パリ 鎌倉 東京

冬から床のうえに放りだしてあった絵葉書を拾いあげた。パリのあやかしに憑かれ、ひとりで気負ったようになっている仲間がよこした自作

と思ったら、この月の六日にユトリロが死んだ。パリでは毎日のように人生の一大事に逢着している。そちらはどうだ

があり、西南が海にむいてひらいている関係で、鎌倉のうちでもとりわけ暖かく、南下りになった山曲の日だまりで二月の

そのものも大きいが、屋敷がまたとりとめのないほど広い。鎌倉と逗子の境になる光明寺の裏山をうしろに背負ったような地形で、天照

「金をもらいに来たわけじゃ……東京の奥さまから、なにか聞いちゃ、いなかったですか」

村方の神事みたいなもんで、亡くなられた松井の旦那も東京の奥さまも、承知のうえで見ないふりをしていてくれるんです