鸚鵡 ――大震覚え書の一つ―― / 芥川竜之介
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桜田より半蔵門に出づるに、新宿も亦焼けたりと聞き、谷中の檀那寺を手頼らばやと思ふ。饑渇愈甚だし。「五郎を殺すの
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丸の内に出づれば日比谷の空に火事の煙の揚がるを見る。警視庁、帝劇など
池の水を飲む。孫娘は遂に見つからず。夜は又丸の内の芝の上に横はる。鸚鵡の籠を枕べに置きつつ、人に
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にも潰れざりしかど、忽ち近隣に出火あり。孫娘と共に両国に走る。携へしものは鸚鵡の籠のみ。鸚鵡の名は五郎。背は鼠色、腹は桃色
両国より人形町へ出づる間にいつか孫娘と離れ離れになる。心配なれども探して
内一帯より日比谷迄、孫娘を探しまはる。「人形町なり両国なりへ引つ返さうといふ気は出ませんでした」といふ。午ごろより饑渇を覚
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(例)日比谷迄
丸の内に出づれば日比谷の空に火事の煙の揚がるを見る。警視庁、帝劇などの焼け居り
に置きつつ、人に盗まれはせぬかと思ふ。日比谷の池の家鴨を食らへる避難民を見たればなり。空にはな
ごろより饑渇を覚ゆること切なり。やむを得ず日比谷の池の水を飲む。孫娘は遂に見つからず。夜は又丸の内の芝
翌日も丸の内一帯より日比谷迄、孫娘を探しまはる。「人形町なり両国なりへ引つ返さうといふ気は
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両国より人形町へ出づる間にいつか孫娘と離れ離れになる。心配なれども探してゐる
翌日も丸の内一帯より日比谷迄、孫娘を探しまはる。「人形町なり両国なりへ引つ返さうといふ気は出ませんでした」といふ
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新宿の甥を尋ねんとす。桜田より半蔵門に出づるに、新宿も亦焼けたりと聞き、谷中の檀那寺を手頼らばやと思ふ。饑
三日は孫娘を断念し、新宿の甥を尋ねんとす。桜田より半蔵門に出づるに、新宿も亦焼けたり
附記。新宿の甥の家は焼けざりし由。孫娘は其処に避難し居りし由