東大寺 安土 鎌倉 奈良

の東大寺観にとつては極めて大切な発見であつた。東大寺は、大群衆に埋められたとき、はじめてその真面目を発揮するであらうといふ

のは当然で、何もめづらしい発見ではないが、東大寺の場合は格別のやうに思はれたのである。今までも屡※大仏殿前

ところが東大寺は、群衆の数が多ければ多いほど益※おもむきを加へるやうだ。千二百年

、これを拝さんと門前にひしめく数万の大群衆、東大寺の大きさは、このときはじめて完璧に実現されたに相違ない。この寺の

を顧慮に入れただけでなく、今日の言葉で云へば東大寺の舞台効果を念頭においたらしいのである。大仏殿前の庭上に、群衆

、立つてゐてはちよつと気づかぬ微妙なところである。東大寺を囲繞する若草山を坐つて眺めてゐると、大仏殿の庭は、あたかも

なつて信仰を微妙にそゝつたにちがひない。要するに東大寺は、祝祭と群衆によつて埋めつくされたときが最も荘厳であり偉大な

ではなかつた。むろんそこには物質的な理由もある。東大寺は　天皇の勅願寺であり国宝であるにも拘らず、今まで国家の保護

外観が大きいので人は信じ難いであらうが、今の東大寺は大和でも屈指の貧乏寺なのである。大仏殿に集る布施によつて

朝の御親政は直ちに戦乱であつた。鎌倉、室町、安土・桃山から徳川までは周知のごとく幕府の長い専制時代がつゞいてゐる。明治から

ゐた。吉野朝の御親政は直ちに戦乱であつた。鎌倉、室町、安土・桃山から徳川までは周知のごとく幕府の長い専制時代がつゞい

は抱きつつ、一方ではめづらしい祭りを眺めて、奈良の秋の一日を楽しまんといふ遊楽気分がつよかつたことは否定出来