コーヒー哲学序説 / 寺田寅彦
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原始的なるビフステキを食うせいだと論ずる人もあるが、実際プロイセンあたりのぴりぴりした神経は事によるとうまいコーヒーの産物かもしれない。
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神経は事によるとうまいコーヒーの産物かもしれない。パリの朝食のコーヒーとあの棍棒を輪切りにしたパンは周知の美味である。
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その禁欲主義哲学に陶酔の結果年の若いに自殺したローマの詩人哲学者もあるくらいである。映画や小説の芸術に酔うて盗賊や放火
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計られるような気がした。自分の出会った限りのロンドンのコーヒーは多くはまずかった。大概の場合はABCやライオンの民衆的なる紅茶
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国々を旅行する間にもこの習慣を持って歩いた。スカンディナヴィアの田舎には恐ろしくがんじょうで分厚でたたきつけても割れそうもないコーヒー茶わんにしばしば
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ベルリンの下宿はノーレンドルフの辻に近いガイスベルク街にあって、年老いた主婦は陸軍将官
持って来る熱いコーヒーを飲み香ばしいシュニッペルをかじった。一般にベルリンのコーヒーとパンは周知のごとくうまいものである。九時十時あるいは十一時
、またフリードリヒ街や、ライプチヒ街のショウウィンドウをのぞき込んでは「ベルリンのギンブラ」をするほかはなかった。それでもつぶしきれない時間をカフェーや
ベルリンの冬はそれほど寒いとは思わなかったが暗くて物うくて、そうし
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も毎日一合の牛乳は欠かさず飲んでいたが、東京で味わったようなコーヒーの香味はもう味わわれなかったらしい。コーヒー糖と
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西洋から帰ってからは、日曜に銀座の風月へよくコーヒーを飲みに出かけた。当時ほかにコーヒーらしいコーヒーを飲ま
でいて、そうしてある秋の日の午後久しぶりで銀座へ行ってそのただ一杯を味わった。そうしてぶらぶら歩いて日比谷へんまで
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行ってそのただ一杯を味わった。そうしてぶらぶら歩いて日比谷へんまで来るとなんだかそのへんの様子が平時とはちがうような気