榛名湖 高崎 赤城山 伊香保神社 上野 東京

雨の爲に榛名湖は見られなかつたが、併し雨のおかげでからだの休養が出來た。

茶店の周圍に花畑がある。花を切つて高崎へでも賣りに出すのかと聞くと、唯々お客さんに自由に進呈する

の噴出したものかも知れない。それとも隣りの赤城山の噴出物のお裾分けかも知れない。

階段の上ぼりつめに伊香保神社があつて、そこを右へ曲ると溪流に臨んだ崖道に出る。此の道路

榛名を見物の目的で出掛けたことがある。ところが、上野驛の改札口を這入つてから、ふとチヨツキのかくしへ手をやると、

選ばれることになつた。十月十四日土曜午前十一時上野發に乘つたが、今度は掏摸の厄介にはならなくて濟んだ

上野へついて地下室の大阪料理で夕食を食つた。土瓶むしの土瓶のつる

來た本來の目的に合はない、それよりか寧ろ東京の宅の縁側で咲殘りのカンナでも眺めて欠伸をする方が遙か

のバスの待合所へ歸つて來たら、どういふものか急に東京へそのまゝ引き返したくなつた。此の坂だらけの町を、あるかないか

のは面白い。ずつと下の方の座敷には足踏み轟かして東京音頭を踊つて居るらしい一團がある。人數は少いが此組

には隣室へ子供づれの客が着いた。單調な東京音頭は嵐か波の音と思つて聽き流すことが出來ると假定し

の自然を索ねて來るものゝある一方では又、東京では斷ち切れない色々の窮屈を束縛をふりちぎつて、一日だけ

あつた。此れも存在の鮮明な點に於て前述の東京音頭の連中と同種類に屬する人達であらう。

のやうなものに味噌※を塗つたものであつた。東京の下町の若旦那らしい一團が銘々にカメラを持つてゐて、思ひ思ひに

。すると階下の大廣間の演藝場と思はれる見當で東京音頭の大會が始まつた。さうして此れが約三十分續いた

愉快でない。此れも矢張り宿屋へ蓄音機を持ち込み、宿屋で東京音頭を踊るタイプの、無邪氣で善良で、人に迷惑をかけるの

東京踊なども矢張り此のサム・シングの一つではあるかも知れない。