出雲国 伊勢 越前 鎌倉 丹後 丹波 奈良 住吉 大崎

、とりわけ不思議な姿に見えるのも、どうやらわかる。「出雲国を出発して見に来た其印南の国が、此よ」と言ふ事

人であつたのである。倭を出た神は、伊勢に鎮座の処を見出したのであつた。此高級巫女から伺はれる事実は

為、注意を惹かなかつた点もあらうが、罪は越前への近流だけに稍軽かつたであらう。相手方の狭野茅上郎女は罪

平安朝から、鎌倉へかけて、女帝と寵臣との靡爛した生活を書いた物は、

て、恋の楽土に遊んだ話は、数多あつた。丹後の地にあつた浦島子の叙事詩、吉野川を中心に固定した柘の

した多くの巫女のあつたことである。豊受神は丹波から移り、安菩神は出雲から来て居る。同時に古代幾多の貴種流離譚

石上乙麻呂は、奈良の盛りの天平十一年の春、久米若売と狎れて、女は下総

、知つて改める事は畏れられてゐたから。既に奈良朝にも、寡婦と処女とを同格に見る風が出来てゐたこと

女性の上にも、見出され易い。其が、進んだ奈良末期・平安初期の不純な創作気分を交へて来た心には、

末にすら、浦島子伝が書かれたのである。奈良に入つて、漢文を作る能力も進み、熱意も加つて来た時代

寵臣との靡爛した生活を書いた物は、恐らく奈良末・平安初期の和製武后伝に煩ひせられて居る事が多いの

古墳の多い奈良南郊に本貫のある柿本氏は、遊部・ほかひに何の関係もない

我が夫の君を、かけまくもゆゝし畏し、住吉の現人神の、舟の舳にうしはき給ひ、着き給はむ島の崎

大崎の神の小浜は狭けれど、百舟人も　過ぐと言はなくに

居る事になる。此なども一回きりの歌でなく、大崎を過ぎる時に、神に対して唱へた、きまり文句だつたと言へよう。