あなたも私も / 久生十蘭

あなたも私ものword cloud

地名一覧

大阪

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宣伝の仕事なんだけど、東京を振出しにして、大阪と京都と……それから香港、シンガポールをまわって、バンコックまで行くの。二

汐留

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、都電の線路を横切って後を追っていたが、汐留の長いコンクリートの塀のあたりで、並行して走りだした。むこうの運転席の

丸の内

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丸の内の郵船ビルの前で中村と別れ、『レーバー・セクション』という標示の出

香港

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「ウィルソンが、一枚一ドルで、香港の宝彩のようなものをつくってきて、水上サト子の何億かの財産

東京を振出しにして、大阪と京都と……それから香港、シンガポールをまわって、バンコックまで行くの。二十人ばかりのレヴュウをサイド・ショウ

「香港で流している偽ドルです。こんなものを使ったら、飛んだことになるところ

湯河原

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は、こけしちゃんという、チビの女中を連れて熱海か湯河原かへ遊びに行ってしまった。

シアトル

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帰ることになったが、出帆の前夜、うれしまぎれに、シアトルの宿で、酒を飲んで踊ったりしたので、心臓衰弱で倒れた

「シアトルの、日本墓地へ埋葬しました」

の植木屋の気付で、宛名は、ミナカミサトコとなっている。シアトルでうった日付は、十月二十五日……すこし遅すぎるようだった。

シアトルからきた電報を見た瞬間、サト子は、たぶん貧乏に疲れて帰って来る

ショウは、シスコを経由するはずだけど、旅客機でなら、シアトルまで、わずかの時間で行けるのよ。並木通りの『アラミス』というレストラン、

していただきました……水上氏は、昨年の春、シアトルでお亡くなりになったのだそうですね」

「リオとサン・パウロ……行きがけに、シアトルと桑港でもやる予定です」

すむのだったら、日本を離れることも苦痛ではない。シアトルに寄るなら、お祖父さんにも会えるわけだし、ギャラさえよかったら、この

、紙入れにしまいこめば、それでいいんだ。サト子さんをシアトルへ連れて行って、アメリカの鉱山法で、アチコチしようという企画は、見込み

有江曽太郎が氷川丸に乗る前夜、シアトルの新聞記者に語った談話の概要で、水上サト子に遺贈された三百五十万ドル

ましたね……遺産のことはもちろん、お祖父さんがシアトルで死んだことさえ、長いあいだ、ただのひと言も、口からだしませんでし

、飯島の叔母さまがいられます。立会人として、シアトルから来た有江老人も」

神奈川

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は、中村という鎌倉署の捜査課のひとよ……神奈川の警察部の渉外部にいるとき、第八軍の憲兵と喧嘩をした

、捜査課の外勤をやらされていた中村が、また神奈川の警察部へ戻っているらしいわね」

八幡宮

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いちにち、谷戸から谷戸へ、さすらい歩いた。翌日からは、八幡宮の境内や美術館の池のそばで、ささやかなアルバイトをしながら日をくらし、

は一度だけということはない。それに、観光季節に八幡宮の参道をうろつく、ショウバイニンのひとりだと思われているのだ。いまさら気取って

松濤

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になったあと、することがないもんだから、渋谷の松濤の大きな邸でショボンとしているわ。秋川が、毎月、生活費を送って

鎌倉

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秋波のうちかえす鎌倉の海は、房州あたりの鰯くさい漁村の風景と、すこしもちがわない。

