舞鶴城 上高地 熊谷 房総 伊豆 十津川 浅間 海蔵寺 長者町 道成寺 館山 本所 浅草寺 諏訪 相生町 江戸 伊東 鬼ヶ城 武蔵野 大菩薩峠 筑波 越前 湯島 大阪 明石 成田山 安房峠 甲州 塩尻峠 笠ヶ岳 谷中 加賀 甲府城 関東 根岸 堺町 金杉 高尾山 塩尻 両国 甲府 下谷 水戸 京都 宇都宮 奈良 長崎 浅草 巣鴨 大宮 大久保 上野広小路 上野 護国寺 両国橋

兵馬はその絵馬をかついで、舞鶴城の濠の近辺を通ると、どうしたものか、一頭の犬が、

高山あたり、笠ヶ岳の下、焼ヶ岳の裏を今の上高地を経て、あの島々谷を松本平方面に出られたに違いない。伝教

熊谷の宿を通りかかって、芝居小屋の前で、気障な男の水垂のげん公

「夫の帰りの遅さよと、待つ間ほどなく熊谷の次郎直実……」

ても芝居の方が大好きでございましてね、ことに熊谷とくると夢中でございます」

「今時は、熊谷といえば、陣屋に限ったようなものだが、組討ちから引込みがいいもの

「好かったにもなんにも。総じて今の役者は熊谷をやっても、神経質に出来上ってしまって、いけねえのさ」

あの時代に蓮生が二人あったんですよ、本家がこの熊谷、それからもう一軒の蓮生が、宇都宮の弥三郎頼綱」

「まあ、お聴きなさい、熊谷の次郎が最初に出家をしてね、法然様から蓮生という名前をもらっ

遂げてしまったのだが、その時の言い草がいい、熊谷に負けるのは嫌だから、拙者にも熊谷と同じ名前を下さい、ぜひ、

がいい、熊谷に負けるのは嫌だから、拙者にも熊谷と同じ名前を下さい、ぜひ、熊谷と同じ法名でなければ嫌だ……」

だから、拙者にも熊谷と同じ名前を下さい、ぜひ、熊谷と同じ法名でなければ嫌だ……」

から聞いていれば調子に乗って、渋団だの、熊谷の次郎だの、宇都宮の弥三郎だのと、名優や、坂東武士に向って

先生も、やや安心して、若い劇作家連に向ってひきつづき熊谷の物語をはじめました、

法名が欲しければいくらでもしかるべきものを上げよう、なにも熊谷が蓮生とつけたから、お前もそれと同じ名前でなければいけぬという

諭されたけれども、宇都宮の弥三郎はいっかなきかない、ぜひ熊谷と同じ名前を貰って行かなければ、あいつの前へ幅が利かないという

この二人蓮生に向ってこういう告げ口をしたものさ、熊谷の入道や、宇都宮の入道は無学の者だから、法然様は念仏だけを

「熊谷の芝居は嫩軍記に限ったものさ、あの物語の、さてもさんぬる…

米坂の焼米、といったような名物に挨拶しながら、熊谷で、梅本の蕎麦を食べないということが心残りになるらしい。負けおしみの強い

ははあ、読めた。熊谷の蓮生坊が上方から帰る時は、西方浄土を後にするのを本意に

聞くところによると田山白雲は、保田から上陸して房総をめぐり、主として太平洋の波を写生して帰るのだそうです。

たままに、出て来たのだということです。房総の海は自分に何を教えるか知らないといっている。

或いは房総の半島から起ること、源頼朝の如くあってよろしいというものもある。

「それも本物の大島の椿油なんですよ、伊豆の伊東の人からいただいたのがありましたから、それを持って参りまし

「大和の国、十津川のあの騒ぎの時よ。実は拙者もあの時、あの乱軍の中へまぎれ込ん

幾度も竹刀を合わせたことがあり、丸山勇仙は、十津川の時に藤堂勢に従って、書記みたような役目をつとめ、兵馬の

ここは三十町の原、この真中に立つと、富士、浅間、甲斐、武蔵、日光、伊香保などの山があざやかに見える。

浅間を立つ時に、宿で誰かが久助に向って、こんなことをいうの

も容易なものではございませんよ……いっそ、この浅間の温泉で御養生をなすったらいかがでございますか。それは、お湯は

海蔵寺の東妙和尚が彫刻に妙を得ていたものですから、それを見

海蔵寺の東妙和尚なども、お松の字をことごとく称美して、

下谷の長者町の道庵先生が、かねての志望によって、中仙道筋を京大阪へ向け

な気持がします、あの女にそばへよられると、道成寺の鐘のように、私の身が熱くなって、ドロドロにとけてしまいそう

船と人とは別れました。まだ船にとどまって、館山まで行かねばならぬ駒井甚三郎は、保田の浜辺を悠々と歩み行く田山白雲

乗客は上陸してしまって、船は駒井だけのために館山へ廻航するの有様で、船のしたには駒井の携えてきた書物を

