青山 アイヌ 樺太神社 山梨 中知床岬 オホーツク海 浅間 樺太 九州 追分 北海道 軽井沢 浅間山 江戸 富士山 横浜 北知床岬 札幌 カウ 奥州 海豹島 三崎 オホーツク エルサレム 旭川 印旛沼 金華山 小沼 福岡 佐賀 神戸 新潟 小樽 盛岡 京都 鹿児島 千葉 銀座 東京 水道橋 目白 小諸 信濃追分 浅草

員、新聞同盟外報部長という肩書附きで、本宅は青山の親爺さんのところで電話番号までチャンと刷らせるというのだ。明朝までに

方が、実は大当りで。あした、少し引き還して、アイヌの部落を見に行くことになって居りますので。」Ｋさんが伏目

「へへん、何やろかいな。アイヌにも芸妓はんがありまへょか。」神戸富豪のＮさん。九州男の

「や、アイヌの家だ。」

アイヌ、まことにアイヌの村にちがいない。彼らはまったくアイヌだと、私は観た。

向日葵の大輪の黄金色もまた、私の想像していたアイヌの村にはなかった。しかし、この多蘭泊の部落には、廂よりも越え

だが、アイヌである。人種は確かにアイヌである。だが彼らの服装は浴衣がけで

だが、アイヌである。人種は確かにアイヌである。だが彼らの服装は浴衣がけである。シャツにズボンである。

北海道の稚内で一同と別れた。そうしてまた旭川でアイヌの熊祭を観、札幌に淹留し、函館より海を越えて当別のトラピスト修道院

樺太神社

、三の連れと、この豊原の東郊は旭ヶ岡の樺太神社に詣でた。しっとりとした雨後であった。坦々とした幅広い道路を

旭ヶ岡の樺太神社から瞰下した豊原の夜景はまるで緑野の中の正しい灯の碁盤目であっ

ということ、私の育てた児童自由詩の揺藍学校である山梨は鳳来小学の校長であった高橋君が、大泊に転任していて、

樺太は中知床岬の東、渺々たるオホーツク海のただ中、見渡すかぎりは円い水平線と氷雲、

が、凄まじい飛沫のなだれであった。幌内川の濁流とオホーツク海の波濤とがその河口で激しくかち合って騒ぐのである。それにまだ昨夜の烈風

広く、柱が大きくて、ありゃ国宝ものですよ。それに浅間の裾野一帯が落葉松林でしてね。や、翁草がずいぶん咲いていました

フレップの実は赤く、トリップの実は黒い。いずれも樺太のツンドラ地帯に生ずる小灌木の名である。採りて酒を製する。所謂樺太

遥かに遥かに光る。輝く。寒い寒い雲だ。あっ、樺太だ、確かに。

と寒い黒椴の丘陵とが眺められて、何となく樺太らしい物珍らしさが感じられたものの、いよいよ北緯四十五度の線を越したか

「なるほど、樺太は寒いな。」と。

さは。私はまた佇ち停って、これらの初めてみる樺太の景趣に目を円くした。

沸々とした何かが、階上に充ち満ちていた。樺太とはいっても八月の炎暑である。鼠色の壁の幾つかの煤け

「樺太アイヌですな。」と京大のＡ博士。

玩具のような樺太の汽車。

八月十四日の、樺太は本斗の晴明な暮れがたのツワイライトである。摂政宮殿下の行啓を仰いで

「Ｋさんききなはれ、これが化け猫や。樺太いうところは凄いもんやな。エンヤラヤアノヤアヤや。」

大陸的な樺太の八月の驟雨である。いかにそれが異郷風の壮観であったかは

クリロフの家は樺太における露人の住居特有な校倉式の丸太組のそれではなかった。

は火鉢が二つ、火がカンカンとおこしてあった。樺太は八月でも雨のふる日はうそ寒い。

新開地の日本家屋の醜さがつくづく不快でたまらなくなる。樺太の原生林に、露人はその始めまったくいい生活をしていたにちがいない。

明るかった。私はつくづくと思ったが、この八月の樺太の爽かさは、とても内地に見られない色と香気との新鮮味を持っ

