小石川 烏山 横浜 東京府 銚子 神奈川 江戸 松戸 霞ヶ浦 鹿島 水戸 富山 深川 桜田門 神田 東京

ない。――旦那、お見忘れでございますか。てまえは小石川の水戸様のお屋敷の近くに住んでいた蕎麦屋の亭主でございますよ

なら生涯を託しても慥かだろうといっていました。烏山の町では、堅いというので、いちばん信用のある人だし、商才

金を懐中にして帰って来たに違いないと、烏山で評判されていた。

烏山の町の者や、桑摘みの人々の間では、よくそんな噂が出た

「烏山の町の灯だよ」

それにまた、磋磯之介は、烏山を去ってから、越後に隠れ、後にまた、常州の湊の戦乱に参加

春繭の生糸を横浜へ持って行って、専右衛門は、莫大な金を懐中にして帰って

「東京におったんなら、横浜の地理も少しは知っとろうが」

「横浜には、勤務したことはありませぬが、度々、出張はいたしました

「そうか。――実は所内には、東京も横浜も知らん者ばかりじゃで、貴公に、横浜へ出張してもらいたい用件が

、東京も横浜も知らん者ばかりじゃで、貴公に、横浜へ出張してもらいたい用件があるんじゃがね。すぐ出発できるか」

覚えるころまで、旗岡巡査と田辺剣三郎刑事は、出張先の横浜にいた。

、直接見て知っているのは、田辺刑事だけで、横浜の警察屯所にも一人もいなかったからである。

この横浜でも彼は見ている。

「いや、違います。拙者は、東京府士族の――」

「それやあどっち途、銚子へ帰る空船だから、乗せて上げまいものでもないが――だが、

生糸なんざ一遍にガラ落ちよ。折角、根を生やしかけた神奈川の異人館だって、今にも国へ引揚げることにでもなりゃあしねえか

「ホホホホ。これはおらたちのたべる味噌じゃあねえにさ。江戸のお客様に、正月頃、味噌漬を頼まれていたので、今度積ん

同志と謀って、水戸から江戸へさして出かけて行く時には、この道を、二度と生きて通ろう

「旦那、あっしも江戸の人間ですぜ。――いって悪いことなら死んだって、口を割りゃあし

下総の松戸の宿場。

なお願いであるが、どうか拙者をこのまま匿って、霞ヶ浦の常陸岸か、鹿島の辺まで便乗させてもらえまいか」

どうか拙者をこのまま匿って、霞ヶ浦の常陸岸か、鹿島の辺まで便乗させてもらえまいか」

「げっ、じゃあ……あなたは水戸の」

襲撃したのは水戸浪士の十七名で、その場で、割腹した者もあり、自首し

同志と謀って、水戸から江戸へさして出かけて行く時には、この道を、二度と

けれど、水戸へ近づくと、そこの城下に残されている同志たちの家庭が眼に

水戸警察屯所刑事・田辺剣三郎

「水戸ですか」

「そうです。あんたも水戸の御出身で」

「旦那あ、もしや水戸の海後様の御次男じゃございませんか」

――旦那、お見忘れでございますか。てまえは小石川の水戸様のお屋敷の近くに住んでいた蕎麦屋の亭主でございますよ」

水戸を、骨髄に怨んでいるその人々のあいだに、桜田事変の生存者がある

後ろの窓際に、双子縞の単衣物に白いシャツを着た富山の売薬会社の行商人みたいなのが腰かけていたが、

父っさんが、荷揚げの時に摺り剥いたで、おらが深川で買ったあの貝殻薬さ」

「実は今朝、江戸表の桜田門で、大老掃部頭の首級を挙げた浪士十七名の中に、自分も

なぜならば世間の大雑把な記憶では、桜田門の十七浪士は、すべてもう死んでいるものとしてあるからだった。

積んで行ったところがなよ、そのお客様の家が、神田とやらへ越しちまったというで、仕方なしに持って帰えって来たの

「貴公、去年まで東京警視庁に勤務しとったのじゃね」

「東京におったんなら、横浜の地理も少しは知っとろうが」

「そうか。――実は所内には、東京も横浜も知らん者ばかりじゃで、貴公に、横浜へ出張してもらい

「いや、違います。拙者は、東京府士族の――」

明治になってから以後は、旗岡剛蔵と変名して、東京警視庁の巡査を拝命し、自分が桜田事変に加わっていた一浪士

東京でも見た。