モスクワ 銚子 祇園 シベリア 神楽坂 北海道 四国 黄浦江 宮城 赤坂 四谷 長岡 本郷 札幌 灘 九州 江戸 青島 吉林省 下関 パリ 本州 関西 ハワイ 両国 福井 千葉 京都 秋田 青森 長崎 深川 東京 亀戸 新橋 浅草 月島 上野 神田 巣鴨 日比谷 日本橋 銀座 池袋 隅田川 東京湾

組織である。団員の一人ジナイーダ・コノプリャーニコワは、一九〇五年のモスクワの反乱鎮圧に当った連隊長（その功で大佐から少将に昇進した）を

酒が来た。砂馬はさっそく銚子に手をやって、

けしからんといった語調で中尉に言った。祇園で遊んでいた大石クラノスケの故智にならって、世間の眼をくらますためだろう

雪のシベリアに流されたヴセレンツィにみずからをなぞらえている金原は、その雪中放牧を当り前の

赤坂は生れて初めてだった。神楽坂の安待合などとは、すっかりちがう。オカグラ（神楽坂芸者）相手のシャボツリ（芸者

「これを持って北海道へ飛びなさい」

「北海道？」

アビルのすすめる北海道への脱出が俺には、俺自身からの脱出を意味するものだったから

俺は北海道へ逃げることにした。

北海道へズラかるについて、俺は丸万にだけは会わないではいられなかっ

とちがって、脚が短く、小柄なこの道産子（――北海道生れの人間のこともそう言うが）は、広漠たる原野のなかで、ひとしお

言って、そしてこんな話をした。あの道産子の先祖は北海道がエゾと呼ばれていた頃、アイヌと交易するため本州から船で北海道

れていた頃、アイヌと交易するため本州から船で北海道へやってきた「和人」が使役用に連れて来た馬である。

「北海道へは何しに……」

の遊興街のガセビリになっていると言う。俺と同じ北海道にいようとは露知らなかった。妙な因縁すら感じられるが、それにし

たときは、おやじはとっくに骨になっていた。北海道とちがって東京はヤケに暑く、屍体がもたないんだそうだ。

兄貴の女房と俺は初めて会った。俺が北海道へずらかる前に、それよりだいぶ前に兄貴の五郎は結婚していたの

「北海道へまた帰るのか」

、統制派と皇道派の対立にしぼられて行った。北海道から百成綾子が上京して俺のアパートに訪ねて来たのは、ちょうどこの頃

だった。俺の病気を金原から聞いたと言って、北海道のバターをたくさん持ってきてくれた。

が、俺としては、この上海行きの気持は、北海道から東京へ引き揚げる直前、百成綾子に会ったときに、すでに心に来てい

「北海道へ行く直前……あのときはお世話になった……」

「ずっと根室に俺は行ってたんだが、北海道に照ちゃんが来てると一度聞いたことがある。いや、わざわざ俺にそれ

「照ちゃんが北海道にいることを矢萩大蔵はどうして知ったんだろう？」

眼につくものだが、この揚子江はたとえば瀬戸内海の真中から四国でも望むみたいなもんで、しかも山のない岸は、遠いだけでなく、

「黄浦江にあのとき、日本の軍艦がいたんで、よかった。あれで助かった

連隊は首相官邸に行っているはずだと知らされた。宮城のほうから官邸へ行く道があるのだが、それは蹶起部隊が固めて

形なのが俺には不可解だった。待ってないで宮城にはいったらどうか。

その指導部の幕僚将校と、ある夜、俺は赤坂の待合で会った。北槻中尉が俺を連れて行ったのだが、

赤坂は生れて初めてだった。神楽坂の安待合などとは、すっかりちがう。オカグラ（

この赤坂は軍人のお客で栄えたところで、ここでは軍人が大威張りなのである

痛快な計画から手をひくのはいかにも残念だった。赤坂の待合で俺がこの眼で見た、あんな調子では、またもや不発に終る

する目的でそうした説を流したのだろう。俺が赤坂の待合へ行ったときのことを思うと、あれでは露見するのも当り前

が固めていて通れない。そこで俺は遠回りだが赤坂のほうに回った。鎮圧部隊がまだ出動してないころで、弥次馬がいっぱい

決行の前夜、俺は民間側の参加者とともに四谷の安待合にとまった。宿屋は眼につくから待合が選ばれたのだ