だが、これが樺太であろうか。この親しさは、はるばるとした旅情ともちがう。

と、案に相違した。あまりに新鮮で爽快過ぎる。樺太はやはり冬に来べきところだと思う。私はここで童謡はできるかも

東京も田舎だなアと驚いた事もあったが、この樺太ではやっぱしここも都だなアと感嘆された。

パパは豊原という樺太でのいちばん賑やかな町へ来ました。真岡という町からです。マウカと

お国は何処にあるか知っていますか。パパも樺太まで来たけれど、まだ見つかりません。やっぱりママさんのところにあるのでしょうね

、しらかんば、からまつ、にれ。みんないい木です。みんな樺太の山や野に生えてる木です。それで、その木のお扇子を嗅いでいる

で、その木のお扇子を嗅いでいると、ほんとに樺太の山や野っ原がいいにおいをして動いているような気がします。

それからまだ、樺太にはいろんな木が繁っています。

生きているようです。こうしたいろいろの鳥や小鳥が樺太の山や海に飛んだり啼いたりしています。みんな愉快にみんなが子供

います。みんな愉快にみんなが子供のように遊んでいる樺太の山や海のことを考えてごらんなさい。きっと、坊やも踊りたくなるでしょう

まだまだ樺太にはいろんな獣やお魚がおります。

樺太は中知床岬の東、渺々たるオホーツク海のただ中、見渡すかぎりは円い水平線と氷

樺太で同好の士を幾人も見出したということ、私の育てた児童自由詩

私たちの、樺太の冬はちょうどこの通りですと、外の諸君も附け足した。

教育について。交々詰めかけ詰めかけ質問した私たちに、かの樺太の王様たる長官が何を、また如何なる熱誠を以て応答したろう。

所の周りは既に群集で埋っていた。何と珍らしい樺太の晴天であったろう。光り輝く数百の麦稈帽の反射は近い水面を、空気を

オホーツク海は樺太の東海岸北知床岬の南方十海浬だというのが、この海豹島の確か

樺太は東海岸、北知床岬の南方十海浬、岩島は海豹島の前面、東方。

修道院を訪ねた。ただこのフレップ・トリップは主として樺太における収穫である。観光団解散後の北海所見はいずれ機を得て

で、朝から両手に桜麦酒をかかえ込んで遊びに来た九州は福岡の読売新聞の支局長だというＹ君に、

「泊る。泊れ。だが、どうかな、君は九州っぽうだからな。」

果ててしまいましたが、昔は中仙道と北国筋との追分でしてね。沓掛や軽井沢と並んで浅間三宿といったのだそうです

のだそうです。大名行列で随分盛んだったでしょう。その追分には馬頭観音が立っているんですがね、いつか行って見た時に

歓迎会のすぐ後から、幌馬車に乗って、豊原の西郊の追分という部落へ散策したと思いたまえ。僕たちは一昨日真岡から豊原へ

、待てども待てどもお膳は出ない。いったい、北海道の旅館は悠長だとはきいたが、これには驚いた。

全く私は北海道の旅館といえば、もっと暗鬱で、女中などはアイヌ見たようなのが

「そうですか、奥州や北海道は、僕の国では鬼でもいそうなところだと思っています

馬鈴薯」といえば、独歩の小説から連想しても、北海道には野となく丘となくふかし立ての馬鈴薯が雪のように積り、熊

、トマトの新鮮で美味なのには驚いた。流石に北海道だと思えた。

「どうも北海道は悠長ですよ。」と誰やらがいう。

納屋のようである。それらの家屋も絵葉書なぞで見る北海道アイヌの伝統的家屋とはほとんど趣を異にしている。あまりに日本化して

「だが随分悠長ですな、ここの家は。北海道から此方は妙にベルが利かない。」

小窓の前に行って見たが、此処で放りこむよりも北海道の稚内へ帰航してからの方が余程速いということだった。それで

た海豹島の壮観に驚き、更にオホーツク海を南下して北海道の稚内で一同と別れた。そうしてまた旭川でアイヌの熊祭を観、

