大阪 東京

を卒業すると、信子は彼等の予期に反して、大阪の或商事会社へ近頃勤務する事になつた、高商出身の青年と、突然

後二三日してから、新夫と一しよに勤め先きの大阪へ向けて立つてしまつた。その時中央停車場へ見送りに行つたものの

信子はその間に大阪の郊外へ、幸福なるべき新家庭をつくつた。彼等の家はその界隈

な御姉様。私が今日鶏を抱いて来て、大阪へいらつしやる御姉様に、御挨拶をなさいと申した事をまだ

「御姉様。もう明日は大阪へいらしつて御しまひなさるでせう。けれどもどうか何時までも、

彼等は又殆日曜毎に、大阪やその近郊の遊覧地へ気散じな一日を暮しに行つた。信子は汽車電車

さすがに懐しさうな眼つきをした。「どうです、大阪の御生活は？」「俊さんこそ如何？　幸福？」――信子も

の小説だの、共通な知人の噂だの、東京と大阪との比較だの、話題はいくら話しても、尽きない位沢山あつた。

たなり、わざと何とも答へなかつた。新聞には大阪と同じやうに、米価問題が掲げてあつた。

あつた。彼女は針仕事の店を拡げながら、彼等が東京で式を挙げた当時の記憶なぞも話したりした。夫にはその

魚の匂が、口について離れなかつた。「東京も雪が降つてゐるかしら。」――こんな事を考へながら、信子は

翌年の秋、社命を帯びた夫と一しよに、久しぶりで東京の土を踏んだ。が、短い日限内に、果すべき用向きの多かつ

。俊吉の小説だの、共通な知人の噂だの、東京と大阪との比較だの、話題はいくら話しても、尽きない位沢山