ノンシャラン道中記 02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻―― / 久生十蘭

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地名一覧

ヴァンヌ

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村雲花に風、犬も歩けば弾丸に当る。さて、ヴァンヌの川を横に突っ切り、ヴィルヌウヴ・S・Yの二等堡塁を右に見

エッフェル塔

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かと、ふと何気なく巴里の方を振り返ると、ナント、エッフェル塔は三色旗をかかげて、まだほんの間近にそびえ立っているという有様。これには

ニース

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「念を入れるようだが、われわれがニースまで自動車旅行するというのはこの車のことなのかね」と、コン

もないのだからね。僕はこういう状態のままでニースまで、一〇八八粁もゆられて行くのはどうも心もとない気がするんだ。もし

か。汽車で行くよりずっと安あがりだよ。いいわね、ニースまでの汽車賃は一人片道四百法でしょう。それに大鞄の運賃が二百法

瑠璃海岸の春風を肩で切りながら、夢のように美しいニースの『英国散歩道』や、竜舌蘭の咲いたフェラの岬をドリヴェできるという

過ぎ。この日の行程わずかに六十四粁。思い遙かす、ニースまではまだこれから千〇二十四粁の長道中。この調子では、今年中にゆきつける

気障な道なんか通ってやるものか。ね、コン吉、ニースへ行く道は一本きりじゃないよ。あたしは、もうこの道をどこまで

も恐るるところに非ず、どこまでもこの道を辿ってニースまで行き着こう、と、二人で固く誓いを立て、また蹌踉たる前進を続けるので

「あの、ニースまで行くんですけれど」

巴里

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(例)巴里

ここも北国の慣いとて、はや暮れかかる午後四時ごろ、巴里市第十一区三人姉妹街三番地なる棟割長屋。その六階の露台に

靴音、さては、「第三版・硬党新報、夕刊巴里」と触れ歩く夕刊売りの声も寒く遽ただしく、かてて加えて真北に変っ

「美しき島」事件で身心耗弱したコン吉が、懐かしい巴里の古巣に帰り着いたのちも、相も変らず、食糧の買い出しから風呂場の

香ばしいというわけにはゆかず、今年の冬はぜひとも巴里の冷たい霧から逃れ、南仏蘭西の海岸に日光と塩分を求めて転地し

五、寝起きはとかく不機嫌な巴里の冬空。相も変らず霧のような氷雨は大気を濡らし、共同便所

六、飛んだり跳ねたりマリオネットの兎小僧。北は巴里を基点として、南は仏伊の国境マントンに至る、ここは仏蘭西の

たる工場と、ボンボンの箱のような小住宅が雑踏する巴里の郊外地帯を離れると間もなくブウレエの石切り場にさしかかる。コン吉が

のあたりまで来たのでもあろうかと、ふと何気なく巴里の方を振り返ると、ナント、エッフェル塔は三色旗をかかげて、まだほんの間近

巴里の市門イヴリイをよろめき出してから三時間あまり、もうオオゼエル村のあたりまで来

はまだ目のしたにある様子だ。このぶんでは、巴里まで引き返して昼飯にした方が早そうだね。どうだろう」と、

「巴里に引き返すといったって、この車は前だけにしか動かないよ。お腹が