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環」とか、その時々で切っていたが、やがて四谷に住んでから、

ている頽廃的な風は、吉原に、陰間茶屋に、歌舞伎町に、役人の裏面に、町人の遊蕩に、鼠小僧の出没に――いろいろ

一度と、眼をつぶる心地で、松代の城下に近い、川中島の小島村まで来た。

偽装した平和の侵略艦隊が、東洋を嗅ぎ歩いて、もう香港、上海まで襲せて来たのだ。

為に、支那は、香港を奪られ、上海を割かれた。

艦隊を降りた紅毛兵は、平和の仮面をかなぐりすてて、長江を溯江し、南京城まで攻め上った。

庄内の酒井家の臣、加藤宅馬と松平舎人の二人が、ふと客間の書院

兵は、平和の仮面をかなぐりすてて、長江を溯江し、南京城まで攻め上った。

な佐久間象山先生の名をお慕いして、遙々、江戸から廻り道して立ち寄ったが、生憎、象山先生は御不在、むなしく帰って来

『どうか成りましょう。江戸でいけなければ上方、上方で人間になれなけれあ、中国、九州。――

『ほう、江戸へか。偖は、遊学かな。いい事じゃ。若い者はどしどしと、

飛脚は、江戸へゆく途中とみえ、それを渡すと、鳥影のように、高原の道を

は、欣びに一変した。当初の志を抱いて、江戸へ立つ由。大慶この上もない。その初志を貫かねば、そちが養家

と、懇切なことばの後に、江戸へ出たら、同封の紹介状を携えて、幕府のお旗本、窪田助太郎どのの

だが、江戸は醒めない。

――そうした今年の江戸の夏。

そして計らずも江戸へ出て、良い恩師に就いたことを感謝した。

ない、四谷北伊賀町に一軒借りうけ、そこで、彼が江戸に於ける第一声の鎚音を、初めて、揚げることとなった。

当時、江戸で巨匠といわれる鍛冶には、二代水心子正秀の一門があり、又

いかにも、自分は金子重輔だが。……おぬしは、江戸へ出ていたのか』

『粋狂？　……そう見えるか。江戸の人間には、そうも見えようなあ。おぬしのように、明日の日本が、

だのに、江戸はこの頽廃ぶりだ。幕府は無能だ。――誰が、神国のこの危機

行く必要はない。先年から藩公に従いて、象山先生は江戸へ出ていらっしゃる』

『えっ、江戸に御在府でございますか』

ずっと、不沙汰なのである。江戸へ来てからの恩を、忘れ果てたわけではない。

『ここ暫く、江戸から足を脱け。ほとぼりが冷めたら又帰って来い』

方の侍共の腰の刀が鍛てるはずはない。江戸に居たとて、出来るものか』

清麿が、江戸から、忽然と姿を消してしまったのは、それから数日の後だっ

漸く、江戸の民衆にも、時勢の動乱が、眼にも、耳にも、解って

か、山浦清麿は六、七年ぶりで、ぶらりと、江戸へ戻って来た。

江戸に帰った後も、彼の生活は変らなかった。又、信念も変らなかっ

帰国したが、次の出府には、清麿も又、江戸に戻っていたので、木挽町に行くことも、前と変らない。

その松陰は、江戸からすぐ又、長崎へ向って立つと聞いたので、清麿は、自作の

いけなければ上方、上方で人間になれなけれあ、中国、九州。――土と鉄気のある土地なら、鍛冶小屋の一軒ぐらいは、どこ

家の子ではありません。長岡家へくれた養子です。長岡の家の恥辱なら、そうして、雪ぐもよいでしょう。――だが、

箕兵衛直胤も松代から移って、秋元侯を背景に、下谷御徒町に、堂々たる門戸を張っていたが、そのほかの群小刀鍛冶に

清人は仙台生れで、出羽某とかいう田舎鍛冶に就て、修業の下地はあった

その松陰は、江戸からすぐ又、長崎へ向って立つと聞いたので、清麿は、自作の小柄一本を

――そこから、彼方遙か、京都の方を望んで。御所の常盤木を胸に思って。

小諸の兄弟

藩士ではない。小諸に近い山里の郷士の子である。だから城下へ出て来る時など

足利以前から、この信濃の山間、小諸在の赤岩村に、十何代も続いて来ている旧家の――

稀れに又、その梅作のかなしげな泣き声が、千曲の水の咽びかとも聞えることがある。

千曲の水に添って、彼は、野を歩いた、河原を歩いた。

兵衛直胤も松代から移って、秋元侯を背景に、下谷御徒町に、堂々たる門戸を張っていたが、そのほかの群小刀鍛冶に至っ

中を落葉と一緒に飄々と吹かれながら、平河天神から麹町の灯をあてに来ると、

千住の宿場遊廓から飛んで来た帰り駕の提灯らしいのが、どう道を

緑が萠え出して、信濃の春は、雪解を流す千曲川の早瀬のように、いっさんに訪れて来た。

以来の大欅に囲まれた家の外へ走り出して、千曲川の上流に沿う断崖の道を――その故郷の少年頃から馴れた道

争闘の世間へ、人中へ、とうとうと絶えまなく奔ってゆく千曲川の激流に声を託して、家の前の断崖から、独りでこう、

は、にやりと微笑したようだった。耳には遠く千曲川の水音でも聞えているらしい。きれいな小禽の音すらありありとそこら