昔は中仙道と北国筋との追分でしてね。沓掛や軽井沢と並んで浅間三宿といったのだそうです。大名行列で随分盛んだっ

浅間山から鬼や尻出して鎌でかっ切るような屁を垂れた

あはは。まったく浅間山の麓から生れた唄ですな。あの信州の追分は今では寂びれ果ててしまい

パンの会」、永代の一銭蒸汽と吊橋、小伝馬町は江戸の白い並倉と新しい東京の西洋料理店、椅子に三味線、紅提灯に電灯。切支丹

られた。これは内密だが、一寸長唄に懸腕直筆で富士山の画がお得意だ。Ｄ中学校長は温厚そのものといっていい。円い眼

八月の九日午後二時――三時、処は横浜を北へ去る少くとも五百海浬の海上、今やまさに津軽海峡の中間を

薄寒い港内を一まわりすると、ランチが岸へ着いた。横浜を出て四日ぶりで陸地を踏むのである。うれしくないことはない。

て、二週間に亘る汽船高麗丸の航海を楽しんだ。横浜から小樽、国境安別、真岡、本斗、豊原、大泊、敷香と巡遊して、

オホーツク海は樺太の東海岸北知床岬の南方十海浬だというのが、この海豹島の確かな位置とされて

樺太は東海岸、北知床岬の南方十海浬、岩島は海豹島の前面、東方。

食膳を片づけさして、またぽつねんと一人となると、やっぱり札幌の牧場にでも行って種馬の見物でもした方が、よっぽど有意義だっ

だが、小樽や札幌のトマト畠が果してどうした香気の風景であるか。その漿水の発散は

「先生、札幌はいいです。あかしやがいい。大通りの中に花畑があって、子供が遊ん

お話でも致させたいと思いますから。」と、札幌の鉄道局。

。ＨさんはＦ君と同じＳ市の人で、同じく札幌の農科大学出（そういえば和製タゴールさんのＮ老人もその第一期の

ことは、未だかつて内地の都市に見ぬ鮮かさだ。札幌はこれ以上に美しいという話だが、これは帰りの楽しみにして置こう

別れた。そうしてまた旭川でアイヌの熊祭を観、札幌に淹留し、函館より海を越えて当別のトラピスト修道院を訪ねた。ただこの

必死のカウの上陸となる。

十月十一月、寒風の吹き荒むとともに、懐胎したカウの大群集は成長した幼獣、処女獣と南方に向って去り、半成牡

「そうですか、奥州や北海道は、僕の国では鬼でもいそうなところだと思って

お船に乗って遠い遠い北の方へ行くのです。海豹島といって、おっとせいが黒山のようにいたり、ロッペン鳥が雪のように

歩いたものだ。大正の一、二年にも相州の三崎ではランプであった。小笠原では無論のこと。その後葛飾でも初め

オホーツクの黒きさざなみ。

新らしき曙の波濤に乗り、オホーツクの海阪を越え、渾沌として黒く漂う浮き脂の大いなるうねりに幾万となく

ああ、なんだかフイルムで見たエルサレムへゆく巡礼道の情景と、そっくりではないか。

して北海道の稚内で一同と別れた。そうしてまた旭川でアイヌの熊祭を観、札幌に淹留し、函館より海を越えて当別の

まあいい。そこで、今度の話は印旛沼の庄亮君の宅を訪ねた時に初まるのだが、彼は鉄道研究会員

足元から鳥の立つような騒ぎになって切符を申込む、印旛沼へ電報をうつ。それでももう締切にぎりぎりとかで二等の最後の

吉植庄一郎氏の令息で、法学士で、政治ぎらいの、印旛沼は出津の開墾家の、お人よしの、どこか抜けている坊さん風

「吉植君。君も印旛沼を開墾したらトマトをこさえろ。」

「そりゃ、君のところの野菜はすばらしいさ。印旛沼は格別だよ。ところで、僕にしたってこの頃はすっかり調味法が変った

「だから、俺は印旛沼を開墾するというのだ。よかろう。やるぞやるぞ。」

「印旛沼なら、この頃は鯉のあらいに鯰の丸焼きというところだね。白焼の鰻

