江戸 四谷 丸の内 長崎 岐阜 東京 新橋 曳舟 銀座 神田 九段下 神保町 日本橋 目白 両国橋

わかい東京に江戸の唄、

汽笛が鳴る……四谷を出た汽車の Cadence が近づく……

丸の内の三号、

隣人は女房を恐れる、長崎うまれの

岐阜堤燈のかげうつる茶屋のうしろのながし湯の

東京景物詩及其他

東京夜曲

東京の午後四時過ぎの日光と色と音とを怖れたり。

凡ての上にうち湿る「東京の青白き墳墓」

肺病院の如な東京物理学校の淡い青灰色の壁に

波うちぎはを東京の若紳士めく靴のさき。

暮れかかる東京のそらには

夏の日の東京に

わかい東京に江戸の唄、

本集名づけて東京景物詩と呼べども、その実は「邪宗門」以後に於けるわが種々

わが前にあり、新生来らんとす。顧みて今復東京のために更に哀別の涙をそそぐ。

東京、東京、その名の何すればしかく哀しく美くしきや。われら今高華なる

東京、東京、その名の何すればしかく哀しく美くしきや。われら今高

正面なる新橋の天鵝絨の空の深みに

「曳舟」の水のほとりをゆくころを。

七月の夜の銀座となりぬれば

銀座花壇

新しい銀座の夏、

銀座の雨

銀座の雨

雨は銀座に新らしく

冬の銀座に、わがむねに、

九段下より神田へ出づる大路には

九段下より神田へ出づる大路には

人かげ絶えてただ白き裏神保町の眼路遠く、

わたる日本橋ちらちらと雪はふるふる、日は暮れる、

わたる日本橋、槍のさき、

目白、カナリヤ、四十雀、

両国橋の水と空とにちりかかる。