野槌の百 / 吉川英治
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「おらあ元、四谷の山浦清麿の弟子、てめえに罪をなすられて、破門された百之介
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世間をかくれて渡る人間でもなければ、滅多に通らない甲州の裏街道――大菩薩から小丹波を越えるというのは、空身でも、女には
「へい、あしたは、八王子に馬市が立ちますんで、甲州の博労が、たくさん上って来ております」
いっても、男のいいかわりに、弱いのでは、甲州でも知られた村上は、ぎょっとしたように、
なめさせてやる方が敵討以上の敵討だといって、甲州の鮎川部屋で出会った時も、自分を討たずに自分の情婦のお稲を
みた気味のわるい浪人の子かと思っていたら、甲州でちょっとべい世話になった、身分のあるお武家の落し胤だそうだ」
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「とんで、四十一両二分、川越の貸座敷大黒屋善六様」
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、裏街道をだらだらと下がってくると、もう、海みたいな武蔵野が、ながめられる。峠とは、陽気もまるでちがって、桃も杏花も、
黒髪をわけたような青芒の武蔵野を縫う一すじの青梅街道を、三ツ木、上宿と、二里ばかりあるくと、田無
一雨ごとに、芒はのびて、もう武蔵野は、夏めいてくる。
「武蔵野ばかりにゃ月は照らねえ。どこの野末で、馬沓を鍛っても、おら
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「こんな調子じゃ、いつ江戸表へ着くことやら」
江戸に知己がある。せめて、子どもの育つまで、そこにでも――と女
にいって、一年ばかり潜っていた信州路から、江戸の空へ、さまよい出た途中なのである。
「江戸へ行っても、他人の家へ、私だけ預けて――なんて嫌なこっ
「いや」と笑って――「馬にゃ用はねえ、江戸へゆくのだ」
折角ですから一晩のばして、見ておいでなさいまし、江戸の者なら、なおのこと、いい土産話になりますぜ」
音がもれてくる。三五兵衛は、心をうごかした。江戸へ出ても、すぐ落着きを得られればよいが、もしかすると、早速
てしまったし、やむなく百を、十歳の時から、江戸で四谷正宗といわれる新刀鍛冶では名人の山浦清麿の手もとへ、仕込に
―そうかな。お稲はもと、甲府のやなぎ町へ、江戸から流れて来た旅芸者、それを鮎川の親分仁介が、根びきをし
来てからも、いろいろ聞いたが、なんでも元は江戸の糸問屋の娘だって」
「もう百両ほど、江戸の家へ送ってやれば、それで私は、死ぬまで、ここにいられる
「おっ母、ちょっくら、江戸まで行ってくるぜ」
、ふいご土間の外に立って見送っていた。――江戸といえば鼻の先、遠くはないが、それでも旅、七日の
江戸へつくと、百は、場末の木賃宿に泊りこんで、あくる日から、小柄
阿女もあるものだ。そして、その女は今でも、江戸に」
「あら、お前さん、いつ江戸から」
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「二十一両一分。上野原の鶴屋様」
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こと。かれが、師匠の清麿について、本阿弥の招きで、両国の万八楼へ行った帰り途に、破門をくう、禍があったらしい。
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「不貞? ――そうかな。お稲はもと、甲府のやなぎ町へ、江戸から流れて来た旅芸者、それを鮎川の親分
「なんでも、その男とも、上方で別れてから甲府で二度の褄をとって何とかいう土地のばくち打に、根
「へ……甲府で」と、百は、きょとん、と考える眼をして、
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「へい、あしたは、八王子に馬市が立ちますんで、甲州の博労が、たくさん上って来ており
ほかの博労連中も、馬をひいて、八王子街道の方へ、思い思いに。
八王子の宿はずれから、大楽寺へまで、その馬市の雑鬧と、喧騒がつづい
と、かん酒屋の灯がならんでいた寺前を、八王子の方へ、走りかけた。
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石神神社の祭りで、村から村に、阿佐ヶ谷神楽の馬鹿ばやしが、ほがらに聞えている秋の一日だった。
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のいい武家屋敷や、でなければ、豪家の隠宅――蔵前の札差――そんな所を、よって持ちあるいた。
やがて、きのう蔵前で会った四十がらみの武家が、
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麹町の岡部という番衆屋敷で、一組売ったのを皮きりに、札差町人