鎌倉に呼んでもらいたいばかりに、春の終りごろから、いくども愛嬌のある手紙

鎌倉の漁師は、満潮のことを「潮いっぱい」という。月の引く潮の

ことが、やはりいけないらしい。いそがしいひとばかりなので、鎌倉にいる新人のモデルにまで、気をくばってはくれないのだ。

て、モデル料をとりあげるんだというじゃないの……鎌倉では、評判になっているのよ」

「むかしの鎌倉はよかったが、戦後は、ようすが変って、なじみのうすい土地になって

観光季節に、横須賀からやってくる白百合組のショウバイニンを鎌倉の市警は嫌っている。さっきの若い警官は、鎌倉を職場にして

鎌倉の市警は嫌っている。さっきの若い警官は、鎌倉を職場にしてはこまるというようなことを、この連中に言ったらしい

です……当節、横須賀では、やっていけないから、鎌倉でショバをとりたいと思うのは、無理でしょうか、おねえさん」

おくわけはない。車のナンバーは東京だし、秋川は鎌倉ではよく知られているひとらしい。二時間もすれば、空巣の青年が

、なにをいうことがあるものですか……戦前、この鎌倉で、くだらない情事が盛ったことがありますが、卑しい恋愛にふけった人間

とき、第八軍の憲兵と喧嘩をしたせいで、鎌倉で、捜査課の外勤なんかやらされているけど、あれで、もとは海軍少佐

むかし、夏の鎌倉の海でいっしょに泳いだこともある、という関係でしかない大矢シヅに

歩けもしないうちから、鎌倉の澗の海で泳いでいたので、アシカのようなからだつきになった

な、すばらしいヌードをもっている。何年ぶりかで、鎌倉で会ったときは、くずれた花のような感じだったが、ファッション・モデルになっ

「新婚早々で、鎌倉の材木座に住んでいたが、この前の戴冠式に、足柄で英国へ行っ

新婚早々の細君を鎌倉に残し、英国の戴冠式に行っている間に、刃傷沙汰に及ばなくては

愛一郎の母は、秋山と結婚するいぜんに、夏の鎌倉で神月のまどわしにかかって身を誤った。

が考えているほど、惚れっぽくない……むかし、夏の鎌倉で、おばさまたちがやったように、あっちこちで、簡単にベタベタくっつくような

「夏の終りごろ、鎌倉のお宅へ行っていらしたように、聞いていますが」

いわずに、有江の名で電報をよこしたのは、鎌倉の叔母に知らすなという意味なのだと、サト子は判断した。

この夏の終りに、鎌倉の秋川の家で会ったときは、頭のなかの乱れが見えるチグハグな印象

「横浜といえば、鎌倉で、捜査課の外勤をやらされていた中村が、また神奈川の警察部

お祖父さんの財産といえば、いま叔母が住んでいる鎌倉の別荘と、恵那の谷の奥にある、先祖伝来のわずかばかりの土地だけ

久慈暁子というのは、鎌倉の警察へおしかけて行って、偽証までして愛一郎を庇ったという、あの

まともな職業につきたいと思って、夫婦別れをした鎌倉の叔母の主人……というのは、かつては叔父だったこともあるひと

。そればかりでなく、この顔は、夏の終りに、鎌倉の美術館のテラスでやりあったショウバイニンに、どこか似ているような気がし

だが、内張の色がちがう。考えているうちに、鎌倉の近代美術館から、扇ヶ谷の秋川の家まで乗って行った車だったと思いつい

「鎌倉の飯島、と言ってください」

宙に浮いたままサト子の手を待っている。戦前、鎌倉の浮気な女たちが火遊びに現をぬかした伝説の男の手は、心やすく

毎夏、鎌倉の海で遊びくらした仲で、サト子に苛められながら、サト子の行くところなら

愛一郎と暁子が鎌倉の駅口に迎えにきていた。サト子に合図をすると、愛一郎は

箱根

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にいらなかったら、お望みのところへご案内します。箱根でも、熱海でも……」

小石川

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・セクション』という標示の出ているところへ行くと、小石川の職安で、資格検査を受けて、労務者カードをもらって来いといわれた

横浜

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の参道を、日焼けした地方の顔や、観光船で横浜に着いたばかりという白っぽい顔が、カメラをさげてゾロゾロ歩いている。

「横浜の山下町で、小鳥の巣箱のような、ちっちゃなバアをやっていますの」

「横浜といえば、鎌倉で、捜査課の外勤をやらされていた中村が、

「こわいひとが、横浜へ戻って来たので、ビクビクしながら商売していますわ」

東寄りの、ソヴエットに近いほうに籍があるんだって。横浜の外人たちは、ソヴエットの経済スパイだろう、なんて言っていますわ……さっき

しているのは、つまるところは、有江というひとが横浜に着く前に、なんとかして、じぶんのほうへ取り込もうという障害競馬

今日のカオルの話しぶりでは、近く横浜に着くのは、お祖父さんではなくて、有江という代理人らしい。それ

。秘書みたいなひとが、この七日に、氷川丸で横浜に着くことになっていますが、あちらの話が聞けるので、たのしみに

中村だ。さっき横浜へ帰ると言ったが、なにかの都合で、またここで待伏せをして

、長い電話になったわ……あす有江というひとが横浜に着くんですってね? 神月は死んだし、芳夫は横浜税関の監視部

秩父

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二階のバルコンに出ると、遠くに秩父の連峰が見え、反対の側には赤十字病院の軍艦のような白い建物が、

