と云ふ画家なんです。良人が前

で居ましたよ。かなりいろんな船が居りますのよ。隅田川の半分くらゐの川だけれど。甲板の黄色く塗つたのや、赤い色の