下北半島 北海道 五稜郭 函館山 津軽海峡 大間崎 駒ヶ岳 東京

津軽の山々も鼠色にくつきりと浮び上つてみえる。下北半島の尖端、大間崎の灯台が明滅するのもよくわかる。とくに春秋の烏賊つりの

小さなランチやボートや伝馬船が、絶えず発着して、北海道の奥の港からくる旅人達が乗降する。或は外国人達が賑かにやつて

恵山も、横津岳も駒ヶ岳も、町も港も、つまり北海道の南端全体が一望のもとに眺められる筈である。要塞であつたため、

も云つたやうな原始の情趣を味ふことが出来る。北海道には未だ風景になりきらぬ風景といふものがある。さういふ荒涼とし

きらぬ風景といふものがある。さういふ荒涼とした北海道らしさはこの辺りから始るやうに思はれる。雄大とは云へないが、いかに

ものどもが夢の跡」といふ芭蕉の句が、北海道で思ひ出される唯一の場所かもしれない。真夏の照る日、わざわざこゝへ出かける

て、寂寥の風景に一人対するのもいゝものである。北海道の大地が、骨髄までしみこんでくるのはかゝる時であらう。

東京では馬鈴薯の花などに一向気をとめないが、北海道におけるこの花の美しさはかくべつのやうに思はれる。鈴蘭の花は

七、五稜郭の夏草。――五稜郭は名所としてあまりに有名だ。しかし有名なところ

七、五稜郭の夏草。――五稜郭は名所としてあまりに有名だ。しかし有名なところほど案外面白くないものだ

起伏のある高原に遊ぶのも捨て難い趣があつた。五稜郭裏側の寂莫たる風景に比べると、こゝは高原のせゐもあるためか、

造りの建物が霞んでみえる。トラピスト女子修道院である。やがて函館山をめぐつて湾へ入りかけると、松前の山々につらなる丘の上に、やはり

一、寒川の渡。――函館山の西端、即ち湾の入口にのぞんだところに、寒川といふ小部落がある。こゝ

五、臥牛山頂。――函館山は一名臥牛山といふ。北方正面からみると、ちやうど牛が臥せてゐる

山頂に立てば、津軽海峡はむろん、松前の山々も、恵山も、横津岳も駒ヶ岳も、町も港も

にくつきりと浮び上つてみえる。下北半島の尖端、大間崎の灯台が明滅するのもよくわかる。とくに春秋の烏賊つりの盛んな頃は、

海峡はむろん、松前の山々も、恵山も、横津岳も駒ヶ岳も、町も港も、つまり北海道の南端全体が一望のもとに眺められる筈

劣らず私の好きなのは馬鈴薯の白い花である。東京では馬鈴薯の花などに一向気をとめないが、北海道におけるこの