日本名婦伝 大楠公夫人 / 吉川英治
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「これより吉野の御所に伺候して、よそながら今生のおん暇を申しあげ、直ちに、賊軍の
兄の正行が出陣の折、吉野の仮宮まで、行を共にして、そこから別れて城寨へ帰って
急いで膝を、吉野の仮宮のほうへ、正しく向けかえ、伏し拝んで、
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千早、金剛山は云わずもがなである。この辺はどんな小山も窪地も、柵や寨で
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観心寺、龍泉寺、天野山金剛寺、峰谷々の寨寺で、護国の鐘が鳴りひびいた。正行、正時
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(例)河内
木も草も枯れ果てて、河内の野は、霜の白さばかりが目に沁みる。
と、留守の東条の人々は、河内の野を、心配にみちた眼で、見まもっていた。
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ここに移り住むまでは、観心寺にもいて、また、良人とは道契のふかい妙心寺の授翁和尚と
を、やがて敵方から送られ、その変り果てた面を、観心寺の一室に迎えて、仰ぎ見た時も、あのまま泣き絶え果ててもしまわず
観心寺、龍泉寺、天野山金剛寺、峰谷々の寨寺で、護国の鐘が鳴りひびい
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とする、二十余ヵ国の兵六万をもって、東条、赤坂の攻略に大挙さしむけた。
一様に城寨から出払って、急に、東条、龍泉寺、赤坂の一帯が、人まばらになったのを見た朝のことである。
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下さい。あの折の合戦は、足利方の惨敗でした。四天王寺のあたりから駈け崩され、ふかい暗夜を、押しもまれて、退く途すがらも、
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その列の先に見えた人は、葛城の峰の雪よりも真白い喪服を着、白木の台に白い覆布をかけた
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、次にまた、怪しい者でない由を呶鳴り立てた。京都で聞えている薬師の店の主だと云った。妙心寺のお書付も
協せて、敵地の子を救い、共に脱走して京都へ帰ろう」
泣かぬ擒人とてはなかったのです。そして半分は、京都へさして帰りましたが、残る半数は、その場で降伏を誓い、
日本という国を見た。――小四郎、さッ急ごう、京都へだ」
よう導いてくれた。そうだ、そちを連れては、京都の世間がうるさい。わしひとりで行って来る。子に手を引かれるの