甲州 古河 春日山 加茂 赤城 堺 岩櫃山 上野国 酒匂川 江戸 浅間 秩父 本庄 房総 足柄村 安中城 妙義山 吾妻 京都 千葉 上野 浅草 草加 隅田川

もなく、上野国の国境で、小競あいがあり、甲州の武田信玄は、久しく鳴をひそめていた鼓を鳴らして、

と、甲州の叔父からは頻々と、甥の氏政へ軍勢の催促がくる。

『わしも、古河から上州の方へ出ようと思うのさ。ちょうど、道は一緒だな』

して田舎娘は何か思案していたが、次の日、古河の町へ入ろうとすると、ここはもういっぱいな軍馬であって、北条方

（てまえは、春日山の上杉弾正少弼謙信の家来、安中越前守長房、これなるは伜の三郎進

そして、加茂の流れに近い旅舎で、彼女にそれを吹けと云った。八雲は、興

柑橘の実が真っ黄いろに熟れていて、やはりここは赤城や榛名の吹きおろしに曝されている上州平野よりは、遙かに気候にめぐまれて

の立つのはすぐだ、秋風がふくかと思えば、赤城、榛名の頂きに雪を見るのも又すぐだ。

武具をひさぐ商人が軒をならべ、裏町には、京や堺から移住して来た工匠たちが、糸を染め、鏃を鍛え、陶器を

ではないかと。――それからだ、熊楠が、岩櫃山の城で、一番槍一番首の名のりをあげ、又、野火止の合戦で

た。越後の上杉家とは、それから間もなく、上野国の国境で、小競あいがあり、甲州の武田信玄は、久しく鳴をひそめ

ては、何うしても三国の嶮をこえて、上野国から相武の海へと、その覇力を伸ばして来るのが自然の勢で

を乾かしていると、小雨の音はしなかったが、酒匂川のすさまじい河鳴が遠く聞えてくる。

『じゃあ、江戸の庄で降りて、後は歩くのだな』

『江戸の庄のうちで、浅草というのでさ。あの丘が、汐見山とも

妙義、浅間、榛名の三山のふところに囲まれているようなこの城の地の理

　……何を寝ぼけているんだ、深谷、本庄、秩父の鉢形、この一月余りは、修羅の巷だ。――そして今は、

ない？　……何を寝ぼけているんだ、深谷、本庄、秩父の鉢形、この一月余りは、修羅の巷だ。――そして今

北条方の里見義介や、千葉新助などの率いて来た房総の兵が、約七百ほど屯しているのであった。

酒匂川の上流で、井細田村と足柄村に跨がっている小さい部落だった。五、六軒しかない筏流しを職とする

へ逃げてくることだ。幸にも我れ等は今、安中城に立てこもって、武田の遠征軍を蹴ちらしている。

来たが、上州箕輪の城が落ちない。松井田城と安中城のふたつも、安中越前守と、三郎進という父子の両大将が守っ

は、おそらくこれから先の道であろう。これから先、安中城までの道だと萩乃は覚悟している。

今は、武田方と北条勢が、一手になって、安中城を遠巻きにしてるじゃねえか』

たいそう吃驚しなさるね、何か、おめえの色男でも、安中城にいるのかい』

兵ではない。常陸下妻の上杉方の一党で、安中城の危急を聞いて、援兵に馳せつけようという途中を、こっちで先に出鼻を

、灼きつくような三伏の道を、蛇形になって、安中城の方へいそいでいた。

ある。萩乃は、ことによると主人の八雲はとうに安中城に入っているかも知れないと考えたので、急にこの軍旅へつい

も萩乃は、真っ暗な絶望にぶつかった。なぜならば、安中城の城壁のうえに見える旗差物は、すべて、北条勢と、武田勢のもの

ここは、妙義山を後に負って、碓氷川を前にした丘の陣地だった。敵の

の口実を藉りて、上杉勢の退路を断ち、沼田、吾妻、碓氷の各所で、烈しい合戦が繰りかえされて来たのである。

壮健で、近国の乱も小康を得ていた折、京都へ上洛って、清水へ詣った時に、稀※一度父の手に

もういっぱいな軍馬であって、北条方の里見義介や、千葉新助などの率いて来た房総の兵が、約七百ほど屯している

た。越後の上杉家とは、それから間もなく、上野国の国境で、小競あいがあり、甲州の武田信玄は、久しく鳴

ては、何うしても三国の嶮をこえて、上野国から相武の海へと、その覇力を伸ばして来るのが自然の

『来年は、信濃か、上野か』

『江戸の庄のうちで、浅草というのでさ。あの丘が、汐見山とも、待乳山ともいう

、外郎売は、先へ渡って行ったが、娘が、草加並木まで来ると又、

『じゃあ、ここが、梅若が人買に殺されたという隅田川か。……さびしい所だなあ』