霧島 満洲 長昌院 浅草 東京

掘つたあとが大きくそこに残つてゐた。唯、霧島の躑躅が赤くあたりを絵のやうにした。

と種々なことをして歩いた。台湾にも行けば満洲にも行つた。仏の戒めた戒律をわざと破つて行くやうに見えるほど

久しく無住であつたＨ村の長昌院には、今度新しい住職が出来た。それは何でも二代前の老僧

長昌院と言へば、この界隈でもきこえた古い寺である。徳川時代にもいくら

たけな……」馬方は考へて、「さう／＼長昌院ツて言つたつけ。」

でも、東京に行つてゐるさうです。最後の女と浅草あたりで道具屋か何かしてゐるさうです。」かう世話人は言つた

をり／＼兄弟子のことを考へた。「何でも、東京に行つてゐるさうです。最後の女と浅草あたりで道具屋か何かし

配偶者にしようと思つたらしかつた。現に、かれが寺から東京へ、僧から俗へと移つて行つたのも半ばそのためであつた

――今度此処にかれを伴れて来た寺の世話人に東京でゆくりなく逢つた時、かれは寺のことを聞き、老僧のこと

群」の一人になるところではなかつたか。あの時もし東京にゐたならば――。

、十年間に巨万の財産を造つた。今では東京に大きな邸宅を構へて、大名のやうな生活をしてゐるといふ

息子は、田舎ではどうすることも出来ないので、東京へ出かけて行つて、種々の艱難辛苦を嘗めた挙句、貧民窟近くに金貸

上さんの心は動かずには居られなかつた。東京に行つてからの慈海の噂も始めは少しきいてゐたので、

てゐたが、今年は正月からずつと此方にゐて、東京に上つて行くやうな様子もなかつた。「もうそろ／＼良縁が

娘は今年二十一歳、昨年まで東京の学校に出てゐて、暑中休暇、正月の休みなどにはよく洋傘を