は予定の通り船へ戻ると、船も予定の通りに館山へ向けて出帆したものですから、多分、無事に洲崎へ着いていること

本所の相生町で牛耳を取っていた南条力は、この時はひとり、席の

――というこの男は、姓を足立といって、本所の林町で相当の旗本の家に生れ、不良少年時代には、主膳と肩を

と共に楽しむ、の思召しでございますならば、いっそ、浅草寺の観世音菩薩のように、都のまん中へお寺をおうつしになっては

さのみ無理ではありません。そこで二人は、まず諏訪の温泉を目標として、探索の歩を進めることに相談をきめました

の金を懐中に入れてありました。なお、これから諏訪の方面へ向けて旅立ちの途中、故郷の有野村へでも手を入れようもの

本所の相生町で牛耳を取っていた南条力は、この時はひとり、席の中心から

はないが、お松は日頃の心がけもあり、ことに相生町の御老女の家にある時、念を入れて字を習いましたものです

たが、絵も好きでした。子供の時分、拙者は江戸で生れました。浅草の観世音へ行っては、あの掛額をながめて、

ここが板橋といって中仙道では親宿だ。これから江戸へは二里八丁、京へ百三十三里十四丁ということになっている、

そうして浦和の宿――江戸より五里三十町、京へ百二十九里二十八町というところへついて、そこ

こうしてある者は南船し、ある者は北馬して江戸の中心を離れる時、例の三田四国町の薩摩屋敷ばかりは、いよいよ四方の

それよりも手っ取り早いのは、もう少し手強く江戸の内外を荒して、全くの混乱状態に陥れるに越したことはないと唱導

もう少し手強く江戸の内外を荒すというのは、つまり以前よりもモット豪商や富家をおびやかすこと

ているから、ここのところに手は抜けないのだ。江戸を計るものは、甲州を慮らなければ仕事ができない、家康も甲州の武田

「そちたちは江戸を基にして考えるからそうなるのじゃ、京都を根本として計略を

を切って得意になっているのが、田舎廻りならとにかく、江戸のまんなかではやっている。兵馬は至るところで、この黒頭巾をかぶった

「多摩川の奥の高地で、江戸から甲州裏街道、つまり大菩薩越えをするその途中、御岳山の麓あたり。あの辺は

武蔵の国、立川というところは、七兵衛が江戸への往還の道だからよく知ってはいるが、そこから立川流というもの

待ちきってるぜ、御贔屓筋もお前をさがしている。江戸へ行けば、お前は人気の神様で、金の生る蔓を持っている

「こんな山ん中に隠れているより、江戸へ出りゃあ――両国橋へ帰りさえすりゃあお前、いい着物を着て、うまい

はなく、自分の推量で、つまり、いま言った通り、江戸へ帰りさえすれば、楽ができて、うまいものが喰べられて、いい着物

「叔父さん、御免よ、あたいは江戸へ帰りたくないんだから」

「それも本物の大島の椿油なんですよ、伊豆の伊東の人からいただいたのがありましたから、それを持って参りました、

「お雪さん、きょうはひとつ鬼ヶ城を見物に行こうじゃありませんか」

誘いを素直に受入れて、この地の名所、ついとうしから鬼ヶ城の方へ、フラフラと出かけました。

は間違いなくレンショウといったものですがね、ある時、武蔵野の真中で、武勇粛々として郎党をひきつれた宇都宮弥三郎と出逢すと、

「大菩薩峠の上は、もう雪でしょうね」

水戸を背景として、筑波によることも決して拙策ではないと補修するものもある。

へ精舎をお営みになりました、永平の道元禅師は越前の山深くかくれて勅命の重きことを畏みました、日蓮聖人も身延の山へ

今日も、小女を連れたお絹は、湯島の方から上野広小路へ出て、根岸の宅へ帰ろうとしました。広小路の

土蔵であろうと、海土蔵が江戸ッ児であろうとも、大阪生れであろうとも、いっこう自分の頭には当り障りのないことですから、「そう

駒井もゾッとしました。高島田に結って、明石の着物を着た凄いほどの美人が、牡丹燈籠のお露のような、

「成田山御本尊のお姿、滅多にはおがめない不動尊御本体のおうつしを、この

「勿体なくも、成田山御本尊不動明王のお姿、滅多には拝めない品を、このたび、衆生済度

道を間違えて、こちらへ入り込んだからやむを得ず、安房峠を越えて、飛騨へ抜けようとのことです。

人の姿の見えないところを以てすると、それは安房峠を越えて、飛騨の方面へ行ってしまったのかも知れない。