矢萩……？　と俺は眉をあげた。四谷の待合で右翼の奴から聞いた名だ。俺をこの矢萩の一味である

十月事件の前夜、四谷の安待合に泊ったとき、矢萩の名を口にした男がいた

俺はピストルを入手次第、大将をやっつけてやろうとひそかに長岡へ偵察に赴いていた。憲兵はもとより巡査も動員されていて、

「本郷だ」

「本郷はどこ？」

「本郷に下宿してると言うから……」

本郷の下宿はおそらく憲兵が張りこんでいるにちがいないから、そこへ戻るのはあぶない

女中になったと知らせてきた手紙を、俺は本郷の下宿で受け取った。

「本郷でつかまったそうだが……」

で――とは波子があとで言ったことだが、札幌あたりで作ったと覚しいよそ行きの洋装は、きたないこのバラックを訪ねるにしては

姓だけのことで、本人は貧しい百姓である。もとは札幌で百成清一郎と一緒にアナーキストとして暴れていたのだが（という

「あの女房は、清さんが札幌で知り合った女なんだ。札幌から根室へ清さんが、旗をまいて

女房は、清さんが札幌で知り合った女なんだ。札幌から根室へ清さんが、旗をまいて戻ってきたとき、あの女も

根室から札幌に出て、札幌から函館に行き、青函連絡船で青森へ渡り、それから

根室から札幌に出て、札幌から函館に行き、青函連絡船で青森へ渡り、それから上野まで――こう

下関に着いて、そこから関釜連絡船に乗って、玄海灘を渡るのだが、そのときのことをちょっと……。

「雑夫は九州もんなのか」

たちよ。秋田から来たんですってさ。それが、九州と同じバッテを使うのよ。不思議ねえ」

か特別の珍しい食い物みたいになっている。それをいかにも江戸前の食い物みたいに思いこんで、イキがってる若い会社員などが、わざわざ女の子を、

投じた。わしはさきに話に出た梶川悲堂と青島に行った」

の商社にも、なかなか気骨のある人物がおったな。青島のある商社の支店長は革命軍に軍費の貸付けをしてやったものだ。

、満州の馬賊に渡りをつけて、砂馬は北満の吉林省へ行った。阿片郷として知られている東寧、穆林のあたり

俺はポッポ（汽車）で下関へ行った。青切符（二等）を買える金は持っていたけど（

て行くことだった。一気に死地へ乗りこみたいのに、下関までは今とちがってずいぶんと時間がかかった。時間をかけて、生から

手早く話そうと言いながら、ぐずついている。下関に着いて、そこから関釜連絡船に乗って、玄海灘を渡るのだが

いた張継の力なんだが、この張継はパリに亡命してたアナーキストなんだ」

本州だと山の奥へ行かないと見られない花である。俺はその本州

奥へ行かないと見られない花である。俺はその本州でも今まで見たことがなく、ここへ来て初めて見た。

がエゾと呼ばれていた頃、アイヌと交易するため本州から船で北海道へやってきた「和人」が使役用に連れて来た

という意味だが、兵隊の「シンク、シンク」には関西の「ナンギやなあ」を連想させる響きがあった。

ておく）糸を通してつないで、当節風に言えばハワイのレイのように首にかけた子供たちが、丸く輪を作って何かもの珍し

ロクは日華両国語をチャンポンに使って、車夫を指図した。公用と書いた白い腕章をつけた

辺のことはいずれあとで語らねばならない）ピストルで福井大将を狙撃した。その一派はつかまって死刑になった。俺たちが

福井大将の暗殺計画に俺たちも死刑を覚悟で参画していたのだ

は軍人なんだ。その報復のために俺の同志は福井大将を狙撃して、死刑になった。

福井大将を狙撃して、死刑に処せられた俺たちの同志も、革命精神

「この加柴君は福井大将を狙撃した虚無主義者の仲間だ」

と思っとるのだ。三年前、君らの仲間が福井大将を襲ったとき、わしはちょうど五十だった」

に俺も加えろと強硬に売りこんだのである。俺は福井大将を狙撃したテロリストの一味という前歴がたたって、右翼の奴ら

たのか。そこのところはよく分らないが、ほんとなら福井大将の心臓をうしろからぶち抜いているはずの、そんな近くで射ったタマが

福井大将の暗殺が未遂に終って、狙撃事件だなんてみっともない名をつけられ、

