本郷 玉川 品川 向島 田端 東京 新宿

昭和七年に、私が結婚して本郷の動坂町に家をもった。そのとき、夫人は大変よろこんで、実に

れ、勝彦さんが出征され、松の茂った丘や玉川へ向う眺望のよい病床も多端であった。

人、義妹義弟との生活のなかで、少なからず、「品川の伯父さん」に心だよりを感じていたらしく思われる。

は、特別に親しみがあった。その伯父様はいつも、品川の伯父さんと母に呼ばれ、明治三十七年頃から数年間父が外国暮し

小さい娘に母は品川の伯父さんが、明治の日本へ初めて近代の皮革事業をもたらした見識を

「謙吉さんが生きていてくれて、品川の伯父さんと一緒だったら、お母さまもどんなに安心だったかしれないの

品川の伯父さんは、良人が留守な姪の子たちを丈夫にしてやろう

たときの行列で東京へ帰って来た。その夏、品川の伯父さんは、子供らにとってごく身近で、大磯のどこかに

「お孝さんも熱情家だからね、品川の伯父さんの娘だけあって、あらそわれないところがある」

元来、品川の伯父さんと呼ばれた方が、事業上の熱意のほかにどんな趣味

になる人は、明治三十五年ごろに没していて、向島の生家には、祖母と一彰さんと龍ちゃんという男の子がいた。

はお灸の匂いが微かにのこっているという風な向島の家は、陰気でいつもいろいろのごたごたがあった。

向島のおばあさんと母とが、林町のうちの長火鉢の前で二人と

さんの娘さんであった。母とはいとこ同士で、向島で暮した娘時代共に寝起きしたお登世さんという従姉をのぞいて

ていて、帰ったら程なく気が変になった。田端の白梅の咲いている日当りよい崖の上に奥さんと暮していて、

ことが続いた揚句、一同は又来たときの行列で東京へ帰って来た。その夏、品川の伯父さんは、子供らにとっ

多くの忍耐と勇気とを求める闘病の時期がはじまった。新宿の病院にいらっしゃる頃は、思いながらつい折を得なくて、お会いし