鹿島 横浜 新潟 東京 上野

となりの鹿島の邸の庭にいる鶴が、毎晩のように飛んできて、冬亭

文女の両親は七年ほど前に亡くなって、鹿島の家には祖父の与兵衛が坐りなおしていた。西園寺公や雨宮暁など

・カルロの老人たちは、雪洲の名は知らなくとも、鹿島の名は記憶していて、風流と豪奢をいまも語草にしている

文女は横浜の親戚へ見舞いに行って、あの大空襲にあい、その後、生死不明のままに

のままになっている。冬亭はそのころ、毎日、横浜の焼跡へ出かけて、日ねもす文女の消息をたずねまわり、秀麗な趣きのある顔

で……ご承知のことと思いますが、わたしの孫が横浜で空襲にあい、今日まで消息が知れません。これはもう、死んだもの

だものとあきらめるほかはないのですが、あの鶴は、横浜に空襲があってから間もなくここへ来て、そのまま居着いております

女性がいると、冬木は感じていたが、文女は横浜の空襲で死んでしまったと思いこんでいたので、そうと読みとることが

「横浜へまいります前日、あれがいろいろに申しましたが、絶対に不賛成だったの

「先日、新潟からお手紙をいただきました……長いあいだ辛抱していたけれど

なりますので、それはいたしませんでした。東京と新潟に別れて、つらい辛抱をしておりましたのは、あの方をそちら

「今日の夜行で、新潟へお帰りになるように、うかがっていますから、いまごろは、上野の

人生になりますので、それはいたしませんでした。東京と新潟に別れて、つらい辛抱をしておりましたのは、あの方

帰りになるように、うかがっていますから、いまごろは、上野の駅にでも、いられるのではないでしょうか」