福井大将の暗殺計画のとき、俺はダイナマイトを手に入れるため、飯場にもぐりこん

留置場）で俺は赤飯を食ったわけじゃない。前に福井大将の狙撃事件でぶちこまれたときに、こうした隠語をあらかた覚えた

あなたはあのテロリストの加柴四郎氏なんですね。有名な福井大将狙撃事件のあのテロリストの仲間なんですね」

出しっ放しのピストルをボンズ（ズボン）のポケットに押しこんだ。福井大将狙撃に使ったピストルは同志がこの上海に潜行して買ったのだ

は言った。大杉栄の場合は、「赤旗事件」で千葉監獄にはいっていて、大逆事件のときはシャバを留守にしてい

そのころ、俺は千葉の海岸に実はのんびりと避暑に行っていた。いや、避暑なんていう

でつかまって、日本を追われることになったのだ。京都へ逃げるときにすでに国外追放を覚悟していたのだろう、わしたちに

たが、仲間の支那人が奪い返してくれた。それで京都へ逃げたのだが、そこでつかまって、日本を追われることになっ

東京とちがって人家の屋根の向うに山があるのは京都を思わせる。南山の麓にもとは総督府があったのだそうで、

「いいえ、あの女工さんたちよ。秋田から来たんですってさ。それが、九州と同じバッテを使うのよ

札幌に出て、札幌から函館に行き、青函連絡船で青森へ渡り、それから上野まで――こうながい汽車の旅では、いくら急行

大食いのことを根室のカニ工場の女工たちは、青森あたりの方言なのか、オオマクレーと言っていた。

らしかったが、俺はそうはいかなくて船だった。長崎から上海行きの船に乗りこんだ。

川沿いの一帯も、急にその時分から、ごみごみした本所深川と同じような風景に変って行ったのだ。

「東京です」

「言葉に訛りはないな。東京はどこだ」

「東京の生れがどうしてこんなところへ来たんだ」

た。辱しめに怒っているふうでもない。そのクララは東京生れというのがうそじゃないらしい、ほっそりとした華奢な身体つきだった

と周旋屋に言われて、東京を知らない田舎の女が、銘酒屋と言うからお酒の相手でもする

クララのような東京生れは珍しいのだ。どうしてこの女はこんな淫売窟へ売られて

に、コウモリが降りてくる。田舎の話ではない。東京も昔は、周辺の百姓が野菜を積んだ車を牛に曳かせて

「東京だよ」

「東京なの？」

させ、そして近代的な工業国になった。日本中に、東京中に、工場ができた。四の橋のあたりにも、芝浦辺の

東京を去るに当って、俺はアナーキストの仲間に会いたいと思ったが、

字に書けば東京弁だが、どこかの田舎訛りがまだ抜けない。するりとさきに蒲団

東京を去ることは俺には死をめざして生から去って行くことだった。

東京の街で、

内地人町の背後に南山という山が見え、東京とちがって人家の屋根の向うに山があるのは京都を思わせる。

「お客さんは、東京の人ですね」

「また東京へ帰るんですか」

「東京はいいところでしょうね」

「料理屋で働いてんです。あたしはどうせ働くんなら、東京で働きたいんです」

宿に戻ると、東京からの電報が俺を待っていた。慷堂からの電報である。

と、みんな、家の人たち口どめされたの。早く東京へ帰ったほうがいいわ」

「あたし、東京へ行きたいの。一緒に連れてって……」

「お尋ね者の俺と一緒に、東京へ……？」

――若夫婦の偽装で、まんまと俺たちは東京へ帰ることができた。

はなく、宿屋で俺の帰りを待っている波子と、東京での初めての夜をすごすことを避けたい気持だったのだ。

近くに帰った。波子の姿が見えなかった。早速、東京見物にでも出て行ったのかと思ったら、そうじゃなかった。

いた。封筒の裏に出ている小料理屋の場所は、東京生れの俺もついぞ行ったことのない、俺などには関係のない日本橋

なといった気がかりをいっぺんに吹き飛ばす爽やかさがあった。東京の濁流にいきなり放りこまれたこの女に、なんの手もかさなかった俺

濡れたたたきにすっと立った波子は、一週間ほどの東京暮しで、たちまちすーっと背がのびたみたいな高さで、おやと俺