名古屋

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から機械的に玉を送りこんでいると、徴用されて、名古屋のボール・ベアリングの工場で玉を磨いていた、情けない夏の間の記憶

九州

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「このごろ、東北や九州でウラニウムが出て、そのへんの土が、一匁いくらとかで売れるって

川崎

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「へえ、メイドにね……それもいいが、川崎の鉱山調査研究所に、雇員の口があるよ……鉱山保安局にいる由良

のあとなので、あまりいい顔はしなかったが、川崎の鉱山調査研究所に雇員のあきがあるから、紹介してやってもいいと

も、給料は六千円未満ということだから、荻窪から川崎まで通うとすると、交通費その他をひけば、サト子ひとりが食べるのがせいぜい

、よろしかったら、部屋を使ってください。いま勤めていられる川崎の鉱山研究所へお通いになるにしても、西荻窪から中央線で東京へ出る

いる叔父のところへあらためて就職の依頼に行ったら、あっさりと川崎の鉱山調査研究所の雇員にしてくれた。叔父の紹介だとばかり思って

ベルリン

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バイトをしていた時期があるのよ。あのころ、ベルリンにいた日本人は、みな知ってることなんだから、いまさら、隠しもでき

神楽殿

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反り橋の袂と神楽殿の前で、思わせぶりなポーズをしながら行きつ戻りつしていた

葉山

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も、海も、燃えあがるように赤く染まっていたが、葉山のあたりの空が、だんだん透きとおった水色にかわり、そこから、のっと大きな月

小田原町

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シヅの部屋は、あいだに部屋を三つおいて、小田原町にむいた側にある。ノックをしてドアをあけると、シヅはネッカチーフで

な音をつたえた。シヅは窓のほうへ行って、小田原町につづく通りを見おろしながら、

扇ヶ谷

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なじみのうすい土地になってしまいました……私も、扇ヶ谷に家をもっていますが、留守番をひとりだけおいて、荒れるままにほうっ

「われわれも、間もなく帰りますが、これから扇ヶ谷の家へ遊びにおいでになりませんか。荒れたままになってい

愛一郎の父が、扇ヶ谷の家へと言ったのは、苦境から救いだすための臨機の弁で、ほんとう

でいることも、あたしには面白くないの……北鎌倉や扇ヶ谷のひとたちだって、神月の別荘へやってきたことがあるんだから

あの夜、扇ヶ谷の家で、秋川が、あれはあなたの手紙を待って、郵便受の前

「この夏の終りに、秋川の親子が、サト子さんを扇ヶ谷の家へひっぱりこんで、ひと晩、泊めたという事実があるんです…

あの夜、扇ヶ谷の谷戸の上で、カオルは山岸の子でなく、神月の子だという

がちがう。考えているうちに、鎌倉の近代美術館から、扇ヶ谷の秋川の家まで乗って行った車だったと思いついた。そういえば、

…それで、東京の家は二人にやって、私は扇ヶ谷に住むつもりでいますが、よろしかったら、部屋を使ってください。いま勤めて

日比谷公園

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「雨が降りそうだから、日比谷公園はダメでしょう。泰西画廊へでも、行きますか」

京都

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仕事なんだけど、東京を振出しにして、大阪と京都と……それから香港、シンガポールをまわって、バンコックまで行くの。二十人

東京

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むこう、稲村ヶ崎の切通しの下までつづく長い渚には、暑い東京で、汗みずくになって働きながら夢想していたような、花やかなもの