いでになるとよろしうございます、甲武信と申しましても、甲州と武州には、温泉らしい温泉がありませぬ」

ところに手は抜けないのだ。江戸を計るものは、甲州を慮らなければ仕事ができない、家康も甲州の武田が存する以上は天下が

ものは、甲州を慮らなければ仕事ができない、家康も甲州の武田が存する以上は天下が取れなかったのだ、甲州は捨てておけない

甲州の武田が存する以上は天下が取れなかったのだ、甲州は捨てておけない」

話ぶりによると、南条力はまず甲州を取らなければならぬといい、神楽師の長老は、それよりも飛騨を

貴公子の前でくりかえして、結局、飛騨を取るよりも、甲州を略するのが急務だという意見を述べると、それを聞き終った貴公子―

ば、飛騨を取ることは何の雑作もないことじゃ、甲州を定むるのは、その後でよろしい」

「それはね、この間、塩尻峠の上のあの大変の時ですね、勝負がどうなったんだかちっともわかり

ば――お雪がふと思い当ったのは、もしや、あの塩尻峠の時の侍たちがあとを慕って仕返しに来たのではあるまいか

「あの、例の塩尻峠の……」

と言って、仏頂寺弥助が先達て、塩尻峠の不思議なる盲剣客のことを頻りに思い返し、

「ついこの間、計らずもあの男に信州の塩尻峠の上で会ったのだが、その時は、それと気づかず、たった今

一人旅のさすらいだ。しかし、もう今度こそは、相手が塩尻峠を越したことを、歴然とつかんでいる。あの峠を越した以上は、その

も持ち出されることになる。この鉄砲とても、いつぞや、塩尻峠のいのじヶ原で持ち出された業物と、弟たり難く、兄たり難い

に、上神坂越えとあって、つまり飛騨の高山あたり、笠ヶ岳の下、焼ヶ岳の裏を今の上高地を経て、あの島々谷を

女だわい――谷中の延命院の坊主は、寺の内へ密会所を作って、身分ある婦人

俯して敵を射るの好地にあるではござらぬか、加賀と尾張の二大藩を腹背に受けているようではござるが、一方は

いよいよ甲府城を乗っ取るの時機が熟したという者がある。

他の一方には、関東の平野を定めるにはやはり平野から出づるのがよろしい、それには野州の野

「甲府が関東の険要であるとおなじ理由によって、飛騨の国が京畿の要塞になる

「仰せではございますが、われわれの今の目的は、関東を主と致します、飛騨の方面まで手の届きかねる実際は、御逗留の

をするその途中、御岳山の麓あたり。あの辺は、むかし関東の野を追われた平将門の一族と、甲州武田を落ちて土着した

根岸に引移った神尾主膳と、お絹とは、このごろ痛切に金がほしいと

連れたお絹は、湯島の方から上野広小路へ出て、根岸の宅へ帰ろうとしました。広小路の賑やかなところを通って行くうちに

絹と面を合わせるようなことにでもなれば、この根岸の天地が晦冥の巷になる。それはずいぶん恐ろしい……どうかして、

ははあ根岸の千隆寺。これが近ごろ評判のそれか。自分の侘住居と程遠いところで

ものか、お絹が装いを凝らして、程遠からぬ同じ根岸の千隆寺へ通いはじめました。

そうして丹念にお化粧を済ましたお絹は、根岸の里の夕闇を、さんざめかして程遠からぬ千隆寺へ乗込んだのは

なるほど、この御行の松の上へのぼると、呉竹の根岸の里の寺々がよく見えます。

堺町のまん中で

円光寺も見える。正燈寺も見える。金杉の安楽寺までが、それぞれ相当に高い甍を見せているが、めざす千隆

よく考えてみると、それそれ、これは先日、武州の高尾山の宿坊で七兵衛と泊り合わせた神楽師の一行の中の長老株の男で

といった神楽師の一行では長老株――武州の高尾山では、七兵衛と泊り合わせた中の一人によく似ている。

塩尻から五千石通りの近道を、松本の城下にはいって、机竜之助と、お雪ちゃん

て、今日もしきりに金のことを考えています。ぜひなく両国の女軽業の親方お角のところへ無心してやろうかとも思いました。あの女な

しかし、この遊民どもは、駒井が前の甲府勤番支配であって、ともかくも一国一城を預かって、牧民の職をつとめ

いよいよ甲府城を乗っ取るの時機が熟したという者がある。

さて、甲府を定めて後は、天険によって四方を攻略すること、武田信玄の

「甲府が関東の険要であるとおなじ理由によって、飛騨の国が京畿の

