盗難 / 佐藤垢石
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、兄さん夫婦がこのことに反対であれば、その趣を京都へ言ってやれば、それで済む。他人ではないのであるから、
て、勝手なことをやってしまいました。それは、京都の姉の腹にある子供を、そのまま佐藤の家へ貰ってしまう、
た。すると、ややあって妹は膝をのりだし、兄さん京都の姉はまた妊娠したのだそうです。ところで父とわたしと相談
、善は急げということになり先日東京を素通りして京都へ参り、姉夫婦にこのことを率直に打ち明けたところ、案のじょう直ぐ承諾し
妻を縦からも横からも観察したのであろう。京都へ帰るほどもなく故郷の老父の方へ、あの嫁さんならば子供を
以上の経過で、話はとんとんと進み、間もなく京都の義兄が上京して、私のところへ二、三泊した。明け暮れ
翌年の一月末に京都から電報がきた。女の子が産まれたと知らせてきたのである
育児には経験がないのであるから、乳離れするまでは京都へ預けておく方がよろしいというのである。老父も妹も、私
ばかりたったとき、堪らなくなって私と家内は連れ立って京都へ行った。みゑ子は肥って可愛い。そして割合にわせの児で
ゑ子が私の家内になつくまで、東京にいて、京都へ帰って行った。帰るとき私が東京駅まで送ってゆくと姉は横
話はさきに戻るが、みゑ子が京都で産まれたころ、故郷では私の若い弟に嫁を迎えた。それ
京都の姉夫婦は、次第に老いてきた。姉はみゑ子を産ん
らしい。その後間もなく私のところへみゑ子を京都へ返してやれ、と言ってきた。私も姉の気持ちには同情
親戚の人々の噂に、京都でみゑ子を欲しがっているという話を耳にしていまし
家内は言下に、それで済むことでしたら、是非それで京都を納得させるようにしてください、と哀願するのだ。
ときがきたら、みゑ子の身代わりとして久子を京都へやることにしようか。と言って、私は三番目の女児の名
妹は、兄を見損なったとかげでいったそうだ。京都の姉に、申訳がないと言って老父にざんげしたという。
子を思う心は同じだろう。わしにしたところが、京都にいる娘も可愛いし、お前の良人である伜も可愛い。親の心
。ところが老父は家内に、わしは何も知らない。京都から盗みにきたかどうかなどということは、もちろん知らない。だ
帰ってこないことを話した。そして、もしかすると京都から盗みにきたのではないでしょうか、とつけ加えた。ところが老父
その日の午後、警察署へ捜索願を出すと同時に、京都に電報で照会してみた。すると、たしかに当方にきている
京都の姉は昨秋、義兄は今春他界した。事件以来私は義絶して
みゑ子は三年前、京都から東京へ嫁いできていた。(一五・八・三〇)
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の秋であったと思う。私の妹が突然郷里から東京へでてきて、私ら夫妻に言うに、兄さんたちはまだ若いの
そこで、善は急げということになり先日東京を素通りして京都へ参り、姉夫婦にこのことを率直に打ち明けたところ
分かる。私らと姉と三人で、みゑ子を東京の家へ連れてきた。
姉は、みゑ子が私の家内になつくまで、東京にいて、京都へ帰って行った。帰るとき私が東京駅まで送って
老父は、孫娘を弟の若い未亡人に抱かせて東京へやってきた。家内は、俄に二人の母親となったのだ
ころから浪費癖を持っていた。それで、故郷や東京を離れ諸国を巡歴し、家庭と共に流れ流れて歩く間に、持てる
のだ。今年の初夏のころ、みゑ子は突然、東京の私の家を訪ねてきて、玄関で泣き崩れた。お母さん、堪忍し
みゑ子は三年前、京都から東京へ嫁いできていた。(一五・八・三〇)