、お砂糖がア、問題なんだね。それ、どうせ印旛沼だ。あっちに一軒、こっちに二、三軒だ。一日がかりだアね

午後になって、左舷の遥かに金華山らしいのが眺められたが、航路というものは、海岸線には添いつつも

小沼の駅へ帰る途々も、私はクリロフ一家のことを考えていた。

朝から両手に桜麦酒をかかえ込んで遊びに来た九州は福岡の読売新聞の支局長だというＹ君に、

テエブルに、そして肩を怒らした。どう見ても快活な佐賀男だ。

見ましたもんな。あの爺さん、何でもあれを神戸で買うて来て、たった一度しか手をとおさないちいいましたけんな

与って力がある。少々は酒がいける。Ｍさんは神戸の縉商である。いうところによると、美術院の大観観山等

自由ではあるが、中央部には、下の関や神戸から乗ったＯ・Ｍ・Ａ・Ｋ・Ｄ、それにＨ夫妻その他

いな。アイヌにも芸妓はんがありまへょか。」神戸富豪のＮさん。九州男のＹが「金持ちなんてん下俗してなん

神戸の縉商であるＮさんなぞは、飄逸な海亀さながらの長い首を前

「神戸……いい。」

繁華とをまるで夢の様に憧憬しているらしかった。神戸へ行きさえすれば、日常の生活などはどうにでも幸福に過ごし得る

それ位で知人もない神戸へ行くのは危険だ、それは止したがいいと、私はしきりに

「神戸行きます。商売する、ね。」

相をあらわしていた。そうして事毎に「神戸神戸。」で話は持ちきっていた。何でも明日にでも牝牛

本相をあらわしていた。そうして事毎に「神戸神戸。」で話は持ちきっていた。何でも明日にでも

彼女たちには高麗丸が大貿易港神戸の一部であり、神戸はまた高麗丸の延長であるかのごとく思えたに相違なかった。

て手を拍った。彼女たちには高麗丸が大貿易港神戸の一部であり、神戸はまた高麗丸の延長であるかのごとく思えた

「ええ、今度は新潟甚句。」「ええ、さてその次といたしまして三がい節。」「

か渡島追分、江差追分とか呼んでるのがそれです。新潟辺ではそれを松前節としていますが、それは逆輸入から来

小樽

なことだと、私はつくづく朱筆を投げてしまった。小樽の色内町のキト旅館の二階での歎息である。私は処女歌集

「小樽というところは鴉の多い港だよ。」私は小田原の我が子へ

の王国といった風だそうである。初めて私はこの小樽でそれを思い当った。

「いたのかいもないでしょう。わたしが小樽に来ていることは、兄さんだって知っているはずだ。もう一年

。これでは夏の江の島へ行ったようで、北の小樽とは思えない。

二時頃になって、庄亮が、小樽新聞社のＭ氏と連れ立って帰って来た。二人とも相当に酔っている

だが、小樽や札幌のトマト畠が果してどうした香気の風景であるか。その漿水

夕方、庄亮の主宰する橄欖社の小樽支部の人たちや、此処で出している『原始林』の同人たちが五

る。私は早朝上陸して、この夜になって初めて小樽の市街を見るのだ。

れなはんならでけん。こん爺さん嘘言いいたい。なあん、小樽で遊ぼか、定山渓に行たとらしたですたい。」

「わしあ、よか事した。今日たい。小樽へ帰って来っと馬車ん一台居ったもんな。そこで五円札

、窮みもなく日の光が光らずに流れてゆく。小樽を出てからの展望はいよいよ北海らしい感じを深めて来た。それに

いよらす。食べて見なはっとよか。そりゃうまか。小樽で買うて来らしたたい。自分の家の鑵詰ですもんな。うむ、

小樽を出る時、私は小田原の妻子へ、こう打電したものだ。つい

違っている。それは、札幌鉄道局の役人たちと、小樽からの新来客の二人とが加わったための、やや油に水をそそい

「は。小樽で買ってあります。」と、ありがとうとはいえないで、頭を垂れ

