愛宕神社 金杉 堺町 江戸 熊本 泉岳寺 品川

たいというお沙汰が下った。殿様御自身、明日は、愛宕神社へ、御祈願に参られますそうな。……お分りであろう。……

金杉まで来ると、若党が、

―書物など、読んだこともないに。――また、堺町の芝居町でもうろついているのじゃろう」

隆達の節を真似て唄った。瀬左衛門は、真面目くさって、堺町の歌舞伎踊りを踊るのだった。

、居酒屋、往来のどこへ耳を傾げても、今、江戸の話題は、赤穂浪士の讚美でもちきっている。伝右衛門は、それらの

「まだ、江戸が珍しいのでございます。友達に強いられて、見物ぐらいには参ったか

国許の親戚の眼がねで、この春、江戸へ上せてよこした若者だった。堀内家のあと目をつがせ、お麗

目をつがせ、お麗に夫あわすに足る若者は、江戸の人間や都会の風に染まった在番にはないといって、剛健をもっ

の気に入っていた。それだけに、修蔵は早く江戸に同化した。一度、風呂屋遊びに行ったことが、伝右衛門の耳に入っ

「あんな柔弱者なら、江戸にいくらでも、次男坊や三男坊の口がある。何もわざわざ」

、誹る者はないくらいな位置であった。それが、江戸へ出ては、前原伊助などと共に、町人姿になり、吉良家の

見て見ぬふりをして通った。もう、とうに江戸にはいないはずの彼だったが、草鞋などもつけず、いつもの身装

在番にはないといって、剛健をもって誇る国許の熊本から選んだのである。二、三年ほど、手許において勉強さ

「――年といえば、熊本から来た修蔵めと、何歳の違いもないに」

た大馬鹿。――いやいや、もう何もいうまい、即刻熊本へ帰れ」

吉良殿の首を、泉岳寺の君前に手向けてから後、松平伯耆守の邸に直訴して、

また、吉良の首をあげて、泉岳寺へひき揚げてくる途中、金杉橋までくると、内蔵助が、十郎左をさし招い

「ご尤もじゃ。御当家はお庭も広し、品川の海も一望。近火のせつは、各※を庭へ集める御規則ゆえ