雲霧閻魔帳 / 吉川英治
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、とてつもねえ事が起ったので、朝早く、八丁堀まで行って来たのさ」
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その場所は、伊勢の間の山と決める。そして、年暮立ちに、各※が、土地を
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「気の毒だが、そいつが、天王寺の五重の塔の上と来ているんだ。俺みてえな、身の軽さと
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話が、俺の師匠みたいに、絵を描いても、堂島で米相場をやっても、そんなことあ、出来ら」
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茶屋で待っていると、やがて、第二着が、駿府の羅宇屋煙管の五郎八、次にやって来たのが、浜松のお仮面
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羅宇屋煙管の五郎八、次にやって来たのが、浜松のお仮面屋の伜丹三郎。――一番遅く、夜明け近くに、江戸の本職
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五十を越えた男だった。袖の蔭から、そっと、萩の餅を一盆入れてくれた。煙草より、酒より、甘い物が、
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「戸塚の宿で、首を縊るところを、助けて貰った婆といえば、分る
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「若旦那、行きやしょう。――辰巳で。へへへへ。吉原の方で。それとも、或いは、お手近で照降町?
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仮面屋の伜丹三郎。――一番遅く、夜明け近くに、江戸の本職小猿七之助が、これは贅沢に、数日前から流連していた
「あっしゃ、江戸の七で」
三番目で、羅宇屋煙管の五郎八が、三十一の年頭、江戸の七が二十二、四番目と五番目の鼬と丹三郎が、同じ年の十六
、帰らなかった。師匠の応挙は、彼の親元である江戸の狩野善納という貧乏画家へ、その由を、報じたきりで、結局、
、ケチな兇状につまずいて、東海道筋から軍鶏籠で、江戸へ差立てになったと聞き、役人への反抗と、仲間の面当てに、
京都の師匠にも、江戸の親にも、この期になって、会いたいとは、みじん思わぬが
と、雲霧は、動いている世間、華やかな江戸の春に、眼を瞠って、つぶやいた。
じりを見せ、面隠しの笠寒い素わらじの指先を、江戸へ向け返して、田所町へ。――そして、
彼は智と弁をふるって、この例外な悪人を、江戸へ引っ縛って帰り得るものと信じた。
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の間――その不良少年と二人の大供が、五十三次、東海道の宿々を、まるで稲を襲った害虫のように、荒し廻ったのは。
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頬も手も、かじかんでる癖に、寒さを知らない伊吹山の麓の風の子たちが、
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仁太郎改め仁左衛門――十七歳の雲霧は、それっきり、京都へは、帰らなかった。師匠の応挙は、彼の親元である江戸の
京都の師匠にも、江戸の親にも、この期になって、会いたい
まえ、彦根の屋敷小路で見た品のよい娘か、京都で見た多くの美しい女性のうちか、ずっと遠いころの恋人か、人妻
「左様でござります。京都の夜半亭の社中から出た月杖という俳諧師。あなた様も、おたしなみ
。ちょうど、今夜父が出かけました庵寺の運座も、京都から遊歴に来た絵描きさんのためだといっておりましたが」
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ここは、深川の御船蔵。その中にある仮牢だ。仲間の鼬だの、小猿
と、こう、短気になった雲霧が、その仕事を深川の御船蔵につないである将軍家の安宅丸に眼をつけて、入った
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「あ――神田、神田の、紺屋ッ原」
「あ――神田、神田の、紺屋ッ原」
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「そうそう、麹町の取立てを、元利とも払い下げの買地の方へ廻したのが付け落ち
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だ。――其方ども五人の賊党は、明後日、千住のお処刑場において、刑に行われる事に相成ったから、
「今日はこれから、千住へ行こうと思って」
「駕屋、千住まで」
紅、所々の畦や堤に、見頃の梅花が眺められる千住道を、蛾の行列みたいに、ぞろぞろと人が出る。
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宝町の三井では、建築増しの竣工た祝いと、新開きの西店の
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「折角だが、ちと急ぐから、また四季亭か、向島か、いずれ呼んだら、来ておくれ」
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軍鶏籠が、永代橋へかかるころから、差立ての列は、そこらに、群れをなして