小松原 奥多摩 武蔵野 横浜 日光山 東京

に、ビショ濡れ、行っても、行っても、武蔵野か、小松原ばかりで、二人抱き合って、不遇の文人が、不遇の山水のために、数奇

やと、慨然としている。実にその頃は、奥多摩の風景を知る者なく、説く者なく、東都を隔てること二十里にすぎないほど

にすぎないほどの近隣でありながら、多摩川上流、あるいは奥多摩は、全く閑却されていたのであった。それを見つけ出して世間

さを、淡彩的に点描するのに巧みであった。武蔵野といえば、ただちに独歩の名作が連想されるが、花袋も紀行文家とし

も紀行文家として「野の人」であった、武蔵野の人であった。私はなんのかのと、不足は言いながらも、

折からの大雨に、ビショ濡れ、行っても、行っても、武蔵野か、小松原ばかりで、二人抱き合って、不遇の文人が、不遇の山水のため

忙しきことと存候、大日本地誌は先日も紫紅兄の横浜通なる眼光を以て批評せられ大にヘコミ居申候ことに御座候、

な原稿をかかえて、志賀先生を訪問せられたとき、横浜にいる人が、こんな紀行文を発表している、山を知っている人らしい

版）が最もすぐれている。「多摩の上流」や「日光山の奥」のごとき名篇が、その中に収められている。（昭和十一

先達で、八文字舎風の軽妙洒脱な紀行文を書き『東京朝日』の続きものとして明日を楽しませた。幸田露伴にも『枕頭

東京にても御出遊の節は是非一度御目にかかり度く存候

東京牛込北山伏町三十八田山鉄彌二十九日夕、とあるが、消印は明治三十八

、結局橋本君をわずらわすことになった。橋本君は、東京から山王山まで通って、登山仕立ての私を描いてくれた。服装は