旭川 北海道 樺太 松山 東京

単衣が出来上った。旭川のお母さんが炭一俵を買ふのをやめた其のお銭が此の単衣になっ

旭川ではもう日曜学校を終ったらう。親、兄弟、親類、知己、一人々々の顔

旭川の母様からお手紙をいたゞいた。

旭川のやす子さんがとう／＼死んだと云ふ。人生の暗い裏通りを無やみやたら

朝九時前に本郷基督教会へ行く。日曜学校も北海道とはちっとも変らない。何うしてだらうか。きれいな若い女の人、

ある人であったが……。兄嫁と不和な為に北海道へ渡ってひとりぽっち、語るに友なき淋しい生活をしてゐる故、末ながく

としたところのある彼の女が兄嫁との不和で北海道へ来たといふ……ありさうな事だ。私の様に骨もない

樺太のニマポを見せていたゞいた。何れ程古いかわからぬニマポ、ピカ／＼光っ

何だか情けない様な気がした。ほんとうに情ない。松山さんからの手紙。あの方の文字はあの人の気性其の物をあらはした

松山さんはほんとうに懐かしみのある人だった。たしかにいゝ人だった。姉妹

母様からの手紙。松山さんの話、大尉の話、八重さんの話、すべてにお母様式を遺憾

東京の物売りは実際面白い。豆腐屋がアウ／＼と何か気の狂った

私のは今度直す所へやって下さるとのお話、東京の商人はずるくて、地方へは悪いものを持ってゆくのだと云ふ

てゐるのか、それさへ私にはわからない。私が東京へ来た、お友達に知らせやうと思った事いまだ一度もない。

柄の値段を問合せて来た。かはいさうに……東京へ来て私が一人で悠々闊歩、自由に商店をあさりまはる事が

私が東京の地をふんでからちょうど一月たった。長い様でもあり短い様

岡村千秋さまが、「私が東京へ出て、黙ってゐれば其の儘アイヌであることを知られずに

私が東京といふ土地に第一歩を運んだのは二月前の今日であっ