くるほどだから、気丈な女にはちがいないが、この東京にさっさとひとりで生活の根をおろしている。ふーんと俺が思わず感嘆

知らずの、それも「お尋ね者」の俺と一緒に東京に出てくるほどだから、気丈な女にはちがいないが、この東京

「悪い人だと思ったら、一緒に東京へ出てこない」

「あの晩、お女郎屋さんへ行ったんでしょう？　東京へついた晩……」

「あたしだって、東京に知り合いがないわけじゃないわ」

その事変の直前に砂馬がふらりと東京へ舞い戻ってきた。黒く陽やけした顔は満州滞在中の労苦を偲ば

の蹶起とともに東京は大混乱に陥る。そのとき、東京の要所要所に火をつけて火災をおこすんだ。これを丸さんの

「軍の蹶起とともに東京は大混乱に陥る。そのとき、東京の要所要所に火をつけて火災

たさまに俺は、小娘を短時日にこんなに変えてしまう東京というもののこわさをまざまざと見せつけられたおもいでもあった。京城の

た。不発に終った三月事件、十月事件が、東京から俺が去るとともについに実現されたかのようだった。それ

と遠い東京の空を睨むほかはなかった。不発に終った三月事件、十月

にしていた。その噂とは、兄の清一郎が東京へ出奔したのは、この網元の家を弟の真二郎につがせるため

いやに厚化粧をしていた。それがしかし――東京の風俗がまだ眼に残っている俺には、フェエナゴ（カフェーの女給）

を俺は初めて見たのだ。思いなしか、そのつぼみは東京で見たときとちがって、いきいきとしていた。

花と一緒に福寿草も枯れてしまうのが常だった。東京では育たないのか、毎年買っては、毎年枯らしてしまう。埃を

東京ではこの福寿草はお正月用のめでたい花として鉢植えになってい

「清さんは一体、東京でなにをしてるんでしょう。金原さんは知ってるらしいけど、あたしには

俺は東京の慷堂に、俺がここにいることを知らせたいと思った。ここ

俺は俺に子供ができたことを、東京のおやじや兄貴に知らせたかったが、ヤバイという恐れからその気持を

。このタマのマは、マとバの中間の発音で東京もんの俺にはうまく言えない。

から矢萩と一緒に来たのかと尋ねた。矢萩は東京から直接ここへわざわざ来たのか。俺の問いに、朝倉は急に

俺は朝倉に、東京から矢萩と一緒に来たのかと尋ねた。矢萩は東京から直接ここ

た。妙な因縁すら感じられるが、それにしても東京生れのあの照子がこんな遠い土地に流れてきていようとは……。

「東京ではやるものは、じきここでもはやる」

「東京じゃ右翼のテロがはやってるが、こればかりは、こっちもというわけに

「なに言ってんのよ。東京のお父うさんが危篤なのよ」

「東京へ？」

「東京へ出たら、もうここへ戻っては来ないんでしょう？」

からむしろ――こんなときにかぎって、そういうもんだ。東京へ行くんだという昂奮が俺の欲情をもたかぶらせたのか。

この波子とできたのは東京でだが、波子がいわば女になったのは根室に来てからだっ

「東京へ行ったって俺はむざむざ、パクられはしねえ」

「急に東京へ出ることになったもんで……」

美しさは俺にあるいたましさを感じさせた。綾子は東京へ俺たちと一緒に行きたいと言った。連れて行ってほしいと言い

「東京へ出て、それから上海へ行くんでしょう？」

は終始スヤスヤと眠っていた。何事も知らないで、東京へ連れて行かれることも知らないで……。

おやじはとっくに骨になっていた。北海道とちがって東京はヤケに暑く、屍体がもたないんだそうだ。

、おやじの死に目に会うことができなかった。それどころか東京に着いたときは、おやじはとっくに骨になっていた。北海道と

おやじの命名だなと俺は思った。もしも志奈子が東京で生れていたら、おやじから一子とでも名づけられていたこと

「こいつの籍もまだはいっていないんだ。東京へ出てきたからには、思いきって、いれるつもりだが」

興漢の旗じるしをかかげたあの中国革命同盟会の本部が東京にあったればこそ、安全に守られて、清朝顛覆の大業も成功を

だし、皇道派の前次官も第一師団長として東京に残っているから、皇道派も実勢力としては悔りがたいもの

