奥多摩 江戸 甲府城 甲府 長崎 京都

『してみれば、山越えして、奥多摩から武州へ出るなんて、嶮岨な道をとって、しかも廻り道したりするよりは

『江戸から来ている――おれ達の連れの浪人達は、そんな筋から、ここ

甲府城の森や天主には、過去に幾度も落雷の歴史がある。その都度、

しかもそれは、この甲府城の宝物中でも、代表的なもので、曾つては、将軍の台覧にも

三、四名付き添い――宮崎市之丞を、先に立てて甲府城から馳け出した。

流すように拡がって、見る間に、盆地の町――甲府の空を蔽ってしまう。

甲府城の森や天主には、過去に幾度も落雷の歴史がある。その

甲府の御番城は、平城だった。

若狭守――何っちも千五百石程度の旗本が、甲府在住で、これを守っているのだった。

しかもそれは、この甲府城の宝物中でも、代表的なもので、曾つては、将軍の台覧

三、四名付き添い――宮崎市之丞を、先に立てて甲府城から馳け出した。

お小夜を突き放して、住み馴れた甲府の深夜も、惜気もなく捨てて馳けた高安平四郎は、真っ暗な光沢

『一蓮寺は、御勤番加役、甲府在住の宮崎若狭守どのの菩提寺だな』

た折へ、忽然と、帰って来た。甚三郎は、長崎へ遊学していた者である。新しい蘭学も、西洋兵学も、砲術

『まだ、甚三郎が長崎表から帰らぬうちの事……よう胸に手を当てて思い出してみる

が、こう見るところ、男の甚三郎には顫えが見える。長崎仕込みの軽薄才子――もし生きて添っても、その構えでは、末

『――だって、何うせ京都へは上らなければなるまい』

したりするよりは、江戸表へ寄らずに、真っ直に京都へ出てしまおうじゃないか』