火と氷のシャスタ山 / 小島烏水
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、今日では、ややともすると、最近発見の日本アルプス上高地あたりに、国立公園を、お先に奪われそうな形勢であるが如くに
したくも、碌なものがないところで、この節の日本アルプスの登山口の、設備の方が、よほど行き届いているくらいだから、その貧弱
シャスタとシャスチナの間の、鞍部に懸垂しているが、アルプスのベルニーズ・オーバアラント山地あたりの大氷河に比べると、恐らく雛形ぐらいの小さいものだろう
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、高台の上に乗っかって、群峰になっているから、槍ヶ岳とか「マッタアホルン」とかいう特異の山形を除いたら、遠くからは、どれ
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心を惹かれる山である。何故というに、キャリフォルニアからオレゴン州への、境近い街道に、山が聳えて、複式二重の成層火山、シャスタ
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。同君は、その後帰朝して、過般の大震災で、鎌倉で圧死の不幸に遭われた、他の二人は、野坂滋明君と国府精一
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融けるし、氷河は小ッぽけな塊に過ぎないし、富士山のように、新火山岩で、砂礫や岩石が崩れ易いので、高山植物は
である。その麓を汽車が通っていることは、丁度富士山の裾を、御殿場から佐野(今は「裾野」駅)、三島、沼津と
の推し流した堆石を使ったりしているのが、私たち富士山で、万年雪を物色したり、日本アルプスで、「カアル」の痕を、氷河
もある。シャスタに就いて言うと、氷河地形などは、我が富士山とは似ない方面だが、その他に於て、多くの似顔は、合せ鏡
、未だそういうものは、何にも出ていない(あたかも富士山が「天地の別れし時ゆ神さびて」とか、古くから言われてい
比してすら、下位に落ちてしまった(あたかも日本最高の富士山が、久しく信ぜられていた三七七八米突という高さが、最近実測の
山脈が、登山家の興味の中心になって、離群別居の富士山が、大分閑却される傾向があるように)。第四は、山の不幸
名は、草莽の間に埋められようとしている(あたかも富士山の役行者の名が、今日忘られかけて、日本アルプスの先達、ガウランドだの
熔岩は、シャスタの南麓から迸ったのであるが、ちょっと富士山から、桂川に沿うて猿橋まで達しているところの「猿橋熔岩」に似
が出て来る、それはシャスチナで、高さは日本の富士山と同じく、一万二千三百尺であるが、シャスタ主峰は、それよりも更に、約二千
たりして、雪渓を、ものの三千五百尺ばかり登ると、富士山の胸突八丁にも喩えられるところの、火口壁へとぶつかった。これを越える
のは、私も知っている、しかしシャスタ山は、我が富士山の如く、登る山であるが、同時に眺望する山だ。この山を中心
裾野へ引き落し、末端は五度位にちぢんでいるが、富士山の如く、草山三里、木山三里、石山三里という割り当ては、シャスタには応用
一番小さいものであることに疑いはないが、仮に、富士山の氷河が成立したとしたら、あるいはまた、日本アルプスの劍岳や立山
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大雪渓が始まるが、この雪渓の長々しい傾斜は、さすがに白馬岳あたりの比ではない。翌くる十一日の朝、一行はこの単調の雪渓
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方でもなかったが、あとから探検された他州(ワシントン州)の、レイニーア山の方に国立公園を取られてしまい、レイニーア山に関しては
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火と氷のシャスタ山
、と聞かれると、一番先きに頭に浮ぶのは、シャスタ山である。がそれは必ずしも、好きであるからではない、位置が南
と白人とが必死になって闘ったり、殊に一八五一年、シャスタ山から、三十五哩離れたワイレカというところに、金鉱が発見されてからは
いるので、耳寄りに思って買って見ると、いかにもシャスタ山の、氷河融解、大洪水来と、拳大の活字で見出しがついている。それ
如くに感じられる、そう思うとき、我々日本人に取って、シャスタ山は、もう錠前を卸した山ではなくなった。
言うならば、とかくに不遇の山水である。第一にシャスタ山は、太平洋沿岸に近い山としては、早く発見された方では
奪われそうな形勢であるが如くに)。第二にシャスタ山は、初めは海抜一万四千五百尺と測られて、米国最高の山と信ぜられて
四は、山の不幸は、住人の不幸になって、シャスタ山と、切っても切れぬ歴史中の人を、埋没しようとしている。
ぬ歴史中の人を、埋没しようとしている。即ちシャスタ山を、世に紹介するために、全力を尽くした土地草分けのシッソン翁(J
が、もうその点は打ち切って、私たち同行四人が、シャスタ山に登ったのは、大正八年(一九一九年)九月十一日のことで
短くして、呆気ないのは、私も知っている、しかしシャスタ山は、我が富士山の如く、登る山であるが、同時に眺望する山だ。
かと聞かれると、一番先きに頭に浮ぶのは、シャスタ山である、それは必ずしも、好きであるからではないが、最も多く心
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登山にしてからが、時間不足のために、絶頂の剣ヶ峰ともいうべき、シャスタ・ピークまでは、達しなかったのだから、一個
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独にして秀で、単にして完き姿である。日本アルプスでも、そうであるが、アルプス式の山は、高台の上に乗っかって
寝たが、乾き切った小石交りの砂地の上で、日本アルプスのように、柔らかい草原を褥にする贅沢は、思いも寄らず、睡眠不足が
、富士山の氷河が成立したとしたら、あるいはまた、日本アルプスの劍岳や立山群峰が、もう五百米突も高くて、氷河の小塊が
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基盤熔岩なる岸壁の間から、地下の伏流が、富士の白糸の滝のように、千筋とまでは行かなくとも、繊細な糸を捌いて、
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ているから、槍ヶ岳とか「マッタアホルン」とかいう特異の山形を除いたら、遠くからは、どれがどれやら、個々の山名がちょっと解り
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慣れないので、少なからず閉口したが、同行中の神田憲君は、この仲間では馬術の達人で、ややともすれば遅れ
文を、同行四人の中、馬術の達人であった神田憲君の霊前に献げる。同君は、その後帰朝して、過般の大震災