檸檬 / 梶井基次郎
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いったいに賑かな通りで――と言って感じは東京や大阪よりはずっと澄んでいるが――飾窓の光がおびただしく街路へ流れ出ている。
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黄や青や、さまざまの縞模様を持った花火の束、中山寺の星下り、花合戦、枯れすすき。それから鼠花火というのは一つずつ
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―という錯覚を起こそうと努める。私は、できることなら京都から逃げ出して誰一人知らないような市へ行ってしまいたかった。第一
そんな路を歩きながら、ふと、そこが京都ではなくて京都から何百里も離れた仙台とか長崎とか――そのような市へ
時どき私はそんな路を歩きながら、ふと、そこが京都ではなくて京都から何百里も離れた仙台とか長崎とか――
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京都ではなくて京都から何百里も離れた仙台とか長崎とか――そのような市へ今自分が来ているのだ――
京都から何百里も離れた仙台とか長崎とか――そのような市へ今自分が来ているのだ
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、そこが京都ではなくて京都から何百里も離れた仙台とか長崎とか――そのような市へ今自分が来ているの
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通はいったいに賑かな通りで――と言って感じは東京や大阪よりはずっと澄んでいるが――飾窓の光がおびただしく街路へ流れ出
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生活がまだ蝕まれていなかった以前私の好きであった所は、たとえば丸善であった。
どこをどう歩いたのだろう、私が最後に立ったのは丸善の前だった
平常あんなに避けていた丸善がその時の私にはやすやすと入れるように思えた
私は埃っぽい丸善の中の空気が、その檸檬の周囲だけ変に緊張しているような
丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た奇怪な悪漢が私で
もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったら
「そうしたらあの気詰まりな丸善も粉葉こっぱみじんだろう」