本来からいえば、小樽を出て翌朝、私たちは樺太西海岸の本斗に上陸して、真岡より野田

「あ、アイヌ部落。それは何処です。」これは小樽からの新来の客の一人で、ラジオ狂で、いつかの晩ももう

背広といえば小樽で見た按摩も、これは霜ふりではあったがやはり背広でカラを

隣りから声をかけた。小樽からのちかづきの、あの俊敏な紳士の、麦酒会社の重役の、ラジオ

「そのビフテーキが小樽式。いや、もっとコチコチだろうよ。」

それは小樽を出ての海上の夜の食堂のことであった。いい気持ちに陶酔

二週間に亘る汽船高麗丸の航海を楽しんだ。横浜から小樽、国境安別、真岡、本斗、豊原、大泊、敷香と巡遊して、最後

「盛岡の在です。」と彼は答えた。

京都の若い警部さんで温厚で真撃な紳士Ａ君がまた眼鏡を輝かし輝かし

で、変な唄ばかり歌う。Ａ博士は電気学者で京都の大学教授である。髪をキッと分けて、角ばった頤の、眼鏡の

牧畜家のＨ、麦酒会社のＦ、印旛沼開墾の庄亮、京都府警部のＡ、それに私がその前の椅子に腰を下ろしてい

早稲田ァ、二高、日本歯科、青年団、写真班、鹿児島ァ起きろ。」

いえば、俺はもう閉口閉口。何だろう、そおれ、千葉から印旛佐原へかけて、本党は親父の地盤だろう。去年の選挙の時

「なに、いや、そのう、銀座でこれをやっていたんでね。」と左を利かせる。あくまで

から活動小舎がある。絵看板がある。幟が並ぶ。銀座と六区とを一つにしたように殷賑である。

ただ、Ｊ・Ｏ・Ａ・Ｋ、こちらは東京放送局であります。と、はっきりと大きくは唸ったものの、すぐとその後

また、ある東京の友人にはこうも打った。

の一銭蒸汽と吊橋、小伝馬町は江戸の白い並倉と新しい東京の西洋料理店、椅子に三味線、紅提灯に電灯。切支丹伴天連の南蛮趣味。

はない。※間や床の置物などを見まわしてもやっぱり東京だ。で、寂しいが旅情というほどのものは起らない。もっと違った

て、子供が遊んでいて、実際美しかったですよ。東京よりいいです。それに大学や植物園の楡がいいです。素敵。」

、こちらは東京、ゴウゴウゴウ、放送、ガバガバガバ、局であ、グワウグワウ、す、す、す、

ほど嫌いだし、田舎に引き籠ってからは、あの雑閙する東京の電車にはとても飛び乗れそうにない。ラジオ流行の時節にも到底救われ

妻子を初め東京の諸友に、その安別から打電した時には、私もまた意気軒昂

へ引っ還すはずになって居ります。」Ｋさんは東京鉄道局の旅客掛である。

との打ち合せも済んでいたものと思われたし、東京の旅客課のＫ君も附いていることなり、や、お疲れさま、どうぞと

ＪＯＡＫ、こちらは東京放送局であります。

や縁日といえばすぐこれだ。初めて上京した時、東京も田舎だなアと驚いた事もあったが、この樺太ではやっぱしここ

豊原は東京の延長としか思えない。だが、ここの場末の盆踊は安来節で

いました。みんなアンテナを架けて、「ＪＯＡＫ、こちらは東京放送局であります。」あれがよくきこえるそうです。坊やは虎杖を知って

の茴香の花、大蒜の花、銅版画は司馬江漢の水道橋の新緑、その紅と金、小林清親の横浜何番館、そうして

歎けとて今はた目白僧園の夕べの鐘も鳴りいでにけむ

ものなのです。シャンシャンと手綱の鈴が鳴ってです。小諸………出て見いりゃ、となります。小諸節ともいいます。

本場の追分ですね。西は追分だとか、今の小諸出て見りゃだとか、

小諸出て見りゃ浅間の嶽にけさも三筋のけむり立つ

というようなものになっています。この信濃追分が北越の航路から蝦夷地へ流れ流れてゆくうちに、いつとなく波の

その上部にこれはまた浅草物の石版画。