日本アルプス ローマ ロンドン 甲州 ベルリン 横浜 東京 両国橋

それから電車のポールの尖端から出る気味の悪い火花も、日本アルプスを照らす崇厳な稲妻の曾孫くらいのものに過ぎない。しかし同じ源から出た

のＡ君に話したら、Ａ君のいうのに、昔ローマを滅ぼしたのは風呂場である、あまり風呂場を鼓吹するのは危険ではない

は危険ではないかと。しかしまた考えてみると昔ローマには満員電車というもののなかった事も確かである。

唱いたくなる事である。英国の有名な物理学者が近頃ロンドンのローヤルインスチチューションでやった講演の中で「人は何故浴場で歌いたくなるか」

鳴る音のエネルギーの源をだんだんに捜して行くと思い掛けない甲州の淋しい山中の谷川に到着する。気持のいい谷川の瀬の音と電車の

声が出にくいのは誰も知る通りである。いつかベルリンで見た歌劇で幕があくとタンホイゼルが女神の膝を枕にして寝

外国から帰った当座の事であった。二年振りで横浜へ上陸して、埠頭から停車場へ向かう途中で寛闊な日本服を着て素足

間もなく裏切られてしまわねばならなかった。その夜東京の宿屋で寝たら敷蒲団が妙に硬くて、まるで張り板の上にでも

あるいはいっその事に全部無くしてしまったら、それだけでも東京市民の顔は幾分か柔らかく快いものになりはしまいかと思われる。

ところがある。もし東京にあの風が吹かなかったら、もし東京の街の泥と塵がなかったら、そして電車の数を増すか、あるいは

この説には充分に腑に落ちないところがある。もし東京にあの風が吹かなかったら、もし東京の街の泥と塵がなかったら

東京市民の顔の緊張がやや弛んで見える場所がある、それは外でも

この有難い設備と習慣とがなかったら東京市民の顔は今頃どんなものに変化しているだろう。

もし東京市民が申し合せをして私宅の風呂をことごとく撤廃し、大臣でも職工で

ものに過ぎない。しかし同じ源から出たエネルギーはせち辛い東京市民に駆使される時に苦しい唸き声を出し、いらだたしい火花を出しながら

そういう社会に顔を出さなかったためかもしれない。東京へ帰ると英国人のように呑気な顔も少ないがドイツ式に緊張した

日本でも田舎へ行けば、東京とちがった顔が見られるかもしれない。これから旅行する機会があっ

。何とかいう芝居で鋳掛屋の松という男が、両国橋の上から河上を流れる絃歌の声を聞いて翻然大悟しその場から盗賊