恨なき殺人 / 宮島資夫
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艘あれば、大丈夫だ。どうかして二人でもう一度北海道へ行こうや」と言った。この前池田が山を止すと言った時に
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煤けていた。縁側の柱についている刀傷は、水戸の天狗組が暴れた時つけたものだと言うのが、家主の婆
はるかに遠く、水戸の海が霞の奥にどんよりと光っていた。
「あすこが水戸だから、もっと此方の方だろう」と池田は右の方を指した。
「あすこが水戸だ、お前は明日はあすこへ送られるんだ」と、萩野は遠く東
「水戸に監獄があるんですかね」と、松田は其時はじめて口を利い
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それは東京の鉱主から、池田に宛てたものであった。
だけのことであるのを、誰かが嘘を造って東京へ報告したものであろう。尤も彼がこんな目に会ったのは、
その瞬間に彼は、辞職してすぐ東京へ帰ろうと思った。こんな小さな山の中で、仲間のアラを探し合っ
もありはしない。職業に餓えて、あの砂埃りのひどい東京の街を痩犬のようにさまよって、哀訴したり嘆願したりしなければ
で休んだろ、それを作病で村で遊んでたって東京へ報告した奴があるんだ。それで君、昨日僕のところへ
僕あこんな下らない月給取りはほんとにいやになった。今度東京へ帰って、甘く行かなかったら坑夫になろう、その時は君頼むぜ」
二三日経ってから、池田は東京にいる母親から、鉱主に呼ばれて、お前の不品行を散々聞かされ
「東京はどっちの方でやすべえ」と訊いた。
「俺も東京さ行って暮してえな」と嘆くように言った。
東京に行けば、面白い生活が出来ると思っているこの男は、まだ幸福だ
此処へ帰って来る気はなくなるだろう。と言って、東京にも別に自分の生活を新らしくさせてくれるものがあるとは思え
に行った。けれども彼は行こうとも思わなかった。東京に行けば、再び此処へ帰って来る気はなくなるだろう。と言って
盆の賞与を貰うと、事務員はみんな交替で東京へ遊びに行った。けれども彼は行こうとも思わなかった。東京に
「ええ、やりました」と、東京で植木屋や八百屋をしたこともあると言う三田は、威勢よく答えた