月見寺を出て、甲府の城下についた宇津木兵馬とお銀様。

甲府は兵馬にとって最も思い出の多いところ。お銀様にとっては故郷

他人ばかり残っているというせいでもあるまい。たしかに甲府の市民にとっても、その昔のような辻斬の脅威がなくなってしまっ

ところへ来て見ると、そこは相変らず賑やかで、甲府人の行楽のところ。

ちょうどその日の薄暮、韮崎方面からこの甲府城下へ入り込んだ武者修行体の二人の者。前に進んでいた逞しい

この二人が甲府の市中を進んで行くうちに、例のヘラヘラ役者の、覆面辻斬の

下谷の長者町の道庵先生が、かねての志望によって、中仙道筋を京

水戸を背景として、筑波によることも決して拙策ではないと補修する

たちは江戸を基にして考えるからそうなるのじゃ、京都を根本として計略を立てる時には、甲斐を取るよりも飛騨を

前にいった通り、その時分の京都の公卿さんの若手のうちには、きかないのがおりました。中山

京都の公卿をして、再び護良親王の轍を踏ましむるなかれという気概の

のものではありませんでした。木曾路を取って京都へ帰ろうとした神楽師の一行が、ふと道を間違えて、こちらへ

そういいました、あの池田先生は良斎といって、京都では国学の方で指折りの先生だから、よく教えておもらいなさいって

ずいぶん、あの先生偉い先生よ、お歌の方の学問では京都でも指折りの先生ですって……」

、本家がこの熊谷、それからもう一軒の蓮生が、宇都宮の弥三郎頼綱」

、そこがそれ、おたがいに坂東武士の面白いところで、宇都宮がいうには、よしそんなら、おれも出家して見せるといって、

、武蔵野の真中で、武勇粛々として郎党をひきつれた宇都宮弥三郎と出逢すと、熊谷が、弥三郎、おれはこの通り綺麗に出家を

に乗って、渋団だの、熊谷の次郎だの、宇都宮の弥三郎だのと、名優や、坂東武士に向って、しきりに呼捨てを

よしと同じ蓮生の名を授けてくれたものだから、宇都宮の弥三郎様が、鬼の首でも取ったつもりで、大喜びで東国へ

…と法然様がねんごろに諭されたけれども、宇都宮の弥三郎はいっかなきかない、ぜひ熊谷と同じ名前を貰って行かなければ、

てこういう告げ口をしたものさ、熊谷の入道や、宇都宮の入道は無学の者だから、法然様は念仏だけを教えてだまして

たのを、つい忘れて立寄らなかった洒落でしょう。蕨の奈良茶、上尾博労新田の酒屋、浦和焼米坂の焼米、といったような

。また近代西洋式の流し込みの活字を創造したのは長崎の人、本木昌造ということになっているが、実は播磨の人

と共に楽しむ、の思召しでございますならば、いっそ、浅草寺の観世音菩薩のように、都のまん中へお寺をおうつしになっ

でした。子供の時分、拙者は江戸で生れました。浅草の観世音へ行っては、あの掛額をながめて、絵をかいたもの

浅草の露店の時に伴うていた妻子ある以上は、この人の帰りを

て、板橋まで見送ろうというのを強いて辞退して、巣鴨の庚申塚までということにしてもらいました。物和らかな豆腐

浦和から大宮、武蔵の国の一の宮、氷川大明神へ参詣して、またまた米友をおどろかせ

こうして二人は社前を辞して大宮原にかかる。ここは三十町の原、この真中に立つと、富士、

武州大宮へ参拝した道庵先生は、それを初縁として、今後沿道

大宮から上尾へ二里――上尾から桶川へ三十町――桶川から鴻の巣へ

したかどうか知れないが、ともかく、相州荻野山中の大久保長門守の陣屋が焼打ちされて、かなり多量の武器と金銭を奪われ

今日も、小女を連れたお絹は、湯島の方から上野広小路へ出て、根岸の宅へ帰ろうとしました。広小路の賑やかなところ

昨日話に聞いた上野広小路。そこへ立って人の肩から、そっとのぞくと、お絹の話した

「今日、上野の広小路を通りかかりましたところ、坊さんのお説教とばかり思って見まし

打明け話になってみると、この敏外は、叔父が護国寺の僧で、それを縁故に仏道に入り、無理に坊主にさせられ

よ、あれはね、がんりきの百蔵といって、両国橋にいる時に、よくやって来た、いやな奴だ。あたいを捕まえ

お前こそ、どうしてこんなところに来てるんだい、両国橋にいれば、ああして人気の上に祭り上げられて、栄耀栄華が尽せる

山ん中に隠れているより、江戸へ出りゃあ――両国橋へ帰りさえすりゃあお前、いい着物を着て、うまいものを食べて、人