ポスターは、いまでは見たくないものの一つだ。東京では、とうのむかしに死に絶えてしまったのに、生きのびて、こんなところ

「あすは、東京へ帰ろう」

東京では、秋のショウがはじまりかけ、そのほうの準備にかかっているはず

シーズンのはじめから、口などかかってこようはずもないが、東京を離れていることが、やはりいけないらしい。いそがしいひとばかりなので、

が死に、なにかゴタゴタがあって離婚した叔母が、東京から移ってきて、自分の持家のような顔で居すわってしまった。

「ああ、そう……神月さん、あの家を売って、東京へ越したんでしたわね」

「もう東京へ帰るんでしょうが、帰ったら、山岸さんのお宅へ伺いなさい。ご両親

「あなた、もう東京へ帰る? ブラブラしても、いられないわね。山岸さんへ、

たわね。ここのアルバイトも、きょうでおしまい。そろそろ、東京の仕事がはじまりますから……」

「あたくし、東京ですの……子供のころ、夏ごと、遊びにきましたが」

秋川良作……東京の住所と番地が、小さな活字で片付けてある。

「東京へお帰りになったら、いちどお出掛けください。ガラクタも、いくらかは

「いいえ、こんどの上りで東京へ帰ります」

、そのままに放っておくわけはない。車のナンバーは東京だし、秋川は鎌倉ではよく知られているひとらしい。二時間も

東京へ帰ったら、否応なく訪問することになっている、山岸芳夫の姉の

、ひとりになりたくなると、朝でも夜中でも、東京から車をとばしてきて、この家へ入りこんで、はだしで谷戸を歩き

「じつのところは、そうなの……東京へ帰ったら、すぐお伺いするように、叔母に言われているんです

東京へ帰るつもりで、昼前に叔母の家を出たが、秋川たちと美術館

ような方が居てくださるのだったら、好きでもない東京に、住むことはないのですが……」

切取の間へ走りこんで行く。サト子の心は、一挙に東京に飛び帰り、あすからはじまる生きるための手段を、あれこれと考えながら、気の

「これっきり、というのではなく、東京へお帰りになってから、いちどだけでもよろしいから、父のところ

「あす、東京へ帰ったら、また、目まぐるしく働かなくてはならない」

「ドライヴだなんて連れだして、東京へ追いかえすつもりだったのね」

シヅは、ウィルソンというビニロン会社の東京代理店のアメリカ人にかわいがられ、そのヒキで、会社の専属のファッション・モデルになっ

東京へ帰ったら、いちど秋川をたずねると、愛一郎と約束をしたが、

警察部へ戻ったんですって?……ここは少なくとも東京でしょう。こんなところでタヌキをつかったりして、たれを待伏せしているん

へ嫁く気なんかに、なりはしないでしょ?……東京へ帰ったら、お宅へ伺うという約束で、出張手当までとっておきながら、

「坂田は牛車をひくのをやめて、このごろ、毎日、東京へ出てきている。なにがあったというのかな」

「間もなく、東京へ帰りましたが、どこへモグリこんでいるものやら、いっこうに……

している、ある会社の宣伝の仕事なんだけど、東京を振出しにして、大阪と京都と……それから香港、シンガポールをまわっ

似た夢のような場面をいくどか見たが、東京の山の手に現実にこんな生活をしていた人間がいたとは、

だまりこんでしまい、思うほど食べものを受付けてくれない。いまの東京では、外へ出ても、これ以上の贅沢があるわけはないと

研究所へお通いになるにしても、西荻窪から中央線で東京へ出るより、あちらのほうがずっと便利です……もし、いつまで

結婚するつもりでいるらしいんです……それで、東京の家は二人にやって、私は扇ヶ谷に住むつもりでいますが、

荻窪

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こんなことなら荻窪の家に居て、牛車で野菜を売りにくる坂田青年でも、待っ

「……あたし、荻窪の植木屋の離屋に、ひとりで住んでいますのよ。帰っても

坂田省吾というのは、荻窪や阿佐ヶ谷のへんを清浄野菜を売って歩く、色の黒い朴訥な青年で

夜ふけみたい……あたくし、そろそろ、おいとましなくては……荻窪へ着くと、十時ちかくになりますから」

だけれども、給料は六千円未満ということだから、荻窪から川崎まで通うとすると、交通費その他をひけば、サト子ひとりが食べる

いました。あなた、ご両親がお亡くなりになって、荻窪の奥で一人で暮していられるんだそうで……それから、いま

ありがたいんですけど、植木たちに別れるのがつらいから、やはり荻窪にいますわ」

日比谷

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で泳いだ「お別荘組」のひとりだった。春ごろ、日比谷の近くで会ったが、あのときの泣虫の子供が、ひとかどのおとな

