大阪 根津 東京 上野 永代橋

の褪せた舊式のフロックを着てゐた。これから大阪で開かれる全國清酒品評會への出席を兼ねて伊勢參宮をするとのこと

根津の下宿に居たある年の夏の夜、圭一郎は茶の間に招かれて宿

なつかしい東京のお兄さま。朝夕はめつきり寒さが加はりましたが恙もなくご

を送つてゐるうち千登世と深い戀仲になりいよ／＼東京に駈け落ちしなければならなくなつた其日、彼は金策のために山の

た時、二人は一刻も猶豫して居られず忽ち東京に世を憚らねばならぬ仲となつた。

を知らないといふことであつた。村に居ても東京に居ても束の間もそれが忘れられなかつた。往來で、電車の

彼は更に上野山下に廣告係の家を訪ねたが不在であつた。廣小路の

永代橋近くの社に着くと、待構へてゐた主人と、十一月二十