リヨン 巴里 神戸 奈良

なつて来た。妻をマルセエユまで送つて行つた帰りにリヨンから巴里へ乗つた夜汽車の淋しかつたことなどが思ひ出された。今日あたり

天へ近づいて行くんだ。そして天へ近づいて行くほど巴里がよく見えるから結構だ。

――えヽ、えヽ、巴里でも沢山。………わたしはあの人の飼つて居る廿七匹

文学者ですわ。借金で伊太利に居られなくなつた人は巴里にも居られなくなる時が来ます、屹度。

て頂戴な、ランスまで。いいでせう、ランスには巴里やアミアンのノオトル・ダムと同じ古さのカテドラルがありますわ、それから

来た。妻をマルセエユまで送つて行つた帰りにリヨンから巴里へ乗つた夜汽車の淋しかつたことなどが思ひ出された。今日あたり妻

黄昏の燈火に満ちた巴里の街を離れてから、次第におれの心は淋しくなつて来た。

自分から話すまで問はないで居て下さいと云つた。もう巴里に一年近く居るおれは大抵人間の階級の見当が附き相だ。けれど

の淋しかつたことなどが思ひ出された。今日あたり妻が神戸へ着く頃だと思つては疲労した妻の青ざめた顔や母を迎へ

た。それからベデカアを取り出して読んでランス市を仏蘭西の奈良だと思つた。