駒場 道玄坂 武蔵野 東京 渋谷 新宿

渋谷の通を野に出ると、駒場に通ずる大きな路が楢林について曲つてゐて、向うに野川のうねうね

美しく咲いてゐた。太田玉茗君と一緒に湖処子君を道玄坂のばれん屋といふ旅舎に訪ねると、生憎不在で、帰りのほどもわからない

動いてゐるのが見えた。地平線は鮮やかに晴れて、武蔵野に特有な林を持つた低い丘がそれからそれへと続いて眺められた

の上の後の方には、今と違つて、武蔵野の面影を偲ぶに足るやうな林やら丘やら草藪やらが沢山にあつた。

、こがらし、落葉、朝霧、氷、さういふものが『武蔵野』の中に沢山書いてあるが、それは皆なこの丘の上の家

それは十一月の末であつた。東京の近郊によく見る小春日和で、菊などが田舎の垣に美しく咲いてゐ

畳、その向うが勝手になつてゐて、何でも東京の商人が隠居所か何かに建てたものであるといふことであつ

渋谷の通を野に出ると、駒場に通ずる大きな路が楢林について曲

棚があつて、斜坂の紅葉や穉樹を透して、渋谷方面の林だの丘だの水車だのが一目に眺められた。

帰りは月が明るかつた。私と玉茗君とは、渋谷の停車場の方へ急いで歩きながら、『面白い好い男だね。あんなさつぱり

に、山路愛山君が来た。愛山君は今でも渋谷にゐるが――その時と同じ家に住んでゐるが、そこからその

は忘れたが何でも磯といふ大工の嚊で、新宿で女郎をしてゐて、年が明けてそこに来て一緒になつ