俺は、頭にかーっと血がのぼって、一時はすぐさま東京へ飛んで出ようと思った。だが、出たところで、どうなるもの

ていた。いや、避暑なんていうしゃれたもんじゃなく、東京の炎暑で病気がまたぶりかえしちゃまずいと、外房州の漁夫の家に、

波子も手をあげて俺を呼んだ。子供を連れて東京から来たのだ。

俺としては、この上海行きの気持は、北海道から東京へ引き揚げる直前、百成綾子に会ったときに、すでに心に来ていた

ですよ。ひょっとすると、あんたをねらって、その男は東京へ来るかもしれないんで、ひとつはそれをあんたに言っときたい

は俺に、あの十月事件の直前、丸万と夜の東京を見おろして、暴動を夢想したことを思い出させた。

あのとき暴動がもし実現していたら、東京の街もこうなっていたかもしれぬ。

俺が東京を発つ直前だ。しまったと、俺は思った。死ぬ前に一度、

内部に一歩、足を入れると、これがぶちこわしだった。東京で言ったら、てもなく大正時代のカフェーだった。

「君のお父うさんに東京で会ったことがある。俺がさも君を――照ちゃんと言わせ

新橋赤坂の一流芸者だって、ノイ（玉の井）やメイド（亀戸）の安淫売だって、もとをただせば同じなのである。周旋屋

つまり、なんていうか、新橋赤坂の一流芸者だって、ノイ（玉の井）やメイド（亀戸）の安淫売

と誘われてエンコ（浅草公園）へ行った。

丸万と俺は市電で浅草まで行き、そこから東武鉄道に乗った。道々、丸万は露店仲間にぼちぼち、

と誘われて、浅草のどじょう屋へ行った。ズー鍋とは、なまず鍋のことだが、

どこからか、レコードの「浅草行進曲」が聞えてくる。「恋の灯かがやく、真赤な色に、胸

夢の浅草　なみだ雨

は浅草の安来節を女の腹の上で歌った。浅草の小屋ではそのころ、この「エッサッサ」の個所で客がある種の

凱歌のように俺は浅草の安来節を女の腹の上で歌った。浅草の小屋ではその

その夜、俺は浅草のひょうたん池へふらふらとひとりで出かけて行った。いや、実を言えば

風がひどい。浅草を離れると、暗い町が車窓の外につづいた。どこへでも好き

浅草の松葉町の小さなしもたやの二階に、丸万は間借りしていた。この

「この間、浅草へ行った」

「浅草がどうかしたのか」

この「名人」は、月島の労働会館というようなところへ、夜、こっそりはいりこんで、アナの悪口

俺は上野に出て、不忍池のまわりをほっつき歩いた。上野の森に、満月がぽっかりと浮いていた。

俺は上野に出て、不忍池のまわりをほっつき歩いた。上野の森に、満月が

から函館に行き、青函連絡船で青森へ渡り、それから上野まで――こうながい汽車の旅では、いくら急行でも、おやじの死に目

明治四十一年六月、神田錦輝館で同志の出獄歓迎会を開こうとして、それが解散命令を

、大杉栄はそのため朝憲紊乱の罪に問われて、巣鴨監獄にぶちこまれた。二十三歳のときである。

、大規模に無産三派連合の内閣糾弾の大演説会を日比谷に於て開催し、倒閣の気勢を揚げ、且つ議会に向いデモンストレーションを行い

もついぞ行ったことのない、俺などには関係のない日本橋で、女中に密淫売をさせる店がそんな場所にあろうとは思えぬ

苦しめてきた奴をひとりひとり――外国の革命みたいに、銀座通りの街燈に、しばり首にしてぶらさげてやるんだ。どうだ、痛快

二三年前に、アナーキストの仲間の一人が、銀座のショウ・ウィンドウのガラスを軒なみ、たたき割って歩いたことがある。社会へ

いた。その志奈子を兄嫁に預けて、波子は夕方から銀座の小料理屋へ働きに出た。赤ん坊を俺のそばに置いては、俺

富江というマトシ（年増）がいたろう。あれがいま、池袋で屋台のおでん屋をやってる。ケチな屋台だが、ガセビリ上りにし

車は隅田川に近い川岸と覚しいところに出て、

その行き先は、隅田川のポンポン蒸気ほどの大きさの舟だった。

クララこと照子のいた隅田川の向うの私娼街を俺たちは「川向う」と言ったものだ。

大きく揺れて、磯のにおいがしてきた。どうやら東京湾に出たようだ。黒い水面は、油でも流れているのか、