おばあさん / ささきふさ
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――おばあさん、伊東へ來るといいな。
自分自身の誠意も籠めて、ともかく危險の去るまで安全率の高い伊東へお越しになつたらと書いて送つた。だがその時のおばあさん
氣を入れて畑をつくつてゐる。それを見棄てて伊東へ行くのは可哀想だ。のみならず本家の嫁は伊東から招きがあつた
伊東へ行くのは可哀想だ。のみならず本家の嫁は伊東から招きがあつたと洩らした時、ああ行らつしやいまし、あとは
寄こすやうになつた。侘しくなるとおばあさんは、もう伊東から來てくれる頃だといふことにしてしまふ。それから、明日は來る
ことからたうとう病氣になつてしまつた。早く癒つて伊東へ行きませうねと私はおばあさんを慰めた。が病後のおばあさん
なく、殘暑もだいぶしのぎよくなつたから、かねての望み通り伊東へ伺ひたいが、御都合はいつがいいかと切り込んできたのである。
美耶川さんが持つてきて下すつたんですよ。伊東へ行くのならしばらく會へないからといつて。」
やいい。しかしどうして行らつしやると訊いたら、伊東から迎へに來る。――でも明日は日曜で混みやしませんか。」
伊東から運ぶのよりは樂だと出かかるのを私は危ふく押へた。そして
、次兄の書架の前に佇んだ。おばあさんはおそらく伊東に落着くことになるだらう。おばあさんがゐないとなれば、此家
彼は死ぬ一週間前、おばあさんの使ひも兼ねて伊東まで來た。二泊してくつろぐ間に、おばあさんとの生活の將來
たミチューリンだけは直ぐそれと判つた。せめてこれだけは伊東まで、――おばあさんと私の傍へ伴れて行つてやらう。私
きたわけである。私はその數册を拔き出して伊東へ持つて行くことにした。
世間への本家の顏を立てる爲で、内心は未知の伊東へ死にに行くつもりなのに違ひなかつた。私はおばあさんの一生懸命
そして安全に、隧道一つ越せば二驛めがたうとうもう伊東なのである。私は數日來の肩の凝りが少しづつ解けて行く
表現で慣れぬものはまごつかさせられたものだつたが、伊東に落着いてからはひどく素直にものよろこびをするやうになつてきた。生き
「結構ぢやありませんか。伊東にいらしつてお痩せになつたんぢや、私としても御本家に合せる
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露語の大册は、とても讀めたものではない。ただモスクワからやつとの思ひで取り寄せて、しばらくは抱いて歩いてゐたミチューリンだけは
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まともに見下せる運動場で、スポンヂ野球が始まつてゐるのだ。東京で頭のひどく忙しい彼は休日に草野球を見ることで轉換を計つてゐる
行くのかと思つてたのに。」と云つた。東京とは新宿の意なのであらう。
「東京まで行くのかと思つてたのに。」と云つた。東京とは
「でも、東京の家は失つてしまつた。」
、おいしいものばかりいただいて、何の屈託もなく、――東京にゐた時はほんたうに毎日毎日――」
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と思つてたのに。」と云つた。東京とは新宿の意なのであらう。