「春ごろ、芳夫が日比谷でお会いしたんですって? いちど、お目にかかりたいと

「この春、日比谷の角で会ったきりでしたね。しばらく、ぐらいのことは言ってほしい

四丁目の角を左折して、日比谷の交叉点を突っきると、猛烈な勢いで三宅坂をのぼった。台風気味

渋谷

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追放解除になったあと、することがないもんだから、渋谷の松濤の大きな邸でショボンとしているわ。秋川が、毎月、生活費

阿佐ヶ谷

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坂田省吾というのは、荻窪や阿佐ヶ谷のへんを清浄野菜を売って歩く、色の黒い朴訥な青年で、去年

西荻窪

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西荻窪の植木屋の離屋は、間代をためて追いだされ、行きどころがなくて

「西荻窪の植木屋の離屋から、サト子さんを追いだしたのも?……すこしくらい

「西荻窪へ、アメリカから、また手紙が来ていました。届けてやると言っ

「サト子さんは、久しく西荻窪の植木屋の離屋に、お帰りにならないということですが、急い

シアトル発信のラジオ電報だった。西荻窪の植木屋の気付で、宛名は、ミナカミサトコとなっている。シアトルでうった

は、たぶん貧乏に疲れて帰って来るお祖父さんを、西荻窪の植木屋の離屋にひきとって、根かぎり世話してあげようと思った。

「それから、OSSで罐詰や腸詰を山ほど買いこんで、西荻窪の離屋へ帰って、そんなものに取巻かれながら、二三日、安心し

「いや忠告です……それから、いま西荻窪と言ったが、あそこの離屋へ帰るのも、やめていただきましょう」

「当座困らないようにと思って、西荻窪へ行って、あなたの身のまわりのものを持ってきました」

られる川崎の鉱山研究所へお通いになるにしても、西荻窪から中央線で東京へ出るより、あちらのほうがずっと便利です……

「坂田って、いったい、どういうひとなんでしょう? 西荻窪の植木屋の前で牛車をとめて、縁に腰をかけて稗搗節

浅草

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を指で叩いた。運転手は、うなずくと、白鬚橋から浅草のほうへ戻りはじめた。

銀座

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私も忘れたし、家内も忘れた……家内は、銀座あたりで、ときどき神月を見かけるそうだが、いつ見ても、あのひとは

雨雲が垂れて、夕暮れのように暗くなった西銀座の狭い通りを、風速十五メートルの強風が、急行列車のような音をたて

秋川は、毎月、神月に生活費の仕送りをし、神月が銀座のバーやレストランで使っただけのものは、文句もいわずに払って

浜町

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浜町公園の近くまでくると、中村は腕時計を見ながら、なにか考えてい

新橋

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いて、築地から来る、あいつの車を見張るんだ。新橋のほうへ行くはずだから、キャッチしたら追尾して、汐留のあたりで

色のセダンが一台ぬけだし、十字路を左に折れて、新橋のほうへ走って行く。中村の車は、都電の線路を横切って後

、それでスピードが落ちた。むこうの車は辷るように新橋のほうへ遠ざかって行った。

ようすであがってきた。無意味な失費を厭うので、新橋から氷雨に降られながら歩いてきたのらしい。茶のオーヴァ・コートが

人形町

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車はスピードをあげると、横降りの雨のなかを、人形町のほうへ走らせた。座席へもどると、中村はサト子にたずねた。

目白

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「目白の秋川さんのところへ伺う約束になっているの」

青山一丁目

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車は青山一丁目のあたりを走っている。芳夫は脇窓から町並をながめながら、

稲村ヶ崎

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の端にある叔母の家の広縁からながめると、むこう、稲村ヶ崎の切通しの下までつづく長い渚には、暑い東京で、汗みずくになって

江ノ島

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早い潮の流れがある。二日もすれば、片瀬か江ノ島の沖へ浮きあがるはずだから、そっちを捜すほうが早道だとそんなことを

光りしている。ルビー色の航空灯が明滅している江ノ島のうえの空を、定時のPAAが鼻唄のような爆音をひびかせながら

両国橋

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両国橋を渡りかけるころ、前窓のガラスに、雨のしずくが、白い筋を