鎌倉 七条 奈良 京都 田端 東京 須田町

それから最近には鎌倉に住つて横須賀の学校へ通ふやうになつたから、東京以外の十二月

にも親しむことが出来たといふわけだ。その時分の鎌倉は避暑客のやうな種類の人間が少いだけでも非常にいい。ことに今時分

種類の人間が少いだけでも非常にいい。ことに今時分の鎌倉にゐると、人間は日本人より西洋人の方が冬は高等であるやうな

の差が目立つといふことをきいてゐるが、今頃の鎌倉を濶歩してゐる西洋人を見るとさうだらうと思ふ。

京都へ初めて往つた時は十二月で、その時分は、七条の停車場も今より小さかつたし、烏丸の通だの四条の通だ

それだけよかつたといふ訣だ。さういふ京都とか奈良とかいふ処は度々ゆくが、冬といふとどうもその最初の時

たのを覚えてゐる。時雨といへば矢張り其時、奈良の春日の社で時雨にあひ、その時雨の霽れるのをまつ間お

東京にゐて、その外の場処といつたら京都とか奈良とかいふ甚だ平凡な処しかしらないんだけども、京都へ初めて往

つたから、それだけよかつたといふ訣だ。さういふ京都とか奈良とかいふ処は度々ゆくが、冬といふとどうもその

古ぼけた京都を知つてゐるだけだが、その古ぼけた京都に滞在してゐる間に二三度時雨にあつたことをおぼえてゐる。

だのがずつと今より狭かつた。でさういふ古ぼけた京都を知つてゐるだけだが、その古ぼけた京都に滞在してゐる間

とかいふ甚だ平凡な処しかしらないんだけども、京都へ初めて往つた時は十二月で、その時分は、七条の停車場も

何時でも東京にゐて、その外の場処といつたら京都とか奈良とかいふ甚だ平凡な処しかしらないんだけども、京都

がくる。鵯がくる。たまに鶺鴒がくることもある。田端の音無川のあたりには冬になると何時も鶺鴒が来てゐる。それ

から十一月十二月皆好きだ。好きといふのは、東京にゐると十二月頃の自然もいいし、また町の容子もいい。

十二月は僕は何時でも東京にゐて、その外の場処といつたら京都とか奈良とかいふ甚だ

に住つて横須賀の学校へ通ふやうになつたから、東京以外の十二月にも親しむことが出来たといふわけだ。その時分の

時は暗い寂しい町が余計眼につくのがいい。たとへば須田町の通りが非常に賑かだけれど、一寸梶町青物市場の方へ曲るとあすこは暗く