明治開化 安吾捕物 05 その四 ああ無情 / 坂口安吾
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四月十一日横浜出帆。追々各地を廻り、同年暮サンフランシスコ興行中、銀主三与吉の家族多勢なるを好まず、演芸に必要なる者を
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た。然るべき官員の息子で、赤坂に屋敷があり、本郷へ通学していたが、いつしかヒサと言い交す仲になった。
ところへ事件が起った。本郷の薬屋の息子で、河竹新七の弟子と称する狂言作者見習いの文学青年、小山田
彼女は中食後本郷の宿舎をでた。六区へ着いたのは一時ごろ。二時ごろ荒巻
お梨江と二人考えこんでいた。見ると、上野だの本郷だの浅草だのと書きこんだ図面であった。
時間を狂わせるため。又、犯人を男と見せかけるため。本郷を中心に行李が往復している如くに見せかけたのは、大方小山田の犯行
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興行を打ちきり、三十日に荷造りして、十二月二日から横浜で興行することになっていた。中橋からの仕送りで生活に困らぬ夢之助
留守番によって報ぜられた。梅沢女剣劇一座は昨二日来横浜に興行中で、この小屋は目下休業している。
そこへ横浜から夢之助はじめ、小山田新作、荒巻敏司らが連行されてきた。ここに
まもなく横浜の興行主が打ち合せにきたので、彼女と母と小山田の三人で
一時ごろ、横浜の興行師が来たので、座長、夢之助、彼の三人で料理屋へ招い
四月十一日横浜出帆。追々各地を廻り、同年暮サンフランシスコ興行中、銀主三与吉の家族多勢なる
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「あの日だけは今までと違います。いつもですと吾妻橋から仲見世へ曲り、その中程から又曲って真ッ直ぐ露月へ這入るはずの奥さんが
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一同をうながして帰途についた。神楽坂へ戻りついて、門前で虎之介と別れるとき、ニッコリ笑って、ささやいた。
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荒巻と彼女はさっそく根岸の自宅へ戻って、用が一先ず片づいたので、酒をのみ、五時
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午後四時四十五分新橋発神戸行の直通にのって故郷四国へ赴く筈であったが、その翌日も、翌々日も東京に居た。彼
いえ。そんなことはありません。ヒサは私を追って四国へくることに話がきまっていました。ただ、時期と方法の問題を
のがれなのです。なんとかしてヒサが先に四国へ来るように、夢之助がおくれるようにと、そこに苦心していたの
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敏司という美男子があった。然るべき官員の息子で、赤坂に屋敷があり、本郷へ通学していたが、いつしかヒサと言い
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と、二十二三ぐらいと思われる女によびとめられ、根津までと云うので、彼女を乗せて池の端から帝大の方、当時は狐狸の
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お預けをねがってゆっくり中身を拝ませていただこう、と、下谷万年町の貧民窟の自宅へ行李を持ちこんだ。
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。荒巻敏司は十一月二十九日午後四時四十五分新橋発神戸行の直通にのって故郷四国へ赴く筈であったが、その翌日も
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身にしみやがると、モーロー車夫の捨吉は毛布をひっかぶって上野広小路にちかい小路の角で辻待ちをしていた。上野駅には車夫集会所
は、急ぎ足に切り通しを降り、九時ちょッと廻ったころに上野広小路でモーロー車夫の捨吉によびかけました。捨吉は彼の奇妙な命令を体し
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別荘に行李が一個あずけてあるから、それを受けとり、浜町河岸の中橋本邸へ届けてもらいたい。お前が行李をつむと、別荘番
て門をでたが、切り通しを降りるころから考えた。浜町といえば、そう遠くはない。一ッ走り、届けるのは何でも
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昔からゴマノハエと雲助は道中のダニと申す通り、今日、東京のダニはスリと人力車夫。あのダニどもが、二円という大枚の
衣を通して光りかがやくばかり、菊坂小町、本郷小町、イヤ、東京小町だなどと評判をよんだ娘である。母親も人目にたつ後家で
は旅装をととのえて家を出ている。家人は彼が東京を出発したものと信じている。
が、その翌日も、翌々日も東京に居た。彼が東京を去ることになったのは、両親が彼の前途に見切りをつけ、
四国へ赴く筈であったが、その翌日も、翌々日も東京に居た。彼が東京を去ることになったのは、両親が彼
を追うには用意がいる。それを充分に打ち合せるために東京にとどまってアイビキをつづけていたのである。
帰郷する筈の荒巻が尚東京にとどまっているのは、ヒサを郷里へ同行せしめるためであった。
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を洗ったアゲク、中橋にはヒサという妾があって向島にかこわれていると知り、ここを訪ねてヒサが十一月の晦日以来
であった。話はうまく進んで、ヒサとその母は向島の立派な妾宅に住むこととなった。それがこの五月、わずかに
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その二。荒巻敏司は十一月二十九日午後四時四十五分新橋発神戸行の直通にのって故郷四国へ赴く筈であったが、その
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の劇場の番附には入れてもらえぬ悲しい小屋だ。浅草奥山が官命によって取払われたのは明治十七年、その代地とし
女剣劇のかかっていたのは、浅草六区の飛龍座というバラック造りの劇場の番附には入れてもらえ
行ったというのは真ッ赤な偽りで、いつも真ッ直ぐ浅草へ参っておりました」
最後に新十郎は浅草六区の地に立った。飛龍座をはじめ、小屋の一ツ一ツ
、新しい小屋をたてるとかでね。常盤座とかいう浅草一の立派な小屋をつくるとかいうことで」
二人考えこんでいた。見ると、上野だの本郷だの浅草だのと書きこんだ図面であった。
車夫の姿で車をひいて一散に駈け戻ります。行く先は浅草。飛龍座の隣りの小屋です。一時間なら楽々到着できます。行李を
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、先客のお梨江と二人考えこんでいた。見ると、上野だの本郷だの浅草だのと書きこんだ図面であった。
が、その日の夕方六時ごろ、とっぷり日のくれた上野の山下で音次という車夫をよびとめました。帝大裏と不忍池の間
の如くに、この犯人はただ一人、共犯はないぜ。上野山下と広小路に出没した男女二人いずれも同じような大きな荷物を持って
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ありましてな。中橋英太郎が腐爛した死体となって隅田川の言問のあたりへあがりましたぞ。水死ではなくて、クビをしめら