巣鴨 東京

巣鴨の拘置所から、戦犯容疑者としての嫌疑が晴れて釈放されたわし

自分でも不思議なくらい、降服ときまって戦争がすみ、巣鴨に拘置されている間に七十八年の過去というものが夢の様

大家族が勝手気ままに暮らした跡が歴然として居る。巣鴨へ迎えに来た長男も次男も、留守に邸を使って居たこと

巣鴨から帰って、居間に入った時、敷居に両手を突いて、奈世

密通して居たればこそ、わしが巣鴨から帰って、始めて顔を合わせた時、奈世は良心に恥じて

「杉山、東京の者は誰か居るか」

に情けなかった。それかあらぬか、週に二度ほど東京から通って来る執事の杉山に幾ら命じても、邸の修理をすべき

夜になって、杉山が東京へ帰る挨拶に来た時、葬式のことは